ソフィア先生の補習授業

 「さて6時間目はDAK敗退から少し戻ってモスクワ攻防戦直後の1941年末からだ。

冬将軍によってモスクワ攻略に失敗したドイツ軍。

ドイツ、ソ連両軍は冬将軍が去るまでは行動も取れず、そのまま冬を迎えることになる。

戦線は膠着状態に入り、一進一退の泥沼の攻防戦が続く。

1942年の5月になるとソ連軍がハリコフ奪還作戦を発動させた。

つまりは、第2次ハリコフ戦だ。

しかし、それも大した効果はなく、やはり膠着状態に陥った」

 「ドイツ軍の勢いは凄いんだろ?それなのに全く戦線が動かないのか?」

 「東部戦線は北アフリカ戦線と違い、泥沼の膠着状態がずっと続いた。

第二次世界大戦最大の激戦地とも言えるロシアの大地はドイツ、ソ連の兵士の死体で埋まり、戦いはいつまで経っても終わりを見せない」

 「最悪ね・・・・」

 「ヒトラー総統は国内の石油資源事情から南方攻略を決定した。

北方ではレニングラード攻略を続け、中央戦線では現在の状況、つまりモスクワ寸前まで追い詰めた状態を維持することが目標となった。

1942年6月28日、ヒトラー総統は

冬に失ったものは夏に取り戻せ

の声とともに、ドイツ軍夏季攻勢作戦「ブラウ作戦」を発動させる」

 「それは冬コミで買い損ねた同人誌の新刊を、翌年の夏コミでは必ずゲットするようなことでしょうか?」

 「新刊って、をい・・・・」

 「いくら何でもそれは酷い例えのような・・・・・」

 「そのようなものだ

 「・・・・・・・・」

 「それでいいのか?」

 「さて、夏コミの新刊ゲットに燃えるが如く、ドイツ軍は南方軍集団に力を入れることになる。

目標は首都モスクワの南東部、ヴォルガ河畔の都市、スターリングラードだ」

 「フデ髭のおじさまと同じ名前ですね」

 「そうだ。この都市は大魔王スターリンの名を冠する象徴的な街だ。

この都市は象徴的なだけではない。

地下資源の宝庫であり、補給ルートの要でもある。

カフカス山脈の油田地帯とソ連北部を結ぶ都市スターリングラード、この都市を落とせばベルトコンベア式に送り込まれるソ連軍の補給路を断ち切り、一気にソ連戦攻略に近づくことにもなるのだ。

ドイツ軍はこのスターリングラード攻略作戦「ブラウ作戦」を実行するため主力部隊を大きく二つに分けた。

A軍集団 第1戦車軍

B軍集団 第4戦車軍

 「A集団の第一戦車軍には6つの戦車師団、一つの自動車化歩兵師団、グローツドイッチュランド師団、SS第5戦車師団ヴィーキングが参加。

B集団の第4戦車軍には、4つの戦車師団、2つの自動車化歩兵師団が参加している。

簡単に言えば、かなりの大軍ということだ」

 「そのまんまね」

 「分かりやすいだろ?」

 「たしかに分かりやすいが・・・・・・・」

 「ならよし」

 「大味、適当、大雑把・・・。やってることはアメリカ人だぞ、お前」

 「どうせ詳しく言ってもわからねぇだろうが。

いいんだよ、そーいうマニアックなデータのコンプは好きな奴がやれば。

どっちにしろ結果は同じだしな」

 「身もフタもない言い方ね」

 「さて、このスターリングラード攻略作戦にはモスクワ攻略作戦時よりも破壊力の大きい大型戦車が参加している。

なぜかわかるか?」

 「T−34対策か?」

 ←T−34

 「そうだ。ドイツ軍の新型戦車のほとんどは主砲搭載車両だ。

これらは明らかにソ連軍の主力戦車であるT−34対策なのは明白だった。

逆に言えばそれほどまでにT−34のショックは大きかったわけだ。

準備の揃ったドイツ軍はさっそく行動を開始した。

スターリングラードから見て北西にあるクルスクからドン川を渡ってB軍集団が侵攻。

B軍集団の第4戦車軍はまずスターリングラード途上の都市、ヴォロネジを攻略した。

続く目標はもちろんスターリングラード。

当然、B集団 第4戦車軍はスターリングラードへ歩を進める。

だがここで問題が起きた。

B軍集団の南に位置するA軍集団がソ連軍の猛攻に合い、なかなか前進しない」

 「ソ連軍も必死だな」

 「当然よね。ここが落ちたらスターリングラードまでドイツ軍を防ぐものはないわ」

 「だが、これはある意味幸いだ。A軍集団がソ連軍と戦っていれば、その分B集団は手薄のスターリングラードを叩くことができる。

スターリングラードさえ落としてしまえば、A軍集団を防いでいるソ連軍は自滅するだろうな。

補給路がなくなるから」

 「そうだ。そしてドイツ軍の将軍たちもまたそう言った。

今なら防御の薄いスターリングラードを落とすことはたやすい!
A軍集団の援護をやめ、先にスターリングラードを落とすべきだ

スターリングラードさえ落としてしまえばA軍集団は補給路が潰れ、退却せざるを得なくなる。

しかし、ヒトラー総統は独断でA軍集団に援軍を送ってしまう」

 「まったくあのチョビ髭は・・・・少しは将軍たちの言うことも聞きないさいよね」

 「ヒトラーさんお得意の当てにならない直感がピキーンと閃いたのでしょうか?」

 「そうだ。ヒトラー総統は将軍らの言うことなど信じようとはしなかった。

モスクワ攻略が失敗した今、ドイツ軍は大きな賭けに出ることなど出来ない。

一歩一歩前進していく方が安全だ、と思ったわけだ。

こうしてA軍集団の戦車師団の一部が援軍として派遣され、足の遅い歩兵主体の第6軍のみがスターリングラードへ進むことになった。

だがこれは間違った選択だった。

ドイツ軍の組織は十八番である電撃戦のために作られている。

持久戦には向いていない

ただでさえ国力に劣るドイツが勝つには、相手が回復する前に決着をつけるしかないのだ。

おまけに、B集団を先に行かせようというのはソ連軍の補給路を断つためでもあり、大局的に見ればかえって安全な作戦だった。

だが、ヒトラー総統は自らの直感を信じ、援軍を送ってしまった。

送ってしまったものは仕方がない。事態が良い方向へ向かうことを祈るばかりだ。

だが、この援軍が届く前に、A軍集団は自力でソ連の防御を突破した

 「じゃあ何? 第4戦車軍の移動は無駄だったってこと?」

 「そうだ。援軍の第4戦車軍がA軍集団のもとに行ったとき、すでに戦いは終わっていた。

この時間的ロスはソ連軍に有利に働いた。

スターリングラードの地をドイツ軍に踏ませるな

の号令と共に、スターリングラードには続々とソ連軍が集まり始めたのだ」

 「恐れていたスターリングラードの防御が固まってしまったってことだな」

 「電撃戦はこのような状況に陥る前に決着をつける戦術なのだ。

相手が防御を固めてしまえば電撃戦は通用しない。

スターリングラードに第4戦車軍が到着したとき、先に行かせた歩兵主体の第6軍はすでに市街戦に突入していた。

ドイツ軍は戦車、装甲車、迫撃砲、マシンガン、とにかく火力は圧倒的だった。

対するソ連軍の有利なものと言えば兵士の数が多いことくらいだ。

実際、ドイツ軍は勢いにのり、スターリングラード市街の9割を占領、あと一歩というところまで追い詰める。

だが、あと一歩が落ちない。

それは共産主義国家ソ連の恐るべし人海戦術にあった」

 「出たな!」

 「撃っても撃っても沸いてくるソ連兵はまさに体を張ってドイツ軍を阻止した。

おまけにこの都市はビルが多く、市街戦の主役は歩兵だったのだ。

いくら撃っても撃ってもあとからあとから沸いてくるソ連兵はドイツ軍の恐怖ともなっていた。

あいつらはなぜ突撃するんだ!?
死ぬのが恐くないのかっ!?

 「はっきり言ってソ連兵は恐いぞ。

こっちがマシンガンだの戦車砲だので構えているのに、そこへ歩兵が突撃して来るんだ。

おまけに仲間がドンドン死んでも全く引かず突撃を繰り返してくる。

まさにゾンビ

 「なんであいつらはそんなに突撃するんだ?」

 「もともとロシアの軍隊は代々突撃戦法が好きだった。

歩兵には接近戦用の軍隊格闘技が徹底して身につけられ、銃剣突撃が通用した第一次大戦まではロシア軍は世界でもトップクラスの実力を誇っていたんだ。

それに突撃は特別な訓練などいらない。

指揮官が笛を吹いたら兵士が敵に突っ込んで白兵戦になるだけだからな。

ドイツ戦車兵みたいに兵士一人一人が何年もかかってようやく一人前になったあと、さらに合同訓練が必要な複雑な軍組織にはなってないんだよ。

前の時間にも言ったが、何せソ連には作戦を指揮できる高級将校が少なかった。

スターリンが有能な将校をことごとく殺してしまったからな」

 「さらに言えば政治将校の存在がある。

ソ連軍、いわゆる赤軍には軍隊の将校とは別に政治将校と呼ばれる連中がいた。

その前に赤軍と国防軍の違いについて話しておこう」

 「赤軍ってのはソ連軍のことじゃないの?」

 「ならば国防軍とは何だ? ドイツ軍のことか?」

 「いや、ドイツだけじゃなくて・・・その国を防衛する軍だけど・・・」

 「そうだ。国防軍とは国籍を問わず、自らの国家を外敵から守るために存在する。

だが、赤軍は違う。

赤軍はソ連を外敵から守るためではなく、

世界を革命するために!

存在するのだ」

 「つまり・・・・民間人を守る義務はないってことか?」

 「極論から言えばそういう事になる。

だからあのような味方を殺す戦術を繰り返すわけだ。

ソ連誕生の立役者であるレーニンは、

世界を革命するためなら何をやってもOK!

と、堂々と言っている」

 「―――― はい?」

 「文字通り何をやってもOKだ」

 「何をって・・・そんな馬鹿な」

 「馬鹿だぜ?見りゃわかるだろ?

あれが賢いように見えるか?

 「見えん」

 「だろ?

レーニンの言う何やってもOKってのは文字通り何をやってもいいんだよ。

例え、スターリンが権力を集中させるために2000万人以上虐殺するのもOKだし、

無謀極まりない人海戦術の結果、第二次世界大戦のソ連人死者が2000万人以上に達するのもOK。

国際連合に加盟しながらも、平気で朝鮮半島で戦争を起こすのもOKだし、

ベトナム戦争で国際法違反のゲリラ戦を展開するのもOK。

ゲリラ戦をやると、被害が出るのは民間人だから禁止となっているのに無視して実行してもOK。

その結果、ベトナムで何百万の死者が出るのもOKだし、

悪いのはどう見ても先に仕掛けたソ連なのに、戦争の全責任をアメリカに押し付けることもOK。

それを正当化するために各国の共産党員が偽情報を流すのもOKだし、

世界征服をしているのはソ連だというのに、それを食い止めているアメリカを侵略国扱いするのもOK。

日本を核で脅しながら、日本の自衛隊はソ連の脅威になると平気でのたまうのもOKだし、

ベトナム、カンボジア、ミャンマーでベトナム戦争の死者の何倍も虐殺するのもOK

やっていることは世界にはお見通しなのに、それはCIAの偽情報とのたまって逆切れするのもOKだし、

アフガンに侵略しておきながら、それを認めない国を「アメリカの犬」と罵るのもOKだ」

 「・・・・。凄いな」

 「ソ連はある意味アメリカ以上に自由な国なんだよ。

何やっても

世界を革命するためには必要な犠牲だった

の一言で通っちまうからな」

 「第二次世界大戦中も、冷戦も、ソ連は70年間ウソばかりついてきた。

だが、それが

世界を革命するためには必要な処置だった

とすれば、ソ連の行動が一貫性を持っていることがわかる。

ある意味、ソ連は物凄く単純な国だ。

世界を真っ赤に染める。

最終目的はこれだからな。

他は全てそのためのプロセスに過ぎない。

だから平気でウソもつくし、侵略もする。

マルクス・レーニン主義に忠実な行動だ」

 「やっぱり自分の気持ちにストレートなんですね♪」

 「だが、そのストレートなソ連のやり方が気に入らない人間は多い。

むしろどうすれば気に入るのか知りたいところだが、とにかく 権力を握っている連中の脳みそが完全にイカれているのがソ連国民の悲劇の始まりだ。

マルクス・レーニン主義の一つ、価値観の違う人間は殺してもOK、というか殺れ!

というものがある。

これによって共産主義国家の暴走を止めるブレーキは完全に粉砕されることになる。

だから中国とソ連は仲が悪いのだがな。

1970年代になってお互いのパワーバランスが崩れると価値観の違いから戦争をはじめたことも自明の理だ。

アメリカも暴走することがあるが、ここまで酷くない。

共産主義国家は政府の暴走を止めるブレーキが全く存在しないのだ。

そして、その暴走した政府が軍隊を完全にコントロールするために派遣するのが政治将校と呼ばれる連中だ」

 「政治将校は軍とは異なる独自の命令系統を持っている。

その役割はKGBの国内活動に似ている。

ようするに軍の監視だ」

 「だが、それはどこの国でも少なからずやっているぞ」

 「レベルの桁が違う。

赤軍は、世界同時共産革命を遂行するための軍隊だ。

だからその行動は全て世界を革命するために動かねばならない。

だが、軍隊たるもの、ときには臨機応変に作戦を取らねばならない。

不利なときには撤退し、有利なときには攻撃するなどだ」

 「戦いの基本だな」

 「だが、この行動は全て政治将校によって制限されることになる。

とくにソ連軍は、撤退した将軍は全て銃殺刑ということが決まっていた。

だから、一度引けば再攻撃を仕掛けることができるだろう部隊も引くことは許されない」

 「どういうことよ、それ!?」

 「要するにな、ソ連軍の場合は勝利か死かのどちらかしかないんだよ。

ドイツ軍相手に駆け引きや、作戦勝負を挑んでも勝てないからな。

なんせ人材不足だから。

勝てる勝負も平気で捨てる。

だからスターリンはドイツ軍最高の将軍と言われるわけだ。

そんでもって政治将校は要するにスターリンの飼い犬だ。

スターリンに従うだけでしか自分の安全を確保できない。

少しでも逆らえば殺されるからな」

 「モスクワ攻略で、T−34が突撃したのもこの政治将校の存在が理由にあった。

とにかく突撃が好きな連中で、まともに将軍たちの作戦を聞こうともしない。

将軍たちもヘタに政治将校を怒らせると即行でスターリンにチクられて処刑。

このようなことから、ソ連軍は突撃以外の作戦を取ることはできなかったのだ」

 「なんだそれ!? なんでそんなことにっ!」

 「スターリンの命令だからな」

 「なんであの男はそんな無理なことを言うんだ!?」

 「だってスターリンだぜ?

戦争前に2000万人以上の人間を虐殺した男にとってすれば、今さら人を殺したところで全く心が痛まないだろうな。

戦術的撤退とか、戦略的撤退を全く認めなかったんだ。

なんせ全く他人が信用できない症候群の末期患者のスタ公としては、「後退しよう」なんて言うヤツは全てドイツのスパイと思ってたんだろうよ。

実際、撤退を口にした将軍はスパイの見せしめとして極刑だったし」

 「・・・・・・・・」

 「人間の命なんてパンひと欠けらほどの価値もないんだよ、ソ連じゃな。

それに反対する人間はことごとく殺される。

残ったのはスターリンと同様頭のイカれた連中か、もしくは保身のために渋々言うことを聞いている連中のどっちかだけだ。

その他は全員処刑だからな」

 「政治将校の頭がイカれていたというエピソードにはこんな話がある。

突撃しても突撃しても一向に戦況が良くならないソ連軍。

こんな戦術で勝てると思い込んでいるほうが問題があるような気がするが、それは政治将校には関係なかった。

このまま戦果を上げられなければ自分が殺される。

どうすればいい?

どうすれば兵士の士気を上げて勝つことができるだろうか?

そして政治将校は自らマシンガンを持ち、側近の部下にも火器を持たせて命令を下した!

腑抜けどもにを入れてやるっ!

臆病者は射殺しろっ!撃てっ!撃ち殺せぇっ!

こうして、なかなか前進できないソ連の兵士に対し、苛立った政治将校は味方を撃ち殺し始めた

このままでは味方に殺されてしまう!?

ソ連兵たちは焦りを感じ、さらに気合を入れて突撃を開始。

しかし、そんな玉砕戦法で勝てるほど戦争は甘くない。

待ち構えていたドイツ軍の集中砲火の嵐がソ連兵に降り注ぐ。

こうしてその部隊は全滅した。

政治将校は本部へ逃げ帰り、

「言われた通り全ての戦力を投入しました!しかし、敵の戦力は圧倒的ですっ!戦車、機関銃、迫撃砲!我が軍に何がありますかっ!?」

と必死に自己弁護した。

だが、本部の上官は

最後まで防衛する義務がある

パアンっ!

上官のセリフと共に銃声が響き、その政治将校の人生は終わりを告げた・・・・」

 「それって・・・・」

 「味方を撃ち殺すって・・・をい。旧日本軍でさえそこまで酷くなかったぞ」

 「ソ連だからな。

ちなみにこのスターリングラード防衛の最高責任者はニキータ・セルゲヴィッチ・フルシチョフ  だ。、まあ正確に言うと軍人ではなく、政治委員だがな」

 「どこかで聞いたことある名前ね」

 「! それはスターリンの死後、ソ連のトップになるフルシチョフじゃないのかっ!」

 「そうだ。キューバ危機でケネディ大統領と世界の命運をかけた外交対決をすることになるフルシチョフはこの戦いの指揮官だった。

こんな戦い方を強いる連中の現場指揮官が戦後にソ連を率いるんだ。

キューバ危機が世界にとってどれほど危険だったかがわかるだろう?

 「こんなやつが冷戦時代のソ連外交のトップにいたのか・・・・・。

背筋がぞっとする話だな」

 「ほんとね・・・」

 「スターリンの死後、フルシチョフが権力を得たプロセスもスターリンに似てるのだが、まあそれはまたの機会に話すとしよう

こうして、ある意味ドイツ兵以上に絶望に立たされたソ連兵たちは次々と命を散らしていき、体を張ってスターリングラードを防衛した。

泥沼の激戦が続き、スターリングラードは完全な廃墟と化していた。

だが、ヒトラー総統もスターリンも一向に引かず、両軍の戦闘は終わりを知らない。

ドイツとソ連の独裁者の意地と意地がぶつかり合った最悪の戦場がこのスターリングラードの戦いだった。

しかし膠着状態のスターリングラード戦も、やがて持久力の差が顕著に出始めた。

スターリングラード戦から約5ヶ月後の1942年11月19日。

いよいよ戦力を固めたソ連軍は大反撃に出始めた。

ドイツ軍も援軍を送り、ここでソ連軍の息の根を止めようとした。

だが、この時期のアフリカではDAKが敗北し、西部戦線でも激戦が始まっていた。

東部戦線への援軍どころではなくなってしまったため、スターリングラードに援軍が来ることはなかった。

ソ連軍は圧倒的な物量を背景に、質で勝るドイツ軍を圧倒。

ソ連軍は大攻勢に出るやいな、北西のルーマニア第3軍と南のルーマニア第2軍を撃破、スターリングラードを逆包囲することに成功する。

スターリングラード市街内にはB軍集団の第6軍と、第4戦車軍の一部が取り残されてしまった。

このままでは全滅する!

ドイツ軍総司令部はたたちに孤立したドイツ軍のスターリングラードの脱出許可をヒトラー総統に求めた」

 「当然だな」

 「だが、ヒトラー総統はこれを断った。

デブのゲリ公が「空中補給をする」などという当てにならない作戦を提案したからだ」

 「ゲリ公?」

 「国家元帥のゲーリングのことだ。

このデブのゲリ公は、マンシュタイン元帥にも迷惑をかける。

ちなみにゲーリングは IQ138 というデータがある。

IQ140を超える人間は100人に一人の割合だそうだから、かなりの優秀というわけだ。

ゲーリングのほかにもナチスの高官にはさりげなくIQが高い連中が多い。

それに比例するように学歴の高い連中も多い。

だが、実際には馬鹿ばかりだ。

IQや学歴が人間の賢さを示すパラメーターにはならないという証拠だな。

スターリングラード戦のように、ドイツ軍は大戦後期に入ってくると有能な将軍の意見がことごとく無視され、無能な将軍の意見が採用されることが多くなっていった。

一番悪いのは無能のチョビ髭なんだけどな、専門的な軍事知識もないのに、平気で作戦を決定するから」

 「こんないい加減な作戦がうまくいくはずはない。

フランス攻略戦の立役者であるドイツ最高の頭脳、マンシュタイン元帥  はこの孤立したスターリングラードのドイツ軍の救出を求めた。

だが、マンシュタイン元帥はヒトラー総統とは仲が悪かった。

現実的なマンシュタイン元帥からすれば、脳内麻薬全開でラリッテいるヒトラー総統  などただのアホにしか見えなかったのだろう。

ヒトラー総統としては、俺は天才だぁ〜〜っ!だと思っているので、それを見下すマンシュタイン元帥が気にいらなかったのかも知れない」

 「何でアミバ?」

 「マンシュタイン元帥は何とか友軍を助けたかった。

こうしてスターリングラード残存ドイツ兵救出作戦「冬の嵐作戦」が発動。

だが、烏合の集団に過ぎなかったドン集団軍にそんなことができるわけもなかった。

精鋭部隊はスターリングラードに投入されたか、西部戦線で戦っていたからだ。

結局この作戦はスターリングラードにたどり着く前に失敗に終わる。

だが、チャンスは作った。

この隙にスターリングラードで孤立した第6軍は脱出せよ!

だが、第6軍のパウルス上級大将はこの誘いを断った」

 「なんで?」

 「無能のチョビ髭が死守命令を出していたからだ。

死守命令と言っても援軍が来なければ玉砕戦法に過ぎん。

だがパウルス将軍はこの命令に従った。

ヒトラー総統の命令を絶対だ。

命令に逆らえば他の将軍と同様、指揮権を剥奪されてしまうからだ。

ましてやヒトラー総統が嫌っているマンシュタイン元帥の誘いに乗れば軍事法廷での極刑は免れない。

行くも地獄、去るも地獄。

パウルスは援軍がスターリングラードの包囲を解いてくることを願った。

だが、ソ連軍の大軍の前にそんな余裕があるわけもない。

1943年1月に入ると何度も降伏勧告を送ってきたソ連軍が総攻撃を開始。

補給もなく、孤立したままの第6軍に反撃の力が残っているわけもない。

1943年2月2日、スターリングラード残存部隊は全面降伏をすることになった」

 「スターリングラード第6軍は30万の歩兵がいた。

だが、そのうちの20万が戦死、10万が捕虜となった。

事実上の全滅だ。

戦後、10万人のうち、何人が帰って来たか知っているか?」

 「さあ?」

 「7千人だ。

スターリングラードで捕虜になったドイツ軍はたったの7%しか生き残らなかったのだ。

あとは・・・・言うまでもない。

こうして150日に及ぶスターリングラードの戦いは終わりを告げた。

この戦いの終幕は、ドイツ軍の夏季攻勢の失敗を告げることだった。

そして、それはソ連の冬季攻勢の始まりを告げることでもあった。

この戦い以降、西部戦線では英米連合軍、東部戦線ではソ連軍の反撃が始まることになる」

 「東西からの挟み撃ちというわけだな」

 「このスターリングラードの勝利の勢いに乗り、東部戦線ではソ連軍の大反撃がはじまった。

北のレーニングラードは、ドイツ軍の白いモビルスーツこと六号戦車ティーガーの活躍もあって何とか防ぐことに成功したが、その他の戦線ではソ連軍の物量に押され、ドイツ軍は敗北の一途を辿ることになる。

ソ連軍の大反撃は凄まじく、その規模は東部戦線の全域に及んだ。

2年間の膠着状態は崩れ、モスクワ陥落寸前のドイツ軍は撤退を余儀なくされた」

 「目の上のタンコブが消えたわけね」

 「そういうことになる。

ヒトラー総統お得意の「戦争経済」の一言で、ドイツ軍の主力は南方に注がれていた。

そのため北方のモスクワは手薄になり、ドイツ軍とソ連軍の死闘はウクライナ地方が舞台となる。

ソ連軍の大反撃は凄まじく、スターリングラード陥落の1943年2月2日から2週間後の2月8日にはクルスクを攻略、16日にはドイツ軍が放棄したハリコフを占領。

スターリングラード攻略のために派遣されたA軍集団、B軍集団は、スターリングラードで孤立した第6軍のように包囲される寸前まで追い込まれてしまう。

スターリングラード陥落からたった半月で、ドイツ軍は東部戦線崩壊の危機に見舞われてしまったのだ」

 「ヒトラー総統とスターリンの意地と意地がぶつかり合った最悪の戦場がスターリングラードなら、最悪の戦略上の地域はウクライナ地方だ。

このウクライナ地方は政治的、軍事的にも重要な地点でもある。

ウクライナ南部から突き出たクリミア半島を制すれば、黒海の制海権を握ることができるからだ。

そうなれば沿岸諸国に絶大な影響を振りかざすことできるし、中立国の牽制にもなる」

 「中立国?」

 「そう。例えばトルコだ。

第一次大戦でドイツと共に戦い、ボロボロにされてしまった中東の覇者トルコ。

中東の大帝国としてヨーロッパからも一目を置かれていたその姿は、第二次世界大戦ではすでになかった。

トルコは凄くかわいそうな国なんだよ。

北はソ連、南は中東、東はヨーロッパ。

おまけに近くにはバルカン半島もあるし、世界の火薬庫のど真ん中に位置しているんだ」

 「クリミア半島といえば、トルコ・イギリス・フランスとロシアが戦ったクリミア戦争があったところだな。

ナイチンゲールが活躍したっていう。あれもやっぱり同じ事なのか」

 「何百年も前から似たようなことはやってたってわけね。

これだからヨーロピアンは・・・・」

 「トルコの敵は・・・というより味方はほとんどいない。

ギリシアとは最悪に仲が悪いし、ソ連に関してはロシア帝国だった頃からの宿敵だ。

おまけに第一次大戦で国が分割された上にイギリスが煽った民族紛争を抱え、さらには石油資源の宝庫を結ぶ位置にも面している。

第一次大戦前ではヨーロッパとロシアの間で虐められ、

第一次大戦ではドイツとロシアの間で虐められ、

第二次大戦ではドイツとソ連の間で虐められ、

冷戦ではアメリカとソ連の間で虐められ、

そして現在は欧米と中東の間で虐められるという哀れの極みというべき国だ」

 「大国間の間の弱小国の運命と言うヤツだな」

 「もっとも戦後のトルコはまだマシだけどな。アメリカの支配下だから。

これがポーランドとかルーマニアとかソ連の支配下になると物凄いことになる」

 「えーと、つまり、中東は昔から白人に虐められていたということでしょうか?」

 「そうだ。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロのことをトルコでは、物凄く喜んでいた」

 「なぬ!?」

 「というか、世界各国の新聞を見るとあのテロは、喜んでいる国の方が圧倒的に多い

特に親日派で知られるトルコなどは、「第二次大戦の恨みを日本の侍が晴らしたのだ!ブラボージャパン!黄色人種の鏡!」などとなぜか日本人がやったという憶測まで流れていた」

 「なんで日本人が?」

 「日本は中東から好かれているんだよ。お金くれるから

結局、その金を使って軍備を整える連中が中東で戦争を起こすわけだから、日本は中東の火事に油を注いでいるわけなんだなこれが」

 「ヨーロッパは損得勘定で戦争をやることはいった通りだ。

そしてそれはヨーロッパに近い中東にも言えることでもある。

第二次大戦では、トルコや中東各国は自国が大混乱に陥っている上に、周りは強国ばかりという状況に陥っていた。

ドイツとしては東部戦線でソ連が攻勢に出ている今、中東はソ連と手を組んでドイツを攻撃しようとするかもしれないという危機に晒されていた。

中立国というのは、勝敗が見えた時点で敵に回ることがある。

戦後の利権争いや、戦後のパワーバランスの配置を少しでも自国に有利な展開にするためには致し方ないかもしれないが、その結果として泥沼の大戦争になるのはある意味皮肉と言わざるを得ない」

 「かと言って参加しないままではすぐに潰されてしまうということか・・・・。

まるで第二次大戦前の日本だな」

 「そうだ。中東が日本を好きなのは、何もお金をくれるからだけではなく、この白人至上主義の帝国主義時代をなんとか覆そうとして戦争を挑んだからだ。

太平洋戦争も悪いと思っているのは東アジアだけ。

中東は「誇りに思え」とか言っている。

黄色人種があそこまで白人に一泡吹かせた戦いはほとんどない

あえて言うなら日露戦争だろう。まぁ結局は日本の戦いなのだがな。

イラクが湾岸戦争を起こした理由は、簡単に言えば太平洋戦争の再現だ。

もっともイラクが勝ったら白人至上主義が、中東至上主義になるだけで状況は何も変わらないのは間違いないだろう」

 「やる気満々だぜ、あいつらは。

白人に支配されるくらいなら戦争やった方がマシと考えるからな」

 「さて、そんなこんなでドイツ軍とソ連軍はソ連領南方部のウクライナ地方で激突していた。

しかし襲い掛かるソ連の大軍の前にドイツ軍は歯が立たず、このままソ連から全面撤退をせざるを得ないのではないか?というまでになっていた」

 「ドイツ軍もスタミナが切れたというわけか」

 「だが、このソ連の大反撃も一人の知将のためにストップすることになる」

 「知将?」

 「そうだ。ドイツが誇る超頭脳。

アルデンヌの森を突破しようという大胆かつ、慎重な作戦で世界の強国フランスをたった一ヶ月でブチのめしたフランス攻略戦の立役者。

フリッツ・エーリヒ・フォン・レヴィンスキー・ゲナント・フォン・マンシュタイン元帥  だ」

 「また大げさな・・・・」

 「マンシュタイン元帥の作戦はこうだ。

ソ連軍は勢いに乗って補給をおろそかにしている
ならば戦線が延びきってソ連軍が疲れたときに攻撃を仕掛ければ簡単に倒すことができるはずだ
 」

 「それって・・・北アフリカでロンちゃんがやった手じゃないの?」

 「ロンちゃんって、をい・・・・」

 「マンシュタイン元帥の作戦は、物量にモノを言わせ状況を把握しきれない連合軍相手に有効な戦術だった。

ロンメル元帥もマンシュタイン元帥も、物量で勝る米ソ軍と真正面から戦っては勝てないことを良く知っていたのだ。

だが、ここでマンシュタイン元帥に不幸がおとずれる。

それは、チョビ髭の当てにならない直感が働いたことだった」

 「総統は第一次大戦では、一般兵として参加し、その後は政治活動に専念していた。

つまり、ヒトラー総統は専門的な軍事知識など持っていなかったわけだ。

軍事の知識がないヤツが政治に口出しをするとロクな結果にならないことの証明だな」

 「軍事・政治・経済は三位一体ということですね」

 「まるでキリスト教だな」

 「そうだな。

カトリックの教義である「父と子と聖霊は別々であり、同時に一つである」という三位一体説は宗教よりも政治にしっくりはまる。

軍事・政治・経済を別個のものと考えると世界情勢は見えてこない

地理や歴史、宗教や民族文化などの研究はこの3つを理解するための道具であり、過去の指導者がどのような進路を取ったかを見る道標(みちしるべ)だ。」

 「それはプロイセンの将軍クラウゼヴィッツの『戦争論』で言うところの、軍事はあくまで政治の道具、話し合いの延長であるということでしょうか?」

 「その通りだ。政治家はこの三つを理解している人間がなって、初めて国益をもたらす事ができるわけだ」

 「つまりヒトラーは軍事の知識が足りなかったってこと?」

 「そーいうことになる。元軍人が政権を取るとタカ派になるのだが、だからと言ってそれがいい指導者とは限らないといういい例だ。

余談だがアメリカ合衆国には、大統領は元軍人が多い。

元軍人の大統領でもっとも新しい人間と言えば、湾岸戦争でフセインと戦った第41代目合衆国大統領のジョージ・ハーバード・ウォーカー・ブッシュが挙げられる。

このブッシュは、かなりのアメリカ万歳野郎で、1941年12月の真珠湾攻撃をきっかけに合衆国海軍に入軍を希望したほどだ」

 「アメリカ万歳野郎って、をい・・・・」

 「なんか馬鹿にされているような・・・」

 「ところがこのヤンキー

入隊は18歳以上ということで、1941年当時は17歳だったブッシュは入隊を断られてしまった。

だがそんなことでブッシュは諦めなかった。

翌年には海軍に入軍し、母国アメリカのために戦闘機のパイロットとして日本兵と戦うことになる」

 「アメリカ国民の鏡だ。

イタリアとは大違いだな」

 「あんたまでイタリアの悪口に走るのね・・・」

 「パイロットになったはいいが、このブッシュは日本軍の戦闘機に撃墜されてしまい、九死に一生を得るというピンチを体験することになる。

だが、ブッシュ大統領は1991年の大統領演説で「日本とドイツは味方」だと言っているから、彼にとってもはやWW2は単なる昔話というわけだ。

少なくとも表向きはな。

17歳でありながら軍に入ろうとするアメリカ万歳野郎が、戦争で日本軍に撃墜された上に、世界でもっとも権力のある座についているのだ。

おまけに当時は日本の自動車会社によってアメリカの自動車会社が潰されてしまっていたから、アメリカ国内の反日感情は高まるばかり。

ここまで条件が揃えば、天下御免で日本を叩きまくってもおかしくない。

撃墜された恨みを晴らす絶好のチャンスだからな。

だが彼はそれをしなかった。

それどころか、「今はお互いがつまらない言い争いをするべきではなく、お互いの力を合わせるときだ」と現実的なことを言っていたのだ。

政治的自殺行為とも言えるこの演説は、日米関係だけでなく、足並みが外れかかっていたNATOとの結束も促せた。

ブッシュ大統領が冷静で、国際状況を理解している人間で助かった。

これが人気取りだけの無能な大統領だったら、反日感情を票に結び付けようとして日本離れを狙うだろう。

そんなことをすればアカどもが喜ぶ。

侵略するのが楽になるからな。

ソ連が崩壊したものの、アジアにはもうひとつのソ連とも言うべき中国が残っているから、日米同盟はむしろ強固にしなければアジアは火の海だ。

そんな状況下において、半世紀以上前の昔話を未だに穿り返しては、お互いを批難しあっているキ●ガイどもにブッシュ大統領の爪の垢でも飲ませたい気分だ」

 「ブッシュさんが言いたいことは、敵はアカだよ、ということですね」

 「ブッシュ大統領もその結論かい・・・・」

 「まいったか!」

 「なんであんたが威張るのよ・・・?」

 「まあ、彼の伝記はまた別で話そう。

要するに、元軍人だからと言っても軍事を理解しているとは限らないということだな」

 「アメリカの場合、大統領を補佐する補佐官が何人かいる。

軍事の専門家である安全保障担当大統領補佐官がそれだ。

安全保障担当大統領補佐官は軍事だけじゃなく、政治にも詳しくなくてはいけない。

もっとも、一番大事なのは自分の尻のハエを撒くことだがな」

 「コネとスキャンダル防止・・・・。政治の世界はどこも一緒だな」

 「東部戦線の崩壊を防ぐマンシュタイン元帥のアイデアをヒトラー総統は一蹴した。

そんな作戦がうまくいくはずはない、とな。

だが、マンシュタインの作戦はすでに北アフリカで実証済みだったし、過去の戦闘でもこのような手段は有効だということは他の将軍も同意見だった。

しかし、ヒトラー総統はあくまでも作戦を認めなかった。

だが、マンシュタイン元帥に好機がおとずれた。

一向に反撃が見られない最前線をヒトラー総統自らが視察に来たのだ」

 「それのどこか好機なんだ? 無能な指揮官が前線で指揮を振ればもっと酷いことになるんじゃないか?」

 「まあ聞け。ヒトラー総統が前線にやってきたとき、ソ連軍の戦車部隊が戦線を突破し、総統の使う空港まで60キロというところまでやってきた。

そこで総統は、マンシュタイン元帥に全てを委任し、自らはすぐに本国へ逃げ帰ってしまったのだ」

 「マンシュタイン元帥はようやく無能チョビ髭の呪縛から解放されたのですね?」

 「そうだ。これを機会とマンシュタイン元帥は全部隊へ撤退を命じ、各部隊を配置転換するという防御作戦を発動させた。

ヘタに反撃をして被害を出すより、一気に力を結集して倒そうとしたのだ」

 「北アフリカそのものだな」

 「さらにマンシュタイン元帥の幸運は続いた。

無能のチョビ髭  がソ連最高の将軍ならば、無能のフデ髭  もドイツ最高の将軍だったのだ。

ソ連各軍の司令官たちはスターリンにこう言った。

補給無しでは戦えない!
補給路を確保し、軍を再編成するために一時攻勢を断念すべきです!

だが、スターリンの答えはNOだった。

今こそドイツ軍を駆逐すべきときである。

ドイツ軍はすでに虫の息だ! さっさと止めを刺せっ!、とな」

 「補給無しでは攻撃は無理だろう。戦車だって弾が撃てないんじゃただの箱だ」

 「その通り。スターリンが現場の状況を理解できる軍事の専門知識があればここで進撃をストップし、改めて攻撃を仕掛けれることを選択しただろう。

しかし、フデ髭は自らの当てにならない直感を信じ、限界だったソ連軍を動かしてしまった。

もしスターリンが孫子の兵法書を読んでいればこのようなことはしないだろうにな」

 「あー、かめはめ波の」

 「そりゃ孫悟空だ。

孫子ってのは、古代中国の兵法家が書いた戦術、戦略マニュアルのことだよ。

第一次大戦で負けたドイツの皇帝は、亡命先のオランダで「20年前にこれを読んでいれば・・・」と洩らしたとかなんとか・・・」

 「孫子の兵法書にはこうある。

兵は詭道(きどう)なり

佯りて北(に)ぐるには従うこと勿(なか)れ

戦争とは騙しあいである。そしてわざと逃げる敵をまともに深追いすることはしてはならない、と」

 「どういうこと?」

 「戦争は騙しあいということは言うまでも無い。

そしてわざと敵が逃げるというのは、明らかに理由があるときのみだ。

この場合、マンシュタイン元帥は北アフリカのロンメル元帥と同様、わざと退却し、戦線が延びきっていたところを叩くという作戦を立てていた。

現場の将軍たちの一部にはこれは囮作戦ではないのか?という意見も出ていた。

今まではまったく引かなかったドイツ軍が簡単に引き下がったのだ。

怪しいと見てもおかしくないだろう。

かくして反撃準備の整ったドイツ軍と、無理を強いられて限界に達していたソ連軍の死闘がはじまった。

ソ連軍は東部戦線の全域で軍を動かしていたが、その柱はスターリングラードよりもかなり北に位置する南西方面軍だ。

ソ連軍は、東部戦線の真中に位置する南西方面軍を柱にして攻撃を仕掛けている。

だからこの柱をぶっ潰せばソ連軍は根本から作戦の建て直しを迫られ、攻撃中止を余儀なくされる」

 「だが相手は主力部隊。

普通に戦ったら勝てない。だからこそマンシュタイン元帥は、相手が弱まったときに攻めることにしたんだ。

 「戦いとは相手の強いところではなく、相手の弱いところを突くもの

準備万全のドイツ軍と、疲労しきったソ連軍。

勝敗は戦う前から決まっていた。

おまけにこの主力部隊を叩くときも側面からの奇襲を仕掛る準備をしていたのだ。

数に勝るソ連軍とは言え、命令系統が麻痺しては烏合の集団に過ぎん。

マンシュタイン元帥もロンメル元帥も、その智謀が評価されているのは激戦の中の指揮ぶりではない。

確かにそれもある。

だが、もっとも評価されているのは、勝てる状況を作り出す能力に長けていたことだ。

1943年2月、ドイツ軍はハリコフでソ連軍の主力部隊とぶつかることになった。

第三次ハリコフ戦の開始だ。

作戦は大成功。

ソ連軍主力の南西方面軍は、三方から包囲され、殲滅させられた。

雪のヴェールを突いて現れたティーガーの群れは88ミリの鋼鉄の牙をつき立て、ソ連軍の戦車をことごとく吹き飛ばす

補給も無く、主力部隊が壊滅したソ連軍が攻勢に出ることは不可能で、1943年3月には、撤退の続いた東部戦線をスターリングラード攻略直前時とほぼ同じくらいまで押し戻すことに成功したわけだ。

こうしてドイツ軍はマンシュタイン元帥の作戦によって、崩壊を逃れ、一応の膠着状態に落ち着くことになる」

 「なんていうか・・・泥沼だな」

 「どっちも転ばずの泥沼の東部戦線

しかも両軍の指導者が足を引っ張って兵士が死んでいく。

なんていうか哀れね」

 「こうしてフデ髭は自らの無能のために勝機を捨ててしまったわけだ。

戦いの終わりを示す光りは再び闇に消え、地獄の戦場は再び活発さを取り戻す。

1943年の2月はソ連、3月はドイツの勝利と終わり、夏の大攻勢は仕切りなおしになった。

しかし、両軍のうち、指導者の無能さに苦しんだのはドイツ軍だった。

モスクワ攻略失敗の責任を押し付けられて解任されたハインツ・グデーリアン将軍   は、1943年2月の段階で戦車兵総監の任につき、戦車部隊の再建に当たっていた。

そして彼は結論を出した。

この数ではヤツラには勝てない

 「なんで沖田艦長?」

 「グデーリアン将軍が戦車部隊の再建に着手し始めたとき、東部戦線の稼動戦車はわずか495両

対するソ連軍の戦車は、全枢軸国戦車数の2倍以上だった。

おまけにソ連は国力にモノを言わせ戦車を大量生産し、月産1500両という途方もない量産体制に入っていた」

 「1500!? それは2ヶ月経てば3000、3ヶ月経てば4500ということか!?」

 「そうだ。どんなに兵士や兵器が優秀でも、ここまで物量の差が開いては勝ち目など無い。

グデーリアン将軍はこの状況に重大な危機を感じとり、

「1943年の夏は戦力の充実に当て、戦略的な攻勢はとるべきではない」

と具申した。

しかし、このグデーリアン将軍の意見は却下された」

 「なんで? やっぱチョビ髭?」

 「その通り。だが、ヒトラー総統には政治的な理由があった。

このままソ連軍にいつまでも連戦連敗の状態が続けば、同盟国の不信感は拭い去れない。

負けが決まった国は見捨てられるということだ。

ドイツが負ければ自分たちもただではすまない。

それならいっそ、さっさと降伏して連合国の一員となり、戦後の再起に少しでも有利な状況を作り出したほうが分がいい。

どの国の指導者もそう考えるわけだ」

 「ようするに、この辺で「ドイツ軍が強い」ということを示す大勝利がなければ、枢軸国軍は内側から崩壊するということか」

 「そう。だが、この意見に反対したのは総統だけではない。マンシュタイン元帥も反対していた」

 「ドイツ軍の知恵袋がですか?」

 「なんかダサいネーミングね・・・」

 「マンシュタイン元帥の意見はこうだ。

このままドイツ軍が夏の攻勢をやめても、ソ連軍は攻めてくるだろう。
ならば、夏に入るまでに大打撃を与え、ソ連軍の夏の攻勢を封じ込める必要がある

 「足止めというわけだな」

 「しかし、このときのドイツ軍に大規模な攻勢に出れるような戦力があるのでしょうか?」

 「正直に言えばまず無理だろう。

ソ連軍とは数が違いすぎる。

なにせこちらが倒すよりも、相手が作る数の方が多いのだからな。

だが、座して死ぬわけにもいかん。

こうしてソ連軍の夏の攻勢を防ぐ戦いの準備が始まった。

戦場は、ハリコフの北、第三次ハリコフ戦で落とせなかった名残の地、クルスク。

東部戦線中央部の突出した地域クルスクは、他の戦線と異なり、線が一直線ではない。

戦線を押し戻せなかったドイツ軍にとってすれば、この場所は包囲が簡単に行える状態になっており、守りのソ連軍にとっては、かなり危険な場所だった。

だが、ピンチはチャンスでもある。

一箇所だけ戦線が突破するかしないかの状態は、ここに戦力を集中させれば戦線突破することも可能だ。

つまりドイツ、ソ連、両軍にとってここはピンチとチャンスの両方が存在するキーポイントとなる」

 「となると、ドイツ軍にとるべき選択は二択。

先にクルスクを落とし、そこでソ連軍の増援部隊を待ち伏せする

・わざとソ連軍に攻めさせ、戦線が延びきったところで各個撃破

ということになりますね」

 「そういうことだ。マンシュタイン元帥は当初「後の先」を取る作戦を希望した。

ハリコフの再現をすればいいということだ。

数で劣るドイツ軍が勝つには、ソ連軍が弱まったところを突き、自軍の犠牲が少ない戦いしかない。

だが、ここでもまたチョビ髭の無能っぷりが炸裂する」

 「またかい・・・・」

 「このチョビ髭の無能っぷりにマンシュタイン元帥は怒った。

「先の先」など選べば、自軍の消耗が激しく、勝ったとしても後が続かない。

だが、この抗議は総統の耳に届かなかった。

たとえ一時と言えど、ソ連軍に領土を踏ませるなどあってはならん!

相手を誘ってから反撃するバックブロー攻撃は、ロンメル元帥が砂漠で大勝利を何度も挙げた実績のある作戦なのに、その戦術は無能のチョビ髭には理解できなかったのだ。

命令ならば仕方ない。

マンシュタインは「先の先」を選ばざるを得なくなった。

そしてこの作戦で行くとしたならば、勝機はソ連軍が行動に出る前に動く必要がある。

互角の条件で戦えば負けるのは当然だ。数が違うからな。

だが、この作戦はスパイのせいでソ連軍にダダ漏れだった。

ハリコフではドイツ軍の侵入に対抗するため大規模な陣地が用意されているという情報が入ったのだ」

 「そんな状態じゃ「先の先」は不可能だな。「後の先」で行くしかない」

 「そう考えるな。敵が待ち構えているのに、突っ込む馬鹿は普通はいない。

だがチョビ髭は普通ではなかった。

何を血迷ったのか、作戦の強行決行を決定。

しかも「先の先」作戦は5月初期には行うはずだった。

だが、この無能の独裁者には自軍の戦車の性能がよほど頼りに見えたのだろう。

我が軍の戦車ならばこの防御陣地を突破することも可能である!

ドイツ戦車を、ニュータイプ搭乗の白いモビルスーツかなにかと勘違いしていた総統は、作戦を6月10日まで延期する命令を出した」

 「そんなことをしたら将軍たちが怒るんじゃないか?」

 「当然だ。ドイツ戦車がいくら強くても所詮は戦車。敵の弾が当たれば壊れるし、整備をしなければ故障しやすくなる。

使っていれば消耗するし、燃料が無ければ動きもしない。

相手の戦車よりも少し性能が高いだけで、たった一機で戦局を変えるような機体など存在しないのだ。

当たり前の話だがな

総統のアホな意見に将軍たちは猛抗議した。

グデーリアン将軍  は作戦そのものの破棄を立案、マンシュタイン元帥  その他の将軍たちも考え直すように言い寄る。

だが、そんなことで無能のチョビ髭の意見を変えることは不可能だった。

結局作戦は延期に延期を重ね、1943年5月初旬に決行される予定の作戦は、7月にまで伸びることになった」

 「ドイツ軍は国を挙げて戦車の増産に努めた。

朝も昼も夜も、まさに国家総動員というやつだ。厳密に言うならドイツ人は1日8時間労働だったが、その分、ユダヤ人がせっせと働いていたがな。

女、子供、老人・・・。まぁ、日本も似たようなもんだったがな」

 「この2ヶ月間の遅れは深刻な状況に陥った。

ドイツ軍を待ち構えるソ連軍は、全縦深70キロという途方も無い防御線を用意していたのだ。

これでは回り込むこともできない。

8重に重ねられた防御陣地が70キロに渡ってドイツ軍を待ち構えた。

将軍たちは最後の最後まで作戦の中止を懇願した。

無理無茶無謀の三拍子揃った史上最低の作戦を決行などすれば被害は予想も出来ないほどに広まる。

しかし、総統の答えはNOだった。

1943年7月5日、戦いが始まった。

ソ連軍はこの頃にはただの突撃集団ではなく、規律の整った軍になっていた。

ドイツ軍はソ連軍の集中砲火を浴び、弾丸と砲弾の嵐に晒された。

それでもドイツ兵は懸命に戦った。

ドイツ軍はクルスクを北と南から挟み撃ちにしていたが、北はソ連軍の物量に阻まれ撤退を余儀なくされた。

マンシュタイン元帥  率いる南のドイツ軍は、最新鋭のティーガーを先頭に快進撃を続ける。

ソ連軍のT−34はこの88ミリの牙を持つ鋼鉄の虎の前にはただの足止めに過ぎず、作戦開始から5日後の7月10日、ドイツ軍はクルスク最後の天然の要塞であるブショール川南岸の高台にまで達することに成功した」

 「ソ連軍の防御陣地の厚さは凄いんだろ?それなのにたったの5日でここまで突き進んだのか?」

 「ドイツの虎は世界最強だ。T−34など全く問題じゃない。

ティーガーの強敵はあえて言えば燃費の悪さだ」

 「燃費?」

 「21世紀現代の普通自動車は1リットルのガソリンで大抵は10キロ以上走れる。

だがティーガーは200メートルだ」

 「はぁ?」

 「1リットルで200メートルしか動けないんだよ。なんせ55トンもあるからな。

普通自動車が大体1トンくらいだろ?

虎戦車は普通自動車55台分の重さなんだ」

 「ドイツみたいな石油が出ない国がそんなものを使って大丈夫なのか?」

 「だからウクライナが欲しいんだ。同盟国のルーマニアが石油資源の頼みの綱だからな。

ルーマニアがソ連側についたらドイツはお終いだ。だからなんとしても大勝利が欲しかったんだよ」

 「ドイツ戦車の性能と燃費の悪さ、そして国内の資源の枯渇、何より無能の総統とあらゆる条件がそろい、ドイツ軍は絶望的な戦いを強いられることになった。

話を元に戻す。

マンシュタイン元帥率いる戦車師団は、クルスク陥落まで後一歩というところまで追い詰めた。

ソ連軍は焦った。

このままでは戦線が崩壊し、ドイツ軍はウクライナを占領してしまう!

焦ったソ連は虎の子であるステップ方面軍を呼び寄せた。

両軍はお互いの国家の存亡を賭け、対峙しあう。

こうしてクルスク攻防戦の天王山とも呼ばれるプロホロフカ村の戦いが始まった。

プロホロフカ村はのどかな田園地帯であり、当初ここで戦うとは予想していなかった。

だが、独ソ両軍は全く予想もしない偶然の戦いを開始するはめになった。

たまたま移動中の両軍の戦車部隊はこの狭い村で史上最大の戦車戦を繰り広げることになる」

 「川中島の合戦のようですね。偶然出会った武田信玄と上杉謙信がぶつかり合ったような」

 「状況は似ているな。

独ソ両軍は単なる移動中に出会ってしまった。

これでは作戦も何もあったものではない。

ソ連軍800両、ドイツ軍700両

狭い村の中に1500両以上の戦車が真正面からぶつかり合ったのだ。

1943年7月13日、開戦当初有利なのはドイツ軍だった。

ソ連軍の戦車ではドイツ軍のパンター(=五号戦車)やティーゲル(=六号戦車)には勝てるはずもない。

だが、この村の狭さがドイツ軍の不運だった。

至近距離からの攻撃では、さすがのティーゲルの装甲も貫かれ、泥沼の大混乱戦となった。

指揮は大混乱に陥り、目の前にいる戦車を吹き飛ばした次の瞬間には自分の戦車が吹き飛ばされる。

やがて援軍の到着したドイツ軍が有利になり、ソ連軍は撤退を余儀なくされた。

この戦いは半日で終わったが、ドイツ軍は700両のうち300両以上を撃破され、ソ連軍の被害はそれ以上だった。

死闘を乗り越えたドイツ軍、命を賭けて戦い勝利を収めた彼らに絶望を知らせる命令が下った」

 「補給無しで戦えとか?」

 「もっと酷い。作戦そのものの中止だ」

 「え?だってここさえ占領しちゃえばあとは簡単なんでしょ?せっかく取ったのに?」

 「状況が変わったのだ。

クルスク戦車戦の2日前、西部戦線ではDAKの宿敵モンティと、アメリカの猛将パットン率いる米英連合軍がシシリー島上陸作戦を決行した。

その上、クルスクの北がソ連軍によって占領され、このままではクルスクに残っているドイツ軍は孤立してしまう。

つまり作戦そのものが根底から潰されてしまったわけだ。

結局、このクルスクの戦車戦は単なる消耗戦に終わってしまった。

残ったのは300両以上の戦車の墓のみ。

西部戦線の守りのため、東部戦線から戦力が引かれてしまった。

こんな状態では戦線の維持すら不可能だ。

ドイツ軍は作戦開始から2週間後の7月23日には最初のラインにまで押し戻され、撤退を余儀なくされた」

 「最初からマンシュタイン元帥の言うことを聞いていればこんなことにはならかったろうにねぇ・・・」

 「さらに状況は悪化の一方を辿る。

チョビ髭  よりはマシなフデ髭  はこのドイツ軍の撤退に追撃戦を開始した。

今度は無理な追撃ではなく、しっかり補給路を確保してからの冷静な攻撃だ。

1943年8月にはビエルゴドロ、オリョールが落ち、あれだけの被害を出して手に入れたハリコフも奪還された。

9月には北のスモレンスク、中央のキエフ、南は「東方の防壁」と呼ばれた天然の要塞大河ドニエブルに到達していた。

ここまで戦力差が開いてはドイツ軍に勝ち目などない。

マンシュタインはただちにソ連領からの大規模な撤退を提案した。

もたもたしていれば全滅するのは間違いないからだ。

だが、総統はこれを許可しなかった。

え〜、せっかく手に入れたのにぃ〜、しょうがないから少しずつ後退せよ

とまぁ、またもや無能っぷりを発揮し、消耗しながらの小規模な撤退しか認めようとはしなかった」

 「なんて言うか・・・・。将軍が可哀想ね」

 「可哀想なのは前線の兵だよ。

なんせ補給もない。援軍も来ない。勝ち目はゼロなのに、逃げたら殺すとか言われてるんだ」

 「11月にはウクライナからの完全撤退を余儀なくされ、ウクライナは2年半ぶりに解放された。

さらにドイツ軍は天にも見放される。

1943年は冬将軍が来なかったのだ」

 「それじゃソ連軍の追撃は止まらないわね」

 「そうだ。冬将軍さえ来なければソ連軍の進撃を阻むモノは何も無い。

勢いに乗るソ連軍は大軍を率いて大攻勢に出始めた。

北のレーニングラードと南のクリミア半島の奪還作戦だ。

すでに勝敗は誰の目にも明らかだった。

十倍以上の戦力で怒涛のごとく押し寄せるソ連軍の前にドイツ軍は敗北の一途を辿り、クリミア半島に閉じ込められたドイツ第17軍はヒトラー総統の死守命令のために玉砕した。

特攻、自決、玉砕。

これらは旧日本軍の御家芸のようなイメージがあるが、なんのことはない。

どこの軍もやっていることだ。

アメリカ軍も似たようなことをやっている部隊は存在した。

家族を人質に取られ、脅迫されながら特攻した日系アメリカ人やユダヤ人。

除隊しても職はなく、絶望から死に場所を求めていたインディアンや黒人。

旧日本軍のイメージが悪いのは、ただ単に戦争に負けたからに過ぎん。

こうして絶望に包まれたドイツ軍は撤退に告ぐ撤退を重ね、やがてソ連領からの全面撤退を余儀なくされた」

 「聞いてると悪いのは全部無能のヒトラーじゃないか」

 「だが、ヒトラー総統はこの状況時に凹んでなどいなかった。

むしろ味方のふがいなさに怒りを感じ、ただただ怒っていただけに過ぎなかったらしい」

 「何よそれ。悪いのは全部無能のヒトラーでしょう?」

 「そうなんだが、当の総統はこの東部戦線の失敗の責任を全てマンシュタイン元帥に押し付け、彼をクビにしてしまった。

ドイツの超頭脳は軍から去り、東部戦線でドイツ軍が攻勢に出ることは二度と無かった」

 「フデ髭さん  がトハチェフスキーさんを殺したように、チョビ髭さん  もマンシュタインさんをクビにしてしまったのですか。なんかお二人似てますね」

 「そっくりだぜ。無能なところがな」

 「二人の場合、部下に見捨てられて死ぬというところまでそっくりなのだが、そこまで話すとキリがないのでここで終わっておこう。

次回は西部戦線。

いよいよ史上最大の作戦ノルマンディー上陸作戦の説明をする。

というわけで休憩だ」

 

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