ソフィア先生の補習授業

 「いよいよWWUも後半戦、7時間目は西部戦線だ。

前の授業から少し遡って1942年12月、北アフリカのDAKは英米に挟まれ、チェニジアへの撤退を余儀なくされていた。

しかし、この北アフリカ上陸作戦は米英連合軍が押していたとは言え、ドイツ軍の抵抗は激しく、なかなか前進できない」

 「ドイツ軍の兵器は優秀だからな。チェニジアの虎もあったことだし」

 「だがどんなに優秀な兵士や兵器も、数倍の戦力差で押されれば撤退するしかない。

ドイツ軍の頑固な抵抗にあい、米英連合軍の北アフリカ攻略は1943年5月までかかってしまった。

泥沼の東部戦線で苦しんでいたスターリン  は、アメリカのルーズベルト大統領  やイギリスのチャーチル  に一刻も早く西部戦線で大規模な作戦をおこなって欲しかった。

何せスターリングラードの戦いは、ソ連が崩壊寸前まで追い込まれた瀕死の状態だからな。

しかし、アメリカにはアメリカで、大規模な行動を起こせない理由があった」

 「何?」

 「・・・・。日本だな」

 「そうだ。真珠湾攻撃は米国にとってこれ以上ないほどの打撃を与えていた。

アメリカ本土から日本を攻撃することは難しい。

だからハワイやフィリピンなどを中継基地にしていたのだが、大戦初期の日本軍は相当強かった。

白人国家の侵略に怯え、祖国を命がけで守ろうと全力を尽くしていた日本軍と、かたや植民地でバカンスのような日々を送っていた連合軍ではそもそも士気に雲泥に差があった。

東洋の名も知らない島国を守るために何で死ななければならない?

どいつもこいつも連合軍の兵士は基本的にやる気がなかったのだ」

 「どうしてやる気がないのかしらね?」

 「決まってる。大航海時代からアジアはひたすら植民地にされていたんだ。

植民地戦争ってのは基本的に白人対白人の戦い。

だから、まさか白人に黄色人種が反乱を起こすとは思っても見なかったんだよ。

白人にとって、アジアの黄色人種なんてサル同然だったからな。

そもそもアジアで戦争する事自体、想像すらできなかったんだよ」

 「そんなものかしら・・?」

 「じゃあ「宇宙人が攻めて来た」って言ったら信じるか?もしくは「地底人が攻めて来た」とか言ったら?」

 「信じるわけないでしょ、アホらしい」

 「それと同レベルなんだよ。黄色人種が白人に戦争を仕掛けるってのは。

正確に言えばやる気がないというより、状況が理解できてなかったってのが真実に近いだろうな」

 「連合軍最大の大国であるアメリカが動けないうちに日本軍は、数に勝る連合軍を圧倒。

近代化されたドイツ軍に比べ、第一次大戦の装備と戦術のまま戦争に突入してしまった日本軍だが、その勢いは止まることを知らず、次々に東南アジアの白人領地を占領していった。

正直日本がここまでやるとは思ってもみなかったアメリカは、反撃しようと思っても真珠湾攻撃で軍の機能は働かず、日本軍の電撃戦は連戦連勝を続ける。

マレー・シンガポールでは13万人のイギリス・インド連合軍を4万人の日本軍が撃破。

インドネシアのバンドン要塞攻略戦では5万人のイギリス・オランダ・オーストラリア連合軍にたった750人の日本軍が突入して白旗降伏をさせている」

 「日本軍は強かったのですね」

 「ああ。世界史を紐解いてみればわかるが、日本の対外戦争は第二次大戦突入までは連戦戦勝だった」

 「そんなに強かったの? 東洋のチンケな島国が?」

 「歴史がそれを証明している。ヴォルフ、説明してやれ」

 「いいですけど、どこから話します?遡るとキリがないですよ。幕末まで遡りますけど・・・」

 「構わん。日本の第二次世界大戦は幕末からはじまったことを示すいい機会だ」

 「わかりました。

ごほん、1853年の幕末ぺリー来日は、日本の滅亡の危機の始まりだった。

ペリーは親日を目的としてきたわけじゃない。

軍艦を引き連れ、開国するか、全面戦争突入か好きな方を選べと脅してきた。

もちろん弓と刀、大砲も旧型の日本軍が黒舟なんていう化け物に勝てるはずがない。

なんせ当時の軍人はチョンマゲしたお侍だからな。

おまけに今まではのらりくらりと誤魔化してきた鎖国政策も、ペリーには通用しなかった。

日本人はいざというときは返事をやたらと引き延ばさせる。

だが、ペリーは日本人とはまともに話しても通用しないことを知っていたから強引かつ、もっとも有効な手段に出たわけだ。

ペリーの脅迫じみた外交は日本の鎖国政策と幕府の権威をボロボロにした。

列強各国はアジアに残された最後のフロンティアである日本を狙い、こぞって開国を迫る。

アメリカの軍艦の次は、ロシア、そしてイギリスまでもが軍艦を引き連れてやって来た。

福沢諭吉は世界の歴史とアジアの現状、そして世界各国の政策その他を研究し、どうすればこの国家存亡の危機を脱出できるかを考え、そして一冊の本を書いた。

これが学問のすすめだ」

 「何それ?」

 「お前、兵器のこと以外は本当にからっきしだな。学問のすすめは日本の孫子と言うべき有名な本だぞ?」

 「悪かったわね。あたしの専門は考古学と宗教だから政治は素人なのよ」

 「・・・・・・・。現代の政治がわからねえヤツが古代の政治を調べてどうすんだ?」

 「趣味!

 「そこまで威張られるとこちらも突っ込む余地がないぜ。

まあ「三国志」とか「信長の野望」にやたら詳しいヤツも趣味だから似たようなもんか。

とにかくだ。

幕末の日本は荒れに荒れた。

坂本竜馬をはじめとした幕末の英雄たちは、基本的に侍だから幕府がなくなればプータローになっちまう。
長州や薩摩の連中は基本的に
徳川幕府なんてクソ喰らえという連中だからまだしも、勝海舟あたりは幕府の重要な役職についていたのに幕府を選んで日本を滅ぼすか、日本を選んで幕府を滅ぼすかという究極の選択を迫られていたんだ。

そして京都ではあくまで幕府の力で外敵を跳ね返そうとする幕府側と、そんな甘い考えでは勝てないという維新側が血で血を洗う暗殺劇を繰り広げ、明治維新は多大な犠牲の上に成り立つことになったわけだ」

 「だから剣心さんも人斬りをしてたんですね。国を守るために」

 「あれはフィクションでしょうが・・・・」

 「るろ剣の作者は明治政府をひたすら悪役にしてたが、まあ日本国内限定の視野だからそれも仕方ねえだろう。

少年誌で「悪いのは白人だよ」なんて言ったら頭のイカれた連中が何しでかすかわかったもんじゃない。

なんせ少年誌だ。細かいことを気にしても仕方ない。

わからねえのは幕末ファンってのは日本に腐るほどいるはずなのに、なんでここまで旧日本軍否定派が多いのかって事だ」

 「皆さん、幕末と第二次大戦は別の時代と思ってるのでしょうか?」

 「幕末からたったの1世紀すら経ってないのに別時代か。

幕末は、「外敵から日本を守るため、新政府を作るための大騒ぎだった」ってのはみんな納得できるのに、なぜか日露戦争の後は「日本が悪い」の一言で済ます。

あいつらの歴史はどこでどう繋がってるんだ?

 「はいはーい!わたしわかりますよ」

 「わかるのか?さすがだな」

 「そんなの簡単じゃないですか。繋がってないんですよ」

 「・・・・。そうだな。多分それが正解だろうな。

みんなの頭の中じゃ、幕末は土方歳三 が戦死したあたりで終わってんだろうな

 「大丈夫ですよ。るろ剣のおかげで明治10年まではOKですから」

 「・・・。ま、愚痴っても仕方ねえか。

何はともあれ、こうして力を求める日本は朝鮮を併合しようと言い出したわけだ。

日本だけじゃ勝てないからな。

当然反発も食らうし、中国も自分の縄張りを取られて黙っちゃいない。

日清戦争の始まりだ。

日本も明治維新前は朝鮮を攻めようなんて気はこれっぽっちもなかったんだが、なんせ列強に囲まれて四の五の言っている場合じゃない。

殺らなきゃ殺られる!

自分の家族や友人が異国の侵略者に奴隷にされるくらいなら鬼になるしかない。

極限状態に追い込まれた日本は中国大陸に進出し、他の列強と同様に植民地政策を取り始める。

このときの植民地政策のおかげで日本は日露戦争に勝ち、独立を守ったんだ。

中国を攻めてなきゃ日本はロシアの占領下。

第二次大戦後に「中国を攻めなければよかった」とか言い出す連中も、それはソ連の占領下に無いから言えるんだ。

まあ、贅沢な文句というヤツだな」

 「だが疑問が残るな。日露戦争ではアメリカは日本の味方だったんだろ?

なんで第二次大戦でアメリカに喧嘩を売るんだ?」

 「欧州情勢は複雑怪奇と言い出す連中と同じことを言っているなお前は」

 「なぬ?」

 「何度も言っているように、ヨーロッパは損得勘定で戦争をやる

ロシアが南下政策をしていたのは知っているな?」

 「ロシアの北は北極だからな。冬将軍が来れば港も凍りつく。年中使える港が欲しかったんだろ?」

 「そうだ。そしてあわよくば世界征服の足がかりにしようとまで思っていたロシアは、ウクライナ地方に足を進める。

クリミア戦争だ」

 「まるで東部戦線ね」

 「イギリスとフランスが仲が悪いことは周知のとおりだ。

あいつら何百年も戦争やってたからな。ところがこのクリミア戦争では英仏は連合を組んでトルコを支えた」

 「ロシアという共通の敵がいたからな」

 「それと同じなんだよ。

基本的にアメリカは植民地支配はそれほど派手じゃなかった。

せいぜいフィリピンだが、これは利益よりも戦略上の基地として欲しかった傾向が強い。

なにせあんまり派手にやらかすと他の列強とドンパチするハメになるからな。

そもそも国がでかいから、他の列強と戦争やってまで強くなる必要はなかったわけだ。

だがアメリカはフロンティアの国。

力ずくでアジア系先住民の土地を奪っておきながら、「正義」とか「挑戦」とか言い張る国だ。

日本だって世界を真っ赤に染めるのを内側から手伝っていたにも関わらず平和主義の国とか言い張る国だし、どっこいどっこいだな。

とにかく、ロシアが南下してくれば困るのはアメリカだってことだ。

何せロシアはアメリカと世界のトップを争う大国だからな。

ただでさえ馬鹿デカいロシアが、アジアを侵略してこれ以上でかくなったら手がつけられなくなっちまう。

そこでアメリカは日本を裏から援助していたわけだ。

日本を欧州列強が植民地にしたら、アメリカにとってもピンチだからな。

ここを取られたらアメリカ本土まで敵軍を遮るものはなくなり、自分たちの尻に火がつく。

それならいっそ日本の独立を手伝い、列強の防波堤にしたほうが分がいいと踏んだんだろ。

そうすればアメリカが直接怨まれることもないし、列強の防波堤にもなる。

うまくいけば、裏から日本を操ることで半植民地にすることもできるかもしれないしな。

まさに、アメリカお得意の外交戦略の勝利と言うヤツだ。

日本としてもやたら伝統にこだわって黄色人種を認めない欧州よりは、少しは話の通じるアメリカと手を組んだ方がマシと思ったんだろう。

ところが日露戦争でロシアが破れ、第一次大戦で欧州が大混乱になってくると順調に力をつけてきた日本がアメリカの目の上のタンコブになってきた。

今までは列強の防波堤にしようと思っていた日本が、逆にアメリカの脅威になっちまったってわけだ」

 「利用価値が無くなれば捨てられるのはいつの時代も同じですね」

 「英仏百年戦争の英雄ジャンヌ・ダルクと同じ構図だ。

戦争が講和になりつつあるのに、徹底抗戦を唱えていた超タカ派のジャンヌはフランスの王から疎外されて捨てられた。

明治日本は白人の支配を跳ね返したまではよかったが、強くなりすぎてしまった。

このまま日本を放って置けばやがてアメリカの脅威になる。

そう考えたアメリカは日本に圧力をかけ始めた。

大国の権限と、日本が黄色人種ということを利用し、対日本包囲網を仕掛けた。

対ソ連包囲網では仲良く「ソ連をぶっ潰そう」とか言ってたくせに、いざ日本が強くなると今度はソ連と日本をぶつけようとした。

アメリカと組む前からソ連は中国を共産化しようとその勢力を南下させていた。

そのため中国ではアメリカの推す蒋介石の国民党と、ソ連の推す毛沢東の共産党が泥沼の内戦を繰り広げていた。

つまりは、米ソの代理戦争だ」

 「その頃からそんなことばっかりやってたのね」

 「第二次世界大戦直前、敗北寸前の共産党は国民党と手を結び、日本軍と国民党が戦っている最中に共産党は力を蓄え始めた。

南下政策を続けていたソ連、国民党を倒したかった毛沢東率いる中国共産党、そしてアメリカ。

第一次大戦の戦後処理で日本の平和思想を握りつぶした列強各国は利害の一致から手を結び、日本は日本で軍部が暴走し始めた。

日本がその状況に気づいたときはすでに遅かった。

日露戦争の勝利に酔って国際状況がまるで見えてなかったんだ。

対日本包囲網は完成しつつあり、唯一日本と状況が似ていたのが第一次大戦で敗北したドイツだったというわけだ」

 「じゃあ台湾の蒋介石が第二次大戦後に日本に友好を唱えていたのは、日本の置かれていた状況を知っていたからなのか?」

 「さすが総統だけある男だぜ。世界情勢をよくわかっている。

戦後の台湾は日本の立場に同情してくれた。

昨日の敵は今日の友。

真の敵は血に飢えたコミーどもだってことを知っていたんだ。

だから怒りに燃える部下や国民をなだめ、「今はお互いが争っている場合ではない。過去よりも未来に目を向け、これからは力を合わせていこう」と言っていたんだ。

中国と台湾がいつ戦争してもおかしくない状況下なのに、過ぎてしまったことをいつまでも穿り返して、団結すべきときに西側が仲互いすれば、喜ぶのは東側だってわかっていたんだよ」

 「つまり、敵はアカだよってことですね」

 「蒋介石もその結論かい・・・・。なんかそればっかね」

 「蒋介石だけじゃないぜ。チャーチルも、ケネディも、レーガンも、歴代の一流とされている西側の政治家はみんなそれを言っている。

だから第二次大戦前まであれほど嫌い合ってた列強各国が冷戦になったとたんに手を結んだんだ」

 「おいおい・・・。近代の優秀な政治家ってのはそんなやつばっかかよ」

 「優秀な政治家ってのは二種類しかいないんだ。
悪党か正義の味方だ

 「好きねぇパトレイバーネタ・・・・」

 「だってアカどもが何をしてきたか知ってれば、協力せざるを得ない状況にあるってのは簡単に理解できるだろう?

だからチャーチル  が共産主義を知らない人間はアカの手先って言ってたんだよ。

あの人種差別万歳野郎が戦後になって日本を仲間に入れたかっていうか、白と黄色がどうこうよりも赤は最悪だってわかっていたからだ」

 「チャーチルさんが元祖人間毒電波発信装置だったんですね。

みなさんはこの人に精神汚染されてしまったのですか。

麗しき殉教者ジーザス・クライスト」

 「元祖人間毒電波発生装置って、をい・・・・」

 「教科書には載ってない話だな・・・。まぁ、こんな話はお子様には話せないだろう。

確実に人間不信に陥る」

 「まあな。こんなことを小学生に話すわけにはいかねぇよ。

子供のうちは世の中が平和だと思っていたほうがいい。

もっとも、そのまま大人になるから困るんだがな。

そんなこんなで1930年代の日本の周りは敵ばかりだった。

そしてドイツと同盟を組むことで日本はドイツ、イタリアと共に完全に世界から孤立してしまった。

もっとも、ドイツと同盟を組まなくても孤立は避けられなかったけどな。

日本が国際的に孤立していく状況に恐怖した日本国内の非戦派は、

これはアメリカの挑発だ!絶対に乗ってはいけない!これはやつらの罠だ!

アメリカの意図を読み取り、ハト派の非戦派がタカ派の抗戦派を必死で止めた。

ところがアメリカの方がさらに一歩上だった。

ABCDラインを仕掛け、挙句の果てにはハル・ノートまで突きつけた」

 「ABCDってのは、A−アメリカ、B−ブリテン(イギリス)、C−チャイナ(中国)、D−ダッチ(オランダ)の包囲網でしょ。でもハル・ノートって・・・。何それ?」

 「アメリカが日本に突きつけた最後通帳だ。

日本は中国大陸から無条件で撤退せよ。
そうすれば資源の輸入ルート回復の交渉の場に座ってやってもいい

 「え? こんなことしてたの?」

 「こりゃ酷いな。中国大陸から撤退しなければ貿易封鎖、撤退しても貿易封鎖を解くとは限らないってのは・・・。

資源のない日本はこのままじゃ自滅だ。

戦争以外にこの状況を抜ける手段はないぞ」

 「戦後の東京裁判の後、パル判事が『日本無罪論』を書いたもの当然ということですね」

 「何それ?」

 「文字通り、太平洋戦争で日本は悪くないということをダラダラと書いた本だ。そのラストでパル判事はこう書いている」

 

時が、熱狂と、偏見をやわらげた暁には、また理性が虚偽からその仮面を剥ぎ取った暁には、そのときこそ、正義の女神はその天秤を平行に保ちながら、過去の賞罰の多くに、そのところを変えることを要求するであろう。

 

 「要するに、冷静に見れば日本だけが悪かったってのはあり得ないってことだな。

そして無罪判決の決定的な理由となったハル・ノートが日本の軍部の暴走を決定的にした。

幕末の不平等条約のように、列強の要求は次から次へとエスカレートしていき、ラストはこれだ。

アメリカはご丁寧なことに、この要求が飲まれても次の手段も考えていた。

ネズミにクッキーをやると、次はミルクを欲しがる。

日本が暴走するか、最終的に戦わずしてアメリカの植民地になるまで要求は続いただろうな。

ただで併合できるならこれほど楽なことはない。

ハル・ノートに対し、テロには屈しないとして暴走する軍部を、怒りが爆発した日本の国民世論が後押しし、もはや戦争突入は避けられなくなった。

こうして1941年12月8日、日本は日米開戦に踏み切ることになる」

 「アメリカはドイツと戦う理由を手に入れ、さらにライバルの日本を潰すことができるようになったわけだ。

だが、アメリカの誤算は日本軍の能力を侮りすぎた。

窮鼠、猫を噛む

日本など取るに足らんと侮っていた連合軍は真珠湾攻撃を皮切りに大打撃を喰らい、日本は世界へ向けて黄色人種の意地と誇りを見せた。

慌てたアメリカは本腰を入れ、日本を本格的に叩くことになる。

早期講和に失敗した日本軍は、ミッドウェー開戦の敗北を皮切りに敗北の一途を辿っていった。

もともと日本には勝ち目などなかったのだ。

だが、日本は戦うしか他に道は無かった。

いや、戦う以外の選択肢は全て列強に潰されてしまったのだ。

ハル・ノートを認める。

それはアジアの黄色人種独立の希望の光を自らの手で消すことだからだ。

幕末や明治の先人たちが多大な犠牲を払ってまで守ったアジアの完全独立の理想が、完全に滅ぶことだからだ。

何のために坂本竜馬は暗殺された!?

何のために高杉並作は病の体を引きずって近代化した軍を作った!?

何のために桂は、大久保は、そして西郷は幕府を倒して明治政府を作った!?

何のために剣心は、人斬り抜刀斉になった!?」

 「えーと、西郷さんは島津幕府を作りたかっただけなのではないでしょうか?

実際、明治政府なんてクソ喰らえって反乱起こしてますし

 「それに剣心って・・・。あれは漫画だろう?」

 「・・・・。とにかくだ!」

 「あ、誤魔化した」

 「日本は熱き理想のために立ち上がった。

だが理想だけじゃ戦争には勝てない。

時間が経つに連れ、アメリカの戦力が回復してくると状況は一方的になってきた。

日本叩きが一段落したアメリカは1942年には北アフリカでDAKを叩き、ドイツ軍の抵抗に苦戦しながらも1943年5月には北アフリカを攻略を成功させることになる」

 「ようやく元の話に戻ってきたな」

 「一応は第二次大戦の授業だからな。太平洋戦争も少しはやっとかないと・・・・」

 「だが冷戦の話もしていたぞ」

 「細かいことは気にするな」

 「相変わらずドイツ人にあるまじきセリフね」

 「さて、ようやく最初に戻ったわけだ。

1943年5月に北アフリカを攻略した米英連合軍の次なる標的はイタリアだった。

1943年7月10日、準備を整えた米英連合軍は北アフリカ攻略の勢いに乗って上陸作戦「ハスキー作戦」を決行した。

目標はシチリア島の北端メッシナ。

モンティ指揮下の英軍第8軍を主力に兵員16万、艦船3000という過去に行われた上陸作戦の中でも最大規模の兵力を動員した。

シチリア島を防衛するのはイタリア軍の役目だった。

ところがやる気のないイタ公が全く歯が立たなかったため、北アフリカへ増援として送られるはずだったドイツ軍が主力となった」

 「ここでもイタリアなのね・・・」

 「ドイツ軍の抵抗は凄まじかった。

ティーガーの前に米英の戦車はひたすら壊され、まともな勝負になどならない。

東部戦線のクルスク戦車戦をも犠牲にしてかき集めたドイツ軍の精鋭は、質の劣る連合軍を返り討ちにしていった。

だが、北アフリカと同様、質では勝っても数が違う。

連合軍のなりふり構わない力押しの戦術でシチリア島は次々と占領され、ドイツ・イタリア軍は追い詰められてしまう。

戦闘開始から一ヵ月後の1943年8月11日、ドイツ軍はシチリア島を守ることは不可能と判断し、17日にはイタリア本土に撤退を余儀なくされた。

このシチリア島が攻略されたことでイタリアのムッソリーニ政権はクーデターによって倒れてしまう」

 「それってつまりイタリアが降伏したって事?」

 「そうだ。独断専行で軍を動かし、挙句ドイツ軍の勝機を奪った上に中立だった敵をことごとく敵に回し、もっとも辛い東西からの挟み撃ちが決まったという時点でイタリアは勝手に降伏してしまった」

 「なんていうか・・・すごいわね」

 「もとはと言えばイタリアが独断専行でイギリスに喧嘩を売ったからなんだろう?

それなのに一番辛いときに勝手に降伏とは・・・・。ドイツ軍も可哀想に」

 「物量で劣るドイツ軍についても負ける。

ならさっさと降伏して連合軍についたほうが分がいいと踏んだんだろ。

ヨーロッパの同盟は利害の一致が崩れたところで崩壊するといういい例だ。

同盟国なんて当てにならないという証明だな。

賢い国だぜ、いや、ズル賢いって言うべきかな」

 「このイタリアの降伏に対し、ヒトラー総統は

ムキーッ! イタリアを占領せよぉっ!

と怒り狂い、ただちにイタリアを占領する命令を出した。

ドイツ軍の強さを肌で知っていたイタリア軍は、ただちに武装解除し、イタリアはすぐさまドイツの支配下になった」

 「どこまでもやる気ないわね、一体どっちの味方なのよイタリアは」

 「連合国側に立つ王国軍と、ドイツ側に残る社会共和国軍とに分かれたイタリアを砦としたドイツ軍は、天然の要塞であるイタリアの山に陣地を作り、6ヶ月以上の間、連合軍の猛攻を防ぐことになる。

西部戦線は、当初は地中海から上陸してイタリアを落とし、そのままフランス、そしてドイツへなだれ込む作戦を取っていた。

これはチャーチル  が中心となって出していた案だ。

だが、東部戦線でソ連が有利になり、イタリアに篭るドイツ軍の激しい抵抗から、スターリン  や、アメリカのマーシャル将軍らのフランス北部の海岸線からの上陸作戦が採用される可能性が大きくなった。

ここで注意したいのは、この時点でチャーチルよりもスターリンの方が力が強かったということだ。

なにせ西部戦線よりも、東部戦線のほうがドイツ軍を圧倒していたからな。

チャーチルはすでにこのときから戦後の冷戦を予感していた。

ドイツを倒してしまえば、イギリスやアメリカとソ連の対立は確実となる。

だからスターリンの力が連合軍の中で強くなっていくことに危機感を感じていたんだ」

 「東部戦線でソ連が壊滅寸前だったときにイギリスが大規模な行動を取らなかったのは、ひょっとしてソ連がドイツに潰されることを願ったからなのかな?」

 「可能性としては大きいな。この時期にわざわざ行動を起こすより、スターリングラード攻防戦の最中に行動を起こした方が連合軍全体としては勝利が近づく。

ソ連が何とか東部戦線を盛り返したからいいものの、ヘタすればソ連はスターリングラードの時点でドイツに潰されていたかも知れないんだからな」

 「連合軍も一枚岩じゃないってことか。ま、当然よね。元は敵同士なんだから」

 「ソ連が米英と組んでいた理由は、ドイツを倒すというただその一点のみだ。

だからドイツを倒しながらも、英米とソ連はお互いの力を何とか削りたくて仕方がなかったんだ。

だが、とりあえずは仲間だ。ドイツを倒すまではな。

1943年11月28日、イランの首都テヘランにおいてスターリン  、チャーチル  、ルーズベルト  による首脳会議が行われた。

かねてからのヨーロッパ上陸作戦は、アメリカのマーシャル将軍が出したノルマンディー上陸作戦をスターリンが後押しする形で決定した」

 「ノルマンディー上陸作戦ね」

 「もともとこの作戦は、1942年、つまり東部戦線のスターリングラード攻防戦の前後あたりからすでに計画され始めていた。

1942年の「ディエップ上陸作戦」で、作戦的には連合軍の完敗だったが「ノルマンティー上陸作戦」のためのデータ取りとして利用された。

1943年1月の米英首脳会議で話題に上り、1943年11月の英米中のテヘラン会談によって決定されるという、2年半にも及ぶ長い時間をかけたプランだったんだ」

 「暗号名は大君主(オーバーロード)。

目標はフランス北部ノルマンディー海岸。

指揮は米軍のアイゼンハワー陸軍参謀長代理が担当し、陸海空の総兵力300万人以上

艦船6000隻、航空機1万4千。

戦車を含めた車両は5万数千両というまさに史上最大の作戦だ。

そして、1944年6月6日、連合軍の大攻勢が始まった」

 「対するドイツ軍は上陸時期に関しては潮の満ち引きや、気象条件からだいたいいつ頃来るかは予想していた。

だが、連合軍の主力部隊がノルマンディーに来るのか、それともカレーに来るのかがわからずに意見が対立していた。

結局、意見が決まらずヒトラー総統の当てにならない直感に頼ることになった」

 「あれ?たしかロンメルはノルマンディーに来るって予測してたって聞いたけど?」

 「たしかルントシュテット以下参謀本部は、カレーに来るだろうって予測してましたね。あと、上陸部隊に対して「水際作戦」を主張する

B軍集団司令官ロンメルと、「内陸撃破」を主張する西方軍総司令官ルントシュテットの意思統一ができず、ヒトラーは双方の意見を

足して2で割った折衷案を出してましたね〜」

 「なあアルク、どうして俺たちの周りにいる女ってこんなのばっかなんだ?

 「あまり深く考えるな。悩めば悩むほど、深みにはまるぞ?

さて、ついに作戦発動だな。

 「1944年6月6日午前0時、連合軍の空挺部隊が降下。

後の上陸部隊の援護のためドイツ軍の進出を阻止することになる。

同日早朝、連合軍の歩兵部隊はユタ海岸、オマハ海岸、ゴールド海岸、ジュノー海岸、ソード海岸の6つの海岸から上陸作戦を開始。

戦艦、駆逐艦による艦砲射撃とヤーボ(ヤクトボンバー=戦闘爆撃機)の爆撃の嵐の中、歩兵たちは荒波に揉まれながら上陸地点へと進んだ」

 「ちょうど『プライベートライアン』のオープニングですね。ライアン二等兵は降下部隊、ミラー大尉は上陸部隊。戦場はオマハ海岸

ミラー大尉はシチリア島上陸作戦にも参加していたという設定です。

でもあの映画って、撮影現場はオーストラリアだったような」

 「そんなことよりドイツ兵が撃ちまくってるMG42は最高だぜ。あのマシンガンはちょっと改良してあるが、21世紀現在でも現役だからな。

ドイツの科学力は世界一ィィイイイイイイイイイっっっっ!!

 「何を言う!M60こそマシンガンの華!」

 「M60はMG42のパクリでしょうが。しかもパクったのに性能が落ちてるというトンでもない銃でしょ?」

 「ナンバーワンの葉っぱは最高だぜぇっっ!!

 「・・・。あんたいつからナム戦の海兵隊になったのよ。あんたは太平洋戦争の海兵隊って設定でしょうが」

 「いや、何か対抗しなきゃならんような気がして」

 「ナンバーワンの葉っぱって何ですか?」

 「麻薬」

 「―――― はい?」

 「ベトナム戦争の兵士は、ベトコンとの戦闘が恐かった。当たり前だ。ジャングルでどこに敵がいるかわからない。

いままでコンクリートとビルの世界にいた人間が、いきなり地獄の戦場行きだ。

そりゃ誰だってビビる。

だもんだから兵士たちはみんな恐怖から逃げるためにいろんなもんに手を出す。

アルコール、ドラック、売春、まぁ戦場の風物詩みたいなもんだ。

ドイツ兵だって一応はコンドームを―――――」

 「あたっ!」

ぼこっ!

 「おお!右ハイキック!」

 「文字だけじゃわからないけどな」

 「痛ぅっ!何するんですか、いきなり!」

 「アホか貴様はっ!10代の娘に一体何を話しているっ!?」

 「あ。すいません大尉、ついべらべらと」

 「あー。コンドームというと銃口に砂が入らないように使うアレですね。もしくは水筒、止血剤」

 「まぁそーいう使い方もあるんだが・・・。なんで知ってるの?」

 「うふふ・・・。それは内緒ですよ☆」

 「名作と言われた『プライベートライアン』で、わたしが唯一我慢できないことがある。

それがなんだかわかるか?」

 「さあ?」

 「ラストで出てきた改造ティーガーだ!あんなものはティーガーではない!」

 「あれって、T-55に張りぼてをかぶせたなんちゃってティーガーだったわね。

でもまぁ、そーいうなんちゃってティーガーは実際にあったものだし、そこまでこだわらなくても・・・」

 「シャラップっ!ティーガーだぞ、ティーガー! 栄光あるドイツの虎戦車をようやく見れると思ったら、なんだ!

せっかくのティーガーが、実はソ連製というあの映画はっ!

転輪の部分を見てみれば、T−55ではないかっ!? おのれ、視聴者を嘗め腐りおってっ!」

 「だって、T−55は安いし。数だけは掃いて腐るほどあるし・・・。

第一、本物のティーガーなんて今時入手はまず不可能・・・・」

 「大尉・・・。そーいう初心者お断り的なネタの連発は読者が理解不能かと・・・」

 「・・・・。

さて、何はともあれノルマンディー上陸作戦が決行された」

 「誤魔化しましたね」

 「ボートに揺られて上陸する連合軍を待ち構えていたのは、ドイツ軍の機関銃の嵐だった。

  

 「対戦車砲、88ミリ砲、75ミリ砲などで構えたドイツ軍は石で作られた堤防や防波堤に隠れながら、無防備な敵兵を撃ちまくった。

だが、なんせ300万人以上を動員した作戦だ。

あとからあとから沸いてくる兵士の波はドイツ軍の防御を貫き、作戦初日に作戦は成功を収め、連合軍はノルマンディー上陸を果たした。

この作戦の連合軍の被害は2500人。

負傷者はその数倍だ。

最大の激戦区となったオマハ海岸は1000人の死者を出すほどだった。

だが、東部戦線に比べれば遥かに少ない死者数だ。

ノルマンディー上陸を果たした連合軍の次なる目標はパリだ。

上陸さえ果たせばあとは一気にフランスを攻略できる。

当初、連合軍はそう考えていた。

だが、ドイツ軍の反撃により数日で終わる予定のオーバーロード作戦は大幅に遅れることとなる。

とくに激戦区となったのはフランス東部の都市カーンだ。

ノルマンディー上陸作戦当初は、準備不足で不覚を取ったドイツ軍も、実戦経験豊富な戦車師団が東部戦線より援軍として派遣されたことによって状況に変化が起きた。

ノルマンディー海岸に近い大都市カーンを落としたい連合軍を撃退すべく、ドイツ軍は主力部隊を展開。

第21戦車師団、教導戦車師団、そしてSS第12戦車師団H・J(ヒトラー・ユーゲント)だ」

 「H・JはLSSAHから抽出されたベテランを基幹要員とし、兵をヒトラー青年団の志願兵で編成した高い戦闘力を持つ部隊だ。

1943年末期、すでに東部戦線が崩壊しつつあった頃から、ヒトラーユーゲントは訓練に訓練を重ねていた」

 「ノルマンディー上陸後の連合軍の攻撃は凄まじかった。

昼間は全く行動ができないほどの爆撃の雨を降らし、何もかもを焼き尽くしたんだ。

だがそんなことではドイツ軍は引かない。

地上部隊が突っ込んできてもドイツ軍の戦車が蹴散らす。

たしかに数の差は圧倒的だった。

だが、ドイツ軍の必死の抵抗で数日で終わるはずの作戦は延長を重ね、英軍のモンティ  のタイムテーブルを一ヶ月以上狂わせた」

 「数では数倍の差があったんだろ?なのに一ヶ月も持ちこたえたのか・・・。凄まじいな」

 「鬼神の如きドイツ軍の活躍は、連合軍に大量の出血を強いた。

だが、その代償は大きく、H・J師団の人的損害は師団将兵の4割を超えていた」

 「4割・・・・」

 「カーン攻防戦の最中、イギリス軍第7機甲師団は、側面への攻撃を仕掛けるべく、カーンの南西に位置する町ヴィレル・ボカージュまで進出した。

しかし、そこにはドイツ軍のソロモンの悪夢こと、史上最強の戦車乗り、ミヒャエル・ヴィットマン  がいたんだ」

 「ソロモンの悪夢って、をい・・・。なんでガトーなのよ」

 「ニュータイプじゃないからな」

 「いや、そーいう問題じゃなくてさ・・・・」

 「東部戦線で100両以上の戦車を撃破したティーガーの騎士ことヴィットマンは、ティーガー4両、四号戦車1両、合計5両の戦車で偵察任務を行っていた。

そこへカーンに側面攻撃を仕掛ける英第七機甲師団のクロムウェル戦車60両が通過してきた。

普通ならばここで逃げる」

 「12倍の戦力差だからな」

 「だが、英軍戦車が一本道に入るのをチャンスと思ったヴィットマンはたった5両で戦闘を仕掛けた。

森に隠れ、先頭と最後部の戦車を一撃必殺

88ミリの鋼鉄の牙を持つ猛獣が唸りを上げ、英軍戦車を次々と撃破していった。

先頭と最後部の戦車がやられ、行き場のない58両の戦車は大混乱に陥った。

ヴィットマン率いる5両の戦車は25両の戦車を血祭りに上げ、残りは命からがら逃げ出すことになった。

かくして側面攻撃を仕掛けようとしていた英第七機甲師団60両の戦車はたった5両の戦車に破れ、カーン早期陥落の望みを絶った。

この時点でヴィットマンの戦績は敵戦車138両、敵火砲132門撃破、合計270という凄まじいスコアになっている」

 「さすがソロモンの悪夢ですね」

 「いや、それは俺がただそう言っているだけで実際はそんなことは言われなかったんだが・・・」

 「だが、ヴィットマンも不死身ではない。

カーンが陥落し、ノルマンディー海岸から近いフランス西部の都市サンローでヴィットマンの乗るティーガーは敵からの集中攻撃を受ける。

なんとか弾幕を突破したものの、そこにはカナダ軍のシャーマン戦車8両が待ち構えていた。

ヴィットマンの乗るティーガーは単独で3両を撃破するが、残りの5両のクロスファイヤー(十字砲火)を喰らい、ティーガーは撃破され、1944年8月8日、ヴィットマンは名誉の戦死を遂げる」

 「それでも8両で囲まれたのに3両を道連れか・・・。恐ろしい戦車乗りだな」

 「凄いだろっ!」

 「で? お前のスコアは?」

 「い”っ!? あ、あと一両でエースだ!」

 「本当のところはどうなんです?ソフィアSS大尉殿?」

 「あと一両でエース? ヴォルフが?」

 「あ、その・・・・」

 「くす・・」

 「やっぱり・・・・」

 「・・・・・」

 「本当だよ、ヴォルフはあと一両でエースになれるさ」

 「怪しいな」

 「わたしが保証する。信用しておけ」

 (大尉・・・・?)

 (貸しだぞ、ヴォルフ)

 「・・・・。ま、そーいうことにしといたげるわ」

 「ドイツ軍のエースと言えばヴィットマンだが、他にもエースは存在した。

ヴィットマンがティーガー(=六号戦車)のエースとすれば、パンター(=五号戦車)のエースはエルンスト・バルクマン  だ。

 ←パンター

 「ヴィットマンが戦死したのとほぼ同時期にサンロー防衛戦では、曲り角を利用し、9両の戦車を戦車を血祭りに上げ、後世にこの戦いはバルクマンコーナーとも言われた。

ノルマンディー上陸作戦だけでバルクマンは40両もの敵戦車を撃破している。

名実ともにパンターのエースだ。

だがこのバルクマンはエース扱いやヒロイズムを嫌っていた。

彼は次のように述べている。

 

 「私は他の多くの者よりも運が良かっただけで、兵士としての義務を果たしたに過ぎません。敵との戦いに全精力を使い、スコアなど数えているような余裕などありませんでした」

 

 「ドイツ軍のトップエースの実力と成績がありながらもこの謙虚な態度。

まさにプロイセンの騎士の理想像だ。わたしもこういう人の元に嫁ぎた・・・・、ごほん」

 「え?今なんて?」

 「嫁ぎたいとかなんとか」

 「え?大尉って男に興味があったんですか?」

ボコっ!

 「ぐお!」

 「強烈なニーバズーカ。みぞおちにモロに膝が食い込んだな・・・・」

 「おのれヴォルフ、人を何だと思っている・・・!」

 「てっきり女に興味が――――」

ゴンっ!

 「がはっ!」

 「今度はかかと落とし。スピードの乗った強烈な攻撃だ」

 「解説のアルクさん。ヴォルフさんが前に倒れたまんまピクリとも動かないんですけど」

 「放っておけば復活するよ、問題ない」

 「・・・・・・・ぶつぶつ。わ たしだって恋人の一人や二人くらい欲しいけど(※それは二股です)、しょうがないじゃないか。周りにいるのがこんなのばっかじゃ。ったくどいつもこいつも 人を「鉄の女」とか、「鬼の隊長」とか、「あれは女じゃない」とか好き勝手言いやがって、あげくは「レ●」の烙印まで押しやがって・・・。わたしだって一 応は女の子なんだぞ。綺麗なドレスを着て結婚式をしたいし、子供だって一人くらい欲しい。戦車乗りなんかさっさと引退して、家でエプロンつけながら料理し たりエトセトラエトセトラ・・・・

 「で、ソフィアさんはどーいうのが好みなの?」

 「やっぱヴォルフさんみたいな人でしょうか?」

 「それはない

アレとわたしをくっ付けるんじゃない、不名誉な

 「ついにアレ扱いなんですね」

 「不名誉・・・。そこまで言うか」

 「まあアレじゃしょうがないっしょ。騎士オタクで気持ち悪いし」

 「お前もかなり酷いぞ」

 「とにかく、そーいう雑談は休み時間にやれ。今は授業中だ。

さて、続きを話そう。

連合軍の勢いは止まることを知らない。

なんせバルバロッサ作戦よりも大規模な大軍だ。

倒しても次から次へやってきて全くキリが無い。

バルクマンも防備にまわっていたサンローはドイツ軍戦車教導師団によって守られていたが、ここを突破するために連合軍は空軍を投入。

連日2000機以上のヤーボが爆弾の雨を降らせ、戦車教導師団の半分はこれで壊滅した。

ドイツ戦車に真っ向から勝負しても勝てないからな。

戦車というのは基本的に上からの攻撃には弱い。

だから制空権を何とかして取りたかったんだが、なんせ数が違いすぎる。

完全に制空権を取られてしまい、空爆攻撃の嵐の前にはさすがのドイツ軍も手が出せなかった。

こうしてフランス西部のサンローは落ち、やがてカーンも陥落することになる。

連合軍の包囲網は日に日に迫り、ドイツ軍が完全に包囲されるのも時間の問題となった」

 「このままでは東部戦線の二の舞ですね。完全に包囲される前に撤退すべきです」

 「そうだ。そして将軍たちもこの状況下での反撃はかえって無駄な犠牲を増やすだけと知っていたから、大規模な後退をすべきだと言っていた。

ところが無能のチョビ髭  がお得意の死守命令を出した。

その結果、主力部隊がファレーズ地区で孤立するという最悪の結果に陥った。

唯一の脱出路は、サン・ラベールとシャボアという村のわずか幅3キロの回廊地帯であり、そこを撤退するドイツ軍に容赦ない爆撃が降り注ぐ。

1944年8月12日から20日に行われたこのファレーズ脱出劇は、後世には『死の回廊』と呼ばれることになる」

 「このファレーズ脱出はドイツ軍に一万人の死者を出させた。

死守命令を無視して撤退をはじめた現場指揮官の判断で、なんとか五万人の兵士は脱出できたんだ。

まったく・・。あの無能のチョビ髭はロクなことはしない」

 「あ、復活した」

 「当然だ。
プロイセンの騎士に敗北の二文字はない

 「あっそ」

 「で、無能の総統だが・・・。なんでこんなヤツがずっとトップにいたんだ?暗殺でもすれば、かえって死者は少なくなっただろうに」

 「ヒトラー総統は、なぜか運だけは恐ろしいほどいいんだよ。

まるで悪魔が取付いているかの如く、生涯に50回以上暗殺されかかったが、全て切り抜けている」

 「50回!? それを全部切り抜けたの!?」

 「そうだ。警備の親衛隊が優秀だったってのもあるが、それ以上に運がいい。

爆弾入りの箱が2つ送られてきたときも、2つが同時に故障して動かなかったというときもあるし、自動車の故障で演説に遅れ、それのために時限爆弾から逃れたということもある」

 「その運が少しでもドイツ軍に傾けばよかったのにな」

 「DAKを率いたロンメル元帥は、その後は西部戦線で戦った。

ノルマンディー防衛の任務に着いていたが、現場の指揮官と歩調があわなかったりして結局ノルマンディー上陸を許してしまうことになった。

すでに敗北は時間の問題であることを悟っていたドイツ軍の将校の一部がヒトラー総統暗殺事件を起こした。

このまま戦争を継続しても勝機はない。

無駄な犠牲を増やすより、さっさと降伏すべきだと考えたわけだ。

だが、ヒトラー総統はまたもこの暗殺劇を乗り切り、反対勢力の一斉粛清に乗り出した。

運の悪いことにロンメル元帥もこの反対勢力の一味だと思われてしまったんだ。

実際には参加してなかったんだがな」

 「どうして?まさかこの状況下でヒトラーに陶酔していたわけじゃないでしょ?」

 「もちろんだ。むしろDAKが北アフリカで戦っているときからすでに敗北を予感していたんだ。

非人道的で無謀な作戦を繰り返す総統に代わり、ロンメル元帥を国のトップにしたほうがいいのではないか?という意見さえ現実味をおびえていた」

 「ロンメル元帥ならみんな納得するだろうな」

 「当然、ロンメル元帥は暗殺事件に誘われたがこれを断った。

プロイセンの元帥は謀反など起こさんのだっ!

と、誘いを断って騎士道を貫いたんだ。

だが、状況を理解できないほど馬鹿でもない。

ヒトラー総統の暗殺が成功すれば、ドイツを救うこともできる。

しかしそれは騎士道に背く。

義理と人情の板ばさみ。

仕方なく黙認することにした。

だが、これがロンメル元帥の命取りとなった。

暗殺事件にはロンメル元帥の部下が参加していて、当然ロンメル元帥にも容疑がかかった。

実際には荷担したないんだから、罪に問われることはない。

だが部下がやってしまったことは上司の罪。

ロンメル元帥は責任を感じ、送られた毒を飲んで自決した。

1944年10月18日、53歳の生涯を終えた。

国民にはノルマンディーでの戦傷が悪化伝えられ、10月14日、「家族には手を出さない」という約束で毒をあおり、ロンメルの国葬が行われた。

また、ロンメルは全く事件に関与しておらず、暗殺グループの偽証により罪に問われていた・・・真相が伝えられたのは戦後になってからだった。」

 「可哀想ですね」

 「あれだけ有能な将軍でも、独裁者の「全く他人が信用できない症候群」が発病したとたんにこれだ。

湾岸戦争直前、クウェート侵攻を反対したイラク将校の中には、イラン・イラク戦争で活躍した有能な将軍も数多くいた。

皆、祖国のために命を賭けて戦った歴戦の勇者だ。

だが、独裁者の「全く他人が信用できない症候群」が発病するとやはり処刑が決行された。

その数166人

ドイツ、ソ連、イラク。独裁者が支配する国というのはどこも同じということだな。

ファレーズで命からがら脱出に成功したドイツ軍だが、連合軍はその間にも破竹の勢いで突き進んだ。

8月25日にはパリ西方に位置するセーヌ川に到達。

ドイツ軍が撤退するとパリのレジスタンスが攻撃を開始、パリ解放に向けて大攻勢がはじまった。

すでにパリを守る力など残っていないドイツ軍に対し、無能のチョビ髭はまたもやお得意の死守命令を出した。

無論、こんな自殺戦法がまかり通るはずもない。

守ることが不可能となると今度は、

 「敵に渡すくらいなら、パリを燃やしてしまえっ!」

と、トンでもないことをいい出した。

現場指揮のコルティッツ将軍は、無意味な犠牲を出すことを好まず、この命令を無視した。

 「パリは燃えてるか?」

何をほざくのやら、本気で燃やすと思っていたらしい。

この時点で誰もチョビ髭のことなんぞ聞きやしないのだがな」

 「すでに部下にも見捨てられていたわけね」

 「こうして多くの血を流さずしてパリは解放された。

これは西部戦線での連合軍の勝利を全世界に印象つけることになったわけだ。

もはや戦争終結は時間の問題。

オーバーロード作戦開始から3ヶ月、ついにフランスが連合軍の手に渡った。

それでも連合軍の勢いは止まることを知らない。

だが、ヒトラー総統はまだ降伏する気などなかった。

むしろまだ勝てると思っていたのだ」

 「戦力差が10倍以上なのに?」

 「10倍で済むのか?もっといってそうだが」

 「ヒトラー総統の頭の中で大人気連載していた仮想戦記はこうだ。

米英連合軍は戦線を広げ、補給に苦しんでいる。

そこでベルギー・フランス国境線にいる主力部隊を前と後ろから叩き、包囲殲滅させるという妄想を思いついたのだ」

 「フランス攻略戦の再現ですね」

 「そうだ。だがフランス攻略戦のときとは状況が違う。

根本的に戦力差が激しすぎる。

1940年のフランス戦は兵力は互角、戦車の性能ではやや劣るものの、空陸一体の電撃戦で制空権はドイツ軍が制していた。

だが、この作戦の場合、戦力の差は著しく、制空権は完全に取られ、おまけにドイツ軍は燃料不足から戦車が動けないという最悪の状況だった。

後にラインの護り作戦、もしくはバルジ大作戦と呼ばれることになるこの作戦は、結局失敗に終わり、勝利を信じて油断していた西部戦線の連合軍の目を覚まさせるだけの結果に終わった。

1944年12月にはじまったこの作戦で一旦は攻勢に出たドイツ軍も、1945年2月には攻勢に出る直前のところまで戦線が引いていた。

一方、東部戦線もまたソ連軍の大軍によってドイツ軍は敗北の一途を辿っていた。

1945年1月にはポーランド全域が解放。

ソ連軍の最先鋒は首都ベルリンまで100キロの地点まで押し寄せていた」

 「一時は大西洋岸からカフカスにまで及んだドイツ軍による戦線は、1945年2月の段階で450キロまで押し戻されてしまったわけか」

 「『ラインの護り作戦』の失敗はドイツ軍を再起不能にするほどのダメージを与えていた。

それまで一個師団の戦車数は70両だったが、42両まで減少。

かつては精鋭部隊だった国防軍も、人数不足から経験不足、訓練不足の素人までかき集める羽目になっていた。

このような最悪の状況下の中、ソ連軍の猛攻は続く。

ドイツ軍はパンツァーファーストと呼ばれる使い捨てのロケットランチャーを歩兵に持たせ、戦車を撃退していた。

意外にもこの歩兵用対戦車兵器が役にたつことが実証されたが、何せ数が違う。

ドイツ軍の抵抗は激しく、数に勝るソ連軍の猛攻を食い止めるも1945年2月にはドイツの国境を越え、首都ベルリン侵攻は時間の問題となっていた。

東部戦線がその終わりを告げようとしていたとき、西部戦線もまたその終わりを告げようとしていた。

1945年2月8日、『ラインの護り作戦』を退けた連合軍はドイツ軍の抵抗をもろともせずに前進を続け、1945年3月23日にドイツ軍最後の防衛線が消滅した。

もはや降伏するしかない。

これ以上戦っても無駄な犠牲を出すだけだ。

だが、無能のチョビ髭は最後の最後まで無能だった

 

 「戦争継続には現状の燃料不足をなんとかしなければならん!ハンガリーの石油をゲットせよっ!」

 

 「不足しているのは燃料だけでなく、何もかもだというのに、何を血迷ったのかハンガリーの大攻勢を思いついたのだ」

 「そんな戦力があるの?」

 「ない

ドイツ軍の戦力は新型のティーガーU4両、パンター35両を中心とする107両

こんな貧弱な装備でソ連軍の大軍を相手にしなければならない上、ハンガリーのソ連軍はこの作戦を待ち伏せしていた。

加えてこの時期はちょうど雪どけの時期で、地面は泥沼と化し、戦車はまともに動けない。

最悪の条件と気候が重なった状況でドイツ軍は行動を起こした。

ときに1945年3月6日。

後に、『春の目覚め作戦』と呼ばれるこの無謀極まりない作戦が成功するはずもない。

なんとか20キロほど前進したが、3月15日には完全にストップし、作戦は中止となってしまった。

中止になって退却するドイツ軍にソ連軍は反撃に出た。

3月16日、「ウイーン作戦」発動。

後退寸前の追い討ちにドイツ軍は蹴散らされ、包囲されてしまう危機に陥る。

またもやお得意の死守命令が炸裂。

だが、この命令は武装SSにさえも無視され、彼らはオーストリアへ撤退することになる」

 「なんつーか。もうダメダメね。さっさと降伏すればいいのに」

 「もうなんていうか、末期症状だったからな。

この事態を聞いて落ち込んでるかと思えば、当の本人は」

 

 「ムキーッ! 武装SSの腕章を剥奪せよっ!」

 

 「とか言ってたんだ」

 「・・・・。救いようの無い馬鹿ね」

 「さて、ドイツ軍の救いようの無い馬鹿が脳内麻薬の末期症状でラリっていた頃、ソ連軍の救いようのない馬鹿はベルリン一番乗りを宣言していた」

 

 「第二次大戦、最大の功労者の座はソ連が頂くダニっ!」

 「がびーんっ!」

 「そんなことは許さんズラっ!ソ連が一番乗りなど絶対に許さんズラぁっ!」

 

 「とまぁ、すでに冷戦状態と化していた連合軍首脳部だが、チャーチルの抗議など受け入れられず、ベルリン一番乗りはソ連軍のものとなった」

 「・・・。それはそうとこのおっさんだれ? ⇒ 

 「急死したルーズベルト米国大統領の副大統領のトルーマンだよ。

ルーズベルトは1945年4月12日に死亡した」

 「1945年4月25日、米軍とソ連軍の一部隊がドイツエルベ河畔の小さな町トルガウで出会った。

東部戦線と西部戦線が一つになったわけだ。

これは長かった戦いの集結を象徴する出来事だった。

同時に、冷戦の始まりを象徴する出来事でもあるのだがな。

すでにドイツ軍は虫の息であり、連合軍内部では戦後処理でどれだけ自国に有利な条件を取れるかの熾烈な手柄争いが起きていた。

それがさきほどのスタ公とチャーチルの言い争いだ。

1945年4月23日、ついにソ連軍の先鋒がベルリンに到達。

第二次世界大戦の終わりを告げるベルリン攻防戦がその幕を開けた。

ソ連軍 兵力206万 戦車・自走砲6250両、航空機7500機

ドイツ軍 兵力100万 戦車・自走砲1500両

ドイツ軍の兵士は老人と少年兵をかき集めた寄せ集めの軍で、まるっきり勝負にならない。

ドイツ軍も必死で応戦するが、1945年4月25日にはベルリンは完全に包囲され、ベルリンは戦火に見舞われた。

激しい戦いの中、ヒトラー総統は愛人のエヴァ・ブラウンと結婚式を挙げ、そのまま自決した。

享年56歳と10日の波乱万丈に満ちた人生だった」

 「どうせ死ぬならさっさと降伏すれば被害は少なかったのに」

 「東京裁判で日本の国益を守ろうとした東条英機とは大違いですね、あの人も一度自殺しようとしましたけど。

ドイツが負けた時点でさっさと米軍に降伏すれば、あそこまでボコボコにされることもなかったのに」

 「戦争は始めるよりも、終わらせる方が難しい。

フランスのように徹底抗戦もせずに降伏すればその後の占領で地獄だし、かと言ってドイツや日本のように勝ち目ゼロでも徹底抗戦をすれば無意味な犠牲ばかりが出て地獄だ。

おそらく第二次世界大戦で、もっとも戦争を終わらせるのが上手かったのはイタリアだろうな」

 「・・・まあ確かにね」

 「ヒトラー総統亡き今、ドイツ軍が戦う意味などなかった。

ソ連軍はメーデー(5月1日)に国会議事堂を占拠。

翌日、ドイツ軍は連合軍に対し、無条件降伏をした。

そして1945年5月7、8日に西部東部双方で無条件文書のサインがされ、全ドイツ軍に停戦命令が下った。

こうして6年間に及んだ第二次世界大戦はその幕を閉じたのだ」

 「だが一つわからないことがある。

ソ連軍が5月1日に国会議事堂を占拠したんなら、なんで降伏文書がそんなに遅いんだ?」

 「それは簡単だ。ドイツは降伏するにしろ、どうせ降伏するなら東より西の方がマシだって知っていたからだ。

そのための時間稼ぎなんだよ

なんせ東部戦線でソ連の酷さは知ってたからな。

この判断はベストだと思うぜ。

ドイツが西と東に分かれたのは、ドイツ首脳部が時間を稼いだからだ。

そうでなきゃドイツは完全に東側だった」

 「そしてこの時点で冷戦がはじまった。

ドイツ亡き今、米英とソ連の対立が浮き彫りとなった。

ドイツ陥落を先に取られた以上、米英としてはこれ以上ソ連に手柄を取らせるわけにはいかない。

当初、アメリカはソ連と日本を同時に攻める作戦を取っていた。

だが、このときトルーマンに部下が耳打ちした。

大統領、我々は神の火を手に入れました

 「神の火?」

 「・・・。原爆か」

 「そうだ。アインシュタインの理論を応用し、20億ドルの予算と12万人の科学者を総動員させたマンハッタン計画の最終段階。

原爆が完成したんだ。

これがあればソ連と協力する必要などない。

すでにソ連は日ソ中立条約を破って満州と北方領土を奪っていた。

このままでは日本はソ連に侵略される。

そうなれば日本はソ連の前線基地となり、アメリカまで遮るものは何もない。

ソ連に日本を取らせることは、アメリカが直接の脅威に晒されることだった。

様々な要因が絡み、アメリカはソ連への威嚇と原爆の実験を兼ねて日本に核兵器を使用した」

 「もともと核兵器の使用はドイツには考えられていなかった。

同じ白人同士。

さすがに心が痛んだのだろう。

だが、第二次大戦時のアメリカにとって黄色人種の日本人はサル当然だった。

動物実験と同じような感覚で原爆は投下され、日本はアメリカに降伏。

ソ連が手に入れたのは、満州と北方領土に止まった。

日本は米ソの利益争いの犠牲になったんだよ」

 「こうして「第二次大戦はドイツと日本が悪い」という結論でめでたしめでたしとなっている。

教科書ではな。

だが、実際に見てみれば1939年のソ連ポーランド侵攻や、ソ連フィンランド侵攻その他はうやむやのうちに正義となってしまった。

侵略戦争していたのはソ連も同じなのに、「悪いのはドイツと日本」の一言で片付いちまったんだ」

 「どうして?」

 「アホのトルーマン  がソ連を信用したからだ。

第二次大戦は、民主主義国家と非民主主義国家の戦いと言われている。

というより、正義の戦争と見せるためにそういう形に仕立て上げたんだ。

ところが、実際のソ連はナチスドイツよりも遥かに酷い独裁国家だった。

それなのに、ソ連を民主主義国家の仲間と思って信用してしまったわけだ。

同じ民主主義国家である以上、対立はしても戦争はしてはならない。

イギリスとアメリカはライバルだが戦争はしてない。

これと同じような関係を作ろうとしたんだ。

だからソ連の侵略を黙認し、仲間になろうと思ったんだ」

 「なんでそんな馬鹿なことを」

 「日露戦争直後から、アメリカ政府はアジアでもっともアメリカの脅威となっているのは日本だという見解をだしていた。

どうやら日露戦争の勝利が相当響いたようだ。

そしてそれは第二次大戦後までアメリカの方針だった」

 「つまり、第二次大戦直後まで、アメリカはソ連よりも日本の方が危険だと思っていたのか?」

 「そうだ。

ペンタゴンのアホどもの予想が当てにならないのは昔からの伝統だったというわけだ。

ソ連よりも日本のほうが脅威だと思い、ソ連と組んで日本を叩いたものの、戦争が終わってみればソ連の方が危険だったというオチだ。

チャーチル  は、ソ連の脅威に気づいていた。

ソ連がまともな国でないことは、大戦初期でわかっていたからな。

だが、トルーマンはチャーチルを無視してソ連と接近した。

そしてソ連に力を蓄える時間を与え、このときの時間的ロスが朝鮮戦争の引き金になる」

 「チャーチルの言う通り、ソ連もナチスドイツと同様、平和の敵であることを貫き叩き潰しておけばよかったんだ。

それをせっかく戦争が終わったのにまた起こすことはない、と油断したために冷戦は長期化した」

 「まるで、第二次世界大戦の再来だな」

 「アメリカが油断しているうちにソ連は対米英戦に供えて国力を回復していた。

油断していたアメリカはただ戦争終結を喜び、対ソ連戦についての行動はすぐには行わなかった。

そのうえ日本が黄色人種の誇りを見せて戦った太平洋戦争は、有色人種も白人に勝てるかも知れないという希望を灯した。

戦後、アジアやアフリカで独立運動が活発となり、西側諸国はほとんどの植民地を失ってしまった」

 

日本 ・・・ 満州、朝鮮、台湾、北方四島以外の千島列島

アメリカ ・・・ フィリピン

イギリス ・・・ インド、ビルマ(ミャンマー)、マライ、スリランカ、キプロス、ヨルダン、イスラエル、ネパ―ル、ナイゼリア、パキスタン、スーダン、その他

フランス ・・・ カンボジア、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、チャド、ダホメ、ガボン、ギニア、象牙海岸、ラオス、レバノン、マダガスカル共和国、モーリタニア、モロッコ、マリ共和国、セネガル、南ベトナム、シリア、トーゴー、チェニジア、その他

オランダ ・・・ インドネシア

 

 「あと、補足だが北方領土は放棄していなかったが終戦後にソ連軍が占領し、8月末まで旧日本軍の抵抗が続き、

最終的には米軍が北海道から追い返した。ドイツやイタリアは領土が縮小され、ドイツに至っては東西に国が分かれてしまった。

この時点でレーニン  の帝国主義論は外れていることが証明される」

 「帝国主義論?」

 「そうだ。資本主義による帝国主義国家同士の最終戦争へのプロセス。

ロシアのはげちゃピンによれば、先進資本主義国と後進資本主義国の間には戦争が生じ、これを帝国主義戦争と呼ぶ。

戦勝国はさらなる支配を維持するために、さらなる戦争を続ける。

だから、資本主義国家は必然的に戦争勢力である、というのがレーニンの考えだ」 

 「確かに当たっている」

 「そのとおりだ。そしてレーニンの言葉の続きは、資本主義国家は戦争勢力であるのに対し、社会主義国家は利益を争わないから戦争をしない。

もしするとすれば社会主義に干渉する資本主義国家からの防衛戦争だから正義の戦争である。

つまりレーニンによれば、社会主義国家は平和勢力であるということだ」

 「んなアホな、現にソ連は第二次大戦の前半はドイツと組んで世界征服してたじゃないの」

 「だからレーニンの説は外れていると言っているんだ。

レーニンの言葉が正しいのならば、戦勝国である米英は領土を拡大し、さらなる力を得るはずだろう?

だが、実際には植民地は独立し、明らかに衰退している。

イギリスなど大英帝国から、単なる島国へ逆戻りだ。

対するソ連は、第二次大戦でかなりの領土を拡大している。

リスワニア、ラトビア、エストニアのバルト三国。

東ポーランド、東プロシア、ベッサラビア、北ブコビナなどのドイツ領。

中立条約を一方的に破棄して日本から掠め取った北方領土。

独立といいながらもその実、モスクワの意のままに動く東ドイツ、ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、ブルガリアなどの東欧諸国。

第二次世界大戦でソ連が拡大した勢力圏は、33万平方マイル。

拡大した人口は2500万人だ。

ここまで言えばわかるように、第二次世界大戦でもっとも得をした国はソ連で、もっとも損をしたのはイギリスだ。

負けてしまったドイツや日本はもちろん、西側諸国は戦勝国であるのにも関わらず力が弱まったことは、帝国主義時代の終わりを告げる証拠だ。

だが、ソ連はその力を拡大させ、世界最強の帝国だったアメリカとイギリスと互角の軍事力を手に入れていた。

第二次世界大戦によって、資本主義国家の帝国主義時代は終わりを告げた。

しかしそれは、共産主義国家による新たな帝国主義時代の幕開けに過ぎなかった

 「ドイツ、日本を叩いた時点でソ連も叩いておけばこんなことにはならなかったのにな。

終戦直後ならアメリカの方が力は上だったんだろ?

なんせドイツと4年間も戦争をやってたから、ソ連もかなりのダメージを負っていたはずだ」

 「ああ。チャーチルは悔やんだろうぜ。

ドイツもソ連も同じ侵略をした独裁国家なのに、ソ連を民主主義国家と認めるなんてのは明らかに間違っている。

だがイギリスの力はすでにアメリカやソ連を動かせるほどではなかった。

結局、アメリカがソ連を舐めてたせいで、気がついたら手がつけられなくなっていたのが冷戦時代というわけだ。

第二次世界大戦の戦後処理をめぐり、明らかにソ連は西側を征服する気満々だということがわかってきた。

当然だ。

軍備は拡大の一方を辿り、平和な時代を作るといいつつも次の戦争の準備をしていたからだ。

おまけにソ連は東側を囲い込み、情報が外に漏れないような体制を取った。

チャーチルはこの状況を鉄のカーテンと呼び、米ソの対立が避けられないことを確信した。

ようやく自分の判断の甘さに気づいたトルーマンは、トルーマン=ドクリトンやマーシャル=プランを実行したってわけだ」

 「トルーマン=ドクリトン?」

 「1947年3月、トルーマンが出した「対ソ連のための経済的軍事的援助を与える」という声明だ。

元々西側諸国は嫌われていた。

なにせ元々は植民地を持っていた支配者だからだ。

植民地支配をやめたと言ってもすぐに信用できるわけがない。

そこへソ連が現れた。

宗教の自由、経済活動の自由、独立の保障エトセトラエトセトラ・・・。

とにかく西側を嫌っていた諸国は、東側の言葉にころっと騙されてしまった。

西側は今まで植民地政策を行ってきた帝国主義国家だ。

第一次世界大戦後だって似たようなことは言ったじゃないか。

きっと今回もウソだ。

そう思ったわけだな

無理もない。

第一次世界大戦後はそうだったからな」

 「つまり、西側は信用を金で買おうとしたわけね」

 「そういうことになる。結果として世界の勢力は二分された。

トルコやギリシアはもともとロシアが大ッ嫌いだったこともあり、アメリカ側へ。

東欧はドイツとの戦争でソ連に支援されていたり、そのまま侵略されたりしてソ連側へ組した。

一方、中東はイスラエルが独立し、元々民族紛争で火薬庫だった中東が爆薬庫と化した。

元々イスラエルはイギリスの植民地だった。

そこでイスラエルはドイツと戦うためにかなりの軍事力を身につけることになる。

ユダヤ人はナチスドイツに徹底的に弾圧と虐殺をされていたために、義勇兵の士気は高く、必然的に特殊部隊も優秀だった。

1976年、ハイジャックされたエール・フランス機をウガンダのエンテベ空港まで追いかけて大胆不敵な救出作戦を展開したハベブレが有名だな。

なお、21世紀現在のイスラエルの首相であるシャロンも、コマンドゥ部隊の一隊を指揮していた。

あの国はローマ時代の軍人のように政治家としての才能も要求されることが多い」

 「そう言えばどうしてドイツじゃユダヤ人が迫害されてたわけ?」

 「もともとヨーロッパじゃユダヤ人は迫害されていたんだ。

よそものだからな。

第一次大戦後、天文学的な賠償金を迫られたドイツは最悪の不況に見舞われた。

そのときにユダヤ人は高利貸しが多くて、ただでさえ苦しかったドイツの生活はユダヤ人によってボロボロにされてしまった。

それでドイツではユダヤ人が嫌われ、怒りのやり場をユダヤ人にぶつけようという運動が高まったってわけだ。

もっとも、ユダヤ人が高利貸しのような金融に関係する仕事につかざるを得なくしたのはヨーロッパ人なんだけどな。

キリスト教じゃ高利貸しみたいなのは汚い仕事とされていて、ユダヤ人は差別されてそーいうのにしかつけなかったんだ

あと、シェイクスピアの「ベニスの商人」でも、悪徳商人シャイロックはユダヤ人だ。」

 「だがユダヤ人は昔から金融業に携わっていただけあってその財力は侮れない。

世界中に散らばったユダヤ資本は、資本主義国家では国を動かすほどの力を持つ。

大戦中はドイツと戦っていたイスラエルは、イギリスと仲間だった。

しかし戦後のイギリスはアラブ諸国と接近した。

植民地を失っていく中、なんとか石油の利権を取ろうと思ったのだろう。

イスラエルは大英帝国の後ろ盾をなくしたままでイスラエルの建国を宣言することになる。

もともとイスラエル建国にはイギリスが関わっていたが、それが最終段階になっていきなり抜けてしまったわけだ。

イギリスの後ろ盾さえなければ、アラブ諸国がイスラエル建国を認めるわけがない。

当然中東戦争勃発、周りが敵だらけのイスラエルは、第二次大戦後まもなく戦争を強いらてしまったわけだ。

だが、このイスラエルは先ほども言ったとおり財力は侮れない。

その財力が国を動かしていたのはアメリカだった。

当然アメリカ経済を動かすユダヤ資本は、アメリカを味方につけ、アメリカはイスラエルと同盟国になり、現在へ続くわけだ」

 「つまり、イスラエルにとっては、第二次世界大戦も冷戦も、あんまり変わらんってことってことか。

周りは敵ばかりだしね」

 「そうだ。

だが彼らにはそこにしか国はない。

一つでも昔からの国があればそれでいいんだが、一つとしてないんだ。

3000年前の中東の侵略がなければよかったんだが、こればかりはどうにもならん。

アラブとイスラエルが話すと、だいたいユダヤ迫害の歴史となってしまい、

どっちが悪いかを問うのならイエス・キリストを連れて来い

という結論に達してしまう。

よって話し合いは泥沼になり、過激派が暴走。戦争突入だ。

これを解決する手段は一つしかない。

どちらかが相手を完全に滅ぼすことだけだ。

だが、そんなことをすれば戦火は拡大し、利権と同盟関係がこじれて第三次世界大戦に広まってしまう。

石油が出る分、中東はバルカン半島よりも火薬庫だ。

イスラエルは周りを敵に囲まれている孤独な国なんだよ」

 「でも、軍事力はイスラエルの方が上ですよ?」

 「そうなの?」

 「なんせユダヤ資本だからな。ミネラルウォーターよりも安く石油を買い取られてしまうアラブ諸国よりも、金融業が世界中にあるイスラエルの方が資金面は上だ。

それにイスラエルとアラブでは士気の高さが違う。

軍事力はイスラエルのほうが上。

イスラエルはアラブと全面戦争に突入しても恐らく勝利できるだろうな」

 「じゃあなんで動かないの?何度もテロとか戦争やってるのに。普通なら一気に片付けるチャンスじゃないの」

 「アメリカがストップをかけているからだ。

アラブと戦争に突入すれば確実に石油の値段は上がる。

それはアメリカとしては好ましくない。

だが、だからといって順調にアラブが力をつけて石油の値段を揺さぶるまでに成長されても困る。

だからイスラエルをけしかけるわけだ。

適度に中東戦争を起こし、石油の値段が上がらない程度でドンパチしてくれれば武器も売れて儲かる。

そんなことばかりしてるからアメリカは嫌われるのだがな」

 「・・・。まあね」

 「だからイラクは中東をまとめようとしているのか」

 「そうだ。中東の大国イラクは、イスラエルと互角に渡りあえる唯一の国だ。

ところがここのトップが、白人に屈するくらいなら戦争したほうがマシだ!

といわんばかりの中東万歳野郎で、中東がアメリカを倒すためなら第三次世界大戦もやむを得ないと本気で考える危険人物だから大変だ。

まぁ、その辺は冷戦後期になってからの話だからとりあえずストップしておこう。

とにかく、第二次大戦後の世界は西と東に分かれ、足並みが完全に外れた米ソの戦争突入は避けられなくなり、第二次大戦のダメージが完全に回復し、準備が整った1950年の朝鮮戦争が勃発することになる」

 「せっかく第二次大戦が終わったのにねぇ・・・。ドイツと日本を叩いた時点でソ連もぶっ潰しておけばこんなことにはならなかったのに・・・」

 「トルーマンも結局はチェンバレンの二の舞だったってわけか・・・。

歴史は繰り返すとはよく言ったものだ」

 「結局、ドイツがアメリカに変わっただけで、ソ連にとっては第二次大戦も冷戦も同じ時代だったってわけだ。

いや、むしろソ連にとって第二次大戦は、冷戦に暴れる力を蓄えていた時期ってことになる。

世界が平和じゃないのは当たり前のことだったってことだ」

 「第二次世界大戦は、実はまだ終わってなかったってことですからね」

 「そういうわけだ。言い出せばキリがないので、とりあえず今日の授業はここで終わる。

この授業は第二次世界大戦についての授業だったからな」

 「なんか、ソ連中心の歴史で世界を見ると、第二次大戦と冷戦が違う時代には思えないわね」

 「当たり前だろ? たかが一年や二年で別の時代になるわけがない。

歴史に区切れなんかない。ま、考えてみれば当たり前のことだったんだがな」

 「それはそうとソフィアさん」

 「なんだ?」

 「実際のところどーいう男性(ひと)が好みなんです? アルクさんとかはどうでしょうか?やっぱりダメですか?」

 「やっぱり・・・なのか・・・」

 「・・・。ひょっとしてさっきからそればっか考えていたのか?」

 「もちろんですよ。さっきから気になってしまって」

 「そうよ、それそれ。実はあたしも気になっててね」

 「・・・。下らん。わたしは男になど興味はない」

 「うそですね。バレバレですよ」

 「まったく正直じゃないわねぇ。そんなんだから美人なのに男が寄って来ないのよ。みんな距離おいちゃうから。

少しは隙を見せないと男は近寄ってこないわよ」

 「そーですよ。男の人って案外馬鹿だから、少し弱みを見せれば支えてあげたくなって向こうからよって来ますって。

普段は男なんて興味ないようなバリバリのキャリアウーマンの持つ、もうひとつの弱々しい少女の顔。

もうそれだけで一撃必殺って感じでしょうか?」

 「一撃必殺って・・・。殺してどうする?」

 「・・・・・・・・。なんか楽しそうだな」

 「どうやらわたしたちのことは完全に忘れ去れているらしい。

というか、わたしたちはアウト・オブ・眼中ってことだな」

 「いいじゃねえか。あの3人の場合、どれとっても疲れるだけだぜ。

炸裂弾式暴力我がままオタク娘に、鋼鉄製冷血女

リューシさんは二人よりはマシだが、やっぱり天然ボケと電波入ってるし・・・。

こっちにも選ぶ権利くらいはある」

 「同感だな。特にルクスとは絶対に付き合いたく―――――」

 「ほぉ?」

 「・・・。付き合いたいなぁとか思うほどだったりするんだよ、うん。ホラ彼女美人だし」

 「悪かったわね、炸裂弾式暴力我がままオタク娘で」

 「すまなかったな。鋼鉄製冷血女で」

 「ヴォルフさん酷いです・・・・。わたしがいくらボケてても、色黒電波系宇宙人だなんて・・・しくしく・・・」

 「・・・・。をい、そこまで言ってないぞ」

 「うえーん、ヴォルフさんが虐めるー」

 「あーあ、泣ーかせたー。よしよし」

 「・・・。どう見てもウソ泣きのようにしか見えんぞ」

 「というわけでリューシーを泣かせたお詫びにヴォルフが夕ご飯をおごってくれるそうだ。

みんな値段の高いものから順に頼め」

 「ちょっと待ってくださいよ大尉!値段の高いものって・・・。」

 「くすっ。ヴォルフさんやさしいんですね☆」

 「わーい、お兄ちゃんありがとう」

 「・・・。誰がお兄ちゃんだ、コラ」

 「サービスよ。言われて嬉しくない?」

 「・・・・。俺に妹はいないが、いてもお前だけは願い下げだ」

 「気が合うわね。あたしもアンタが兄貴なんてのは絶対ごめんよ。

でも、これからおごってくれるんでしょ。ありがたくて涙が出るわね。くすくす・・・」

 「それじゃさっそく行きましょう♪」

 「そうだな。では全員出発!」

 「っしゃー!喰うわよぉ!」

 「おい待てっ!まだ俺がおごるとは―――」

ゴンっ!

 「ぐおっ!」

 「ええい。グダグダと男らしくないぞ。一度おごると言ったら約束は守らんか」

 「おごると言ってないような気がするが・・・・」

 「何か言ったか?」

 「いえ。なんでもありませんマム。さっそく行きましょう」

 「売りましたね」

 「まっ、これが賢い生き方ってやつじゃないの?細かいことは気にしない気にしない」

 「そうですね」

 「というわけで読者諸君。次回の授業でまた会おう。

Auf Widekseh (それではごきげんよう)」

 

 

 

お・し・ま・い ☆


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