ソフィア先生の補習授業

「アハトゥンク!(気を付け!)
わたしはSS第12戦車師団戦車連隊第8中隊長のソフィア・パンタプルグ大尉だ。
祖国ドイツは君ら若者の力を必要としている!
わたしの務めは君たちに地獄の戦場を生き抜く術(すべ)を叩き込むことである!
覚悟しろっ! 春までには一人前の戦車乗りになってもらうぞ!」
「・・・・・・・・・・」
「質問があるものはいるかっ!?」
「・・・・はい」
「どうしたヴォルフ。何かおかしな点でもあったか?」
「戦車という単語が。大尉、このコーナーは「第二次世界大戦」について語るコーナーです。戦車はまた別の機会だそうです」
「気にするな。どうせ誰も気にしていない」
「気にしてるって。それにそーいう大雑把で適当なのはドイツじゃなくてアメリカ
――――」
ぱきゅーんっ!
「・・・。おっと拳銃が暴発してしまった。怪我はないかヴォルフ」
「ほ、頬に弾が・・・・い、いえ何でもありません大尉」
「あー、ルガーP08だーっ!」
「ほぉ? 一目でわかるのか? 素人にはドイツ製拳銃は全部ワルサーP38に見えるのに大したものだ」
「ルガーP08とワルサーP38を一緒にするヤツなんていないわよ。ルガーP08って言えばスライドが上に跳ね上がる面白い骨董品でしょ?」
「骨董品、だと?」
「お、おいルクス。早く謝って――――」
「うふふ〜♪ いいわ〜。そのいかにもドイツちっくなラインの曲り具合が超燃え燃えって感じでぇ・・・・くすくす・・・・」
「・・・・・・・。さて、戦車の話をしたいのはやまやまだが「第二次大戦」について話をせねばならん。さっそく話をはじめよう。おいそこのヤンキー」
「わ、わたしかっ!? 確かにペンシルヴァニア州は東部だが、いきなりヤンキー(東部野郎)と言っても一般読者はいわゆる不良学生を思い浮かべ――――」
ぱきゅーんっ!
「・・・・・・・・。手がすべった。余計なことは言わない方がいいぞ。わたしは気が長いが、女神様ではないからな」
「何の御用でしょう?サー」
ぱきゅーんっ!
「た、弾が足元に・・・・あ、あと一センチずれてたら・・・・」
「誰がサーだ!? ヘルコマンダー と呼べ!
貴様、それでも誇り高きプロイセン軍人か!? 恥を知れ恥を!」
「・・・・・・・・わたしはU.Sマリーン(合衆国海兵隊)で、しかも引退したし。そもそもドイツ人じゃないし―――」
「黙れ小僧っ!」
(・・・なんで「もののけ姫」?)
(・・・・俺に聞くな俺に。大尉は頭もいいし、美人で背も高いがちょっと変わってるんだ)
(・・・・変わってるっていうよりは変よ、あれ?)
(・・・・・・。ドイツ人はみんな個性豊かなんだよ。俺が言うのもなんだがドイツは世界一変人の多い国なんだ。
「生涯一度も笑わなかった王様」とか、「生涯に50回離婚と結婚を繰り返した男」とか・・・・
ソ連とは違う意味でぶっ飛んでるんだ。
だから大尉は全然グリーンゾーンなんだよ。気にするな )
(変人ねぇ・・・・納得・・・)
(・・・・・なんで俺を見て納得する?)
「さて、そろそろまじめにやらないと読者が飽きるな。
では第二次大戦を語るとしよう。まず第二次大戦の舞台だが・・・・。
ヨーロッパ、アフリカ、ロシア以外は除く!」
「・・・・なんで? それじゃアルクが戦ってた東南アジアのあれは何?」
「あれは大東亜戦争だ。日米戦争は第二次大戦ではない。なにせ規模が小さいからな」
「そうなの?」
「うーん、そうはっきり言われると・・・・。たしかにドイツに比べれば日本は東洋の隅っこでちょこちょこやってたに過ぎないような気もしないでもないが・・・・。というよりはドイツの規模がでか過ぎるんだよ。世界中をまきこんだからな。日本もドイツによって巻き込まれたって言ったほうが正しいかも知れないな・・・」
「ドイツは夢があって素敵ですね♪」
「素敵って、をい・・・。たしかに物語としては面白いが・・・・」
「ところで何で大東亜(だいとうあ)戦争っていうわけ?」
「東アジアで起こった大きな戦争だから。いろいろ名前にこだわる連中がいるが、戦いの舞台がわかりやすいからそれでいいんじゃないか?」
「そんなことはどうでもいい
問題なのは、第二次大戦を語るにはその前の世界情勢から語らねばならないのだが、一体どこまで遡ればいいのかが難しいところだ」
「なんで? 第二次大戦は1939年のポーランド侵攻からなんでしょ?ならその数年前くらいでいいんじゃない?」
「そうもいかん。なんせ第二次大戦が起こった理由は第一次大戦の後始末が無茶苦茶だったせいだからだが、なぜそんなに無茶苦茶だったか?というのを説明すると500年前の大航海時代の前にまで遡らないとならない。いや、その前の前の前の・・・・・・というわけでひたすら遡るわけだ」
「全ての歴史は近代史である。
とりあえず世界史の流れはテッサ先生
の補習授業を参考にしろ。
遡るとキリがないのでとりあえず第一次大戦勃発から語ることにする。
つまり20世紀初頭からだ。
20世紀初頭、それは世界の列強各国が植民地支配で得た力と、機械化文明が兵器にまで応用されたことにより、かつて無いほどの火薬庫と化していた時代だ。
ヴォルフ、国際社会のリアリズムを言ってみろ。特殊兵科学校時代に教えたはずだな」
「国際社会はチェスゲーム。
相手の戦力を潰さず、自分の持ち駒にする。
純粋に軍事的な勝利を得ることが、必ずしも国家戦略的な勝利には結びつくとは限りません。
むしろ軍事的な勝利が国家戦略レベルの目標達成の邪魔になることもあります」
「ヤーツ(その通り)。
それが戦術(タクティクス)と戦略(ストラテジー)の違いだ。
ある一つの戦いのエンディングは次の戦いのプロローグに過ぎない。
1991年の湾岸戦争で米国がイラクを完全に叩き潰さなかったこともそれが理由の一つだ。
近世フランスの社会学者エミール・デュルケムの社会構造論によればイラクは環節社会――― すなわち均質で類似した人々によって社会が作られている。
ようするにイラクには石油産業以外にはロクな職業がないということだ。
このような社会構造の場合は都市にエアキャンペーンを行っても死者が出たり、建物が壊れるだけで国家そのもののダメージには繋がらない。
欧米のように社会全体が分野別に分かれている場合は、一箇所でもダメージを受けると社会全体がおかしくなる。
欧米とイラクでは国家の構造自体が根本的に違う。
欧米や日本を哺乳類に例えれば、イラクはミミズのようなもので一箇所や二箇所が潰れても神経そのものがやられない限りは生きている。
ベトナム戦争で空爆が通じなかった理由もここにある。
中枢神経そのものがやられない限り、環節社会構造の国家は降伏などしない。
だからイラクを叩き潰したければ湾岸戦争のような戦法は取らず、ステルス爆撃でフセインという神経を断ち切ればよかった。
ステルス爆撃による戦術核弾頭 や 超強力徹甲弾でイラクの大統領官邸を吹き飛ばせばかえって死者は少なくすんだ。
なぜ軍事的勝利のベストチョイスをしなかったか?
なぜならばイラクを根底から叩き潰すようなステルス爆撃は戦術的勝利を得ても、戦略的な勝利を得られないからだ」
「戦略と戦術の違いがよくわからんないんだけど・・・・」
「では分かりやすく言おう。君が学校で試験を受けるとする。その目的は試験に合格すること。それが戦略的勝利だ。
そして問題を解くこと。これが戦術的勝利だ。
しかしときに難しい問題が出たとき一つの問題にばかり熱中して時間切れになってしまうことがある。
いくら問題が解けても、他の問題が解けず、テストに合格しなければ目的は達成したとは言えない。
これが局地的戦術(問題を解く事)には勝利したが、大局的戦略(テストの点)で敗北したということの例だな」
「・・・・わかりやすいわね」
「そーいうことだ。先ほどの米国がなぜステルス爆撃による一撃必殺の攻撃をしなかったのかは簡単だ。中東とのポスト冷戦を望んでいた米国としては、イラクを完全に潰すことはかえって世界を不安定にさせてしまうからそのまま生かしておいたというわけだな。
イラクを倒すことにとらわれ、敵を無くしてしまい、行き場のない軍事産業が米国経済を圧迫し、国家経済が内部崩壊するくらいなら、いっそイラクをそのまま生かしておいたほうが米国としては国の崩壊を阻止できる。
米国が強いままならソ連や中国も動けず、中東も動けない。これが冷戦平和の正体だ。
イラクには軍事国家として存在してもらわなくては困るが、勝手に動かれても困る。
つまり、湾岸戦争はあくまでイラクを交渉のテーブルに座らせるための揺さぶりというわけだ」
「結果的にアメリカはアウジアラビアなどに親米政権や米軍基地を置いたり、石油の利権を勝ち取ったわけか・・・。
敵を生かさず殺さず、自分の持ち駒として利用する。
まさにチェスゲームだな・・・」
「だが、それこそが国際政治のリアリズム。
政治は難しいのだ。
このような戦略的軍事行動は別に珍しくもなんともない。
15世紀のマキャベリの「君主論」が各国政府の権力者に愛されて以来、欧州ではこのようなことは日常茶飯事だった。
昨日までは長年の宿敵同士だった国同士が、次の日には盟友として同盟を結ぶこともヨーロッパでは常識だ。
結果、ちょっとの小競り合いをして同盟、破棄、戦争、同盟・・・・このようなことが15世紀から約500年間、10年から20年間隔で起こっている。
だからこそスイスのような中立国は同盟など当てにせず重武装国家として独自の道を歩み始めたのだし、アメリカは同盟は戦争のはじまりということを肌で感じていたからこそモンロー主義を取り、ヨーロッパの戦争には関わらなかったのだ。
つまり、欧米では同盟など当てにしないのは常識ということだ。
21世紀現在でもそうだが日本人は国際社会の常識がまるでわかっていない。
あとで話すが第二次大戦直前にドイツとソ連が手を組んだとき、日本政府は「欧州情勢は複雑怪奇」というコメントを残している。
だがそれもこのように外交は相手を利用するためにあり、互いの利益のためならば、敵同士が手を結ぶことさえも当たり前ということを知っていれば簡単に理解できる。
日本人は外交を友好の手段としか考えないから、いつもいつも国際情勢についていけないのだ」
「第二次大戦後の日本人は戦前よりもはるかに酷くなってるけどな」
「こうした欧州列強のパワーバランスは20世紀初頭になるとドイツ、オーストリア、ハンガリー、トルコを中心とした同盟国と、イギリス、フランス、ロシアなどの連合国が二大勢力としてにらみ合っていた。
何かのきっかけでお互いがお互いを攻撃し、複雑な同盟関係と民族紛争に加えて石油資源の利権争いが加わり、二カ国間の衝突はあっという間に数十カ国を巻き込んだ大戦争へと発展していくという危険極まりない状態になっていたのだ。当時のこの状況を表わす言葉として、バルカン半島はヨーロッパの火薬庫というのがある」
「えーと、つまり、レーニンの帝国主義論は正しかったということでしょうか?」
「半分はな。
第一次大戦のきっかけはスラブ民族第一主義を推すロシアとゲルマン民族第一主義を推すオーストリア・ドイツの対立が背景になっている」
「なんだ、ドイツとソ連は第一次大戦の前から仲が悪かったのか」
「いつものことだ。それ自体は特に問題ではない。
スラブ民族であるセルビアの青年がゲルマン民族のオーストリアの皇太子を暗殺したことを口実として、帝国主義国家群は第一次大戦という前人未到の大戦争へ発展していった。
口実というのは、この暗殺事件があろうと無かろうと戦争突入は時間の問題だったからだ。
19世紀の産業革命での機械の本格利用は火器の発達、兵員や補給物資の輸送手段の発達など本来の戦術を一変させた。
今までは馬だから3日かかったような距離も、自動車によって半日でこれるようになったりした。
技術や世界情勢が変われば過去の教訓などまるで役に立たない。
それが目に見えて影響したのがこの第一次大戦だ。
ただし過去の教訓が全て通用しないということもない。
確かに変わらない部分もあるのは事実だ。
だが、変わった部分と変わらない部分を見分けることができないのでは、無駄な犠牲を悪戯に増やすだけだ。
産業革命による機械技術の発達により単発式の銃は連発式になり、やがてマシンガンが開発され、歩兵の強さが圧倒的に向上した。
結果、第一次大戦の陸上戦は塹壕(ざんごう)、ようするに敵の銃弾から身を隠すために地面に掘った穴だ。
この塹壕に身を潜めて戦う塹壕戦が中心となった。
各国は用地や国境に何十キロの塹壕陣地や要塞を作り、その防御陣地は難攻不落ゆえに戦いは泥沼の長期戦に突入した。
一進一退の膠着状態はただ物資と兵士の数を減らしていき、泥沼の戦争はいつまでも続くことになった。
そこで各国はこの塹壕をものともせず突進し、一気に戦線を突破する新兵器の開発に勤しんだ。
実はこの発明は1910年、つまり第一次大戦前から研究されていたが、それが実際に戦場に姿を現したのは1916年のことだ」
「新兵器って言うと・・・・」
「戦車、でしょうか?」
「そうだ。1916年にイギリス軍が歴史上初の戦車「マークT」を投入した。
この戦車は分厚い鉄板の箱が動いているようなダメ戦車なのだが、当時としては画期的だった。
なにせ相手のマシンガンの集中砲火を喰らってもびくともしない。
一気に塹壕に突撃し、戦線に穴を開け、そこから難攻不落の陣地を攻略する。
第一次大戦において戦車はイギリスやフランスで主に開発された。
伝統にこだわるドイツは戦車の開発に遅れ、結果的にこれが第一次大戦の敗因ともなった。
だが最大の敗因はドイツ軍が短期決戦に拘るあまりに、フランス・イギリス・ロシアを同時に敵に回したことだった。
ドイツはフランスを打ち破り、その後にロシアを倒すというシェリーフェン計画に則って戦っていた。
しかし西部戦線では英仏の戦車がドイツ軍を圧倒し、東部戦線では冬将軍到来による泥沼化によってドイツは両者から挟み討ちを喰らうという状況に陥ってしまった」
「・・・・・・・・・なんかロシアってピンチになるといつも冬将軍が出てくるわね」
「だってロシアだぞ? あそこは人間の住むところじゃない。
なんで地元なのにも関わらず毎年何十万人も凍死者が出てるんだ?」
「知らん知らん。わたしに聞くな」
「そのうえ英仏に武器を売っていたアメリカの商船をドイツの潜水艦が沈めてしまったために、アメリカまでがドイツに宣戦布告。
日本は直接は関わらなかったが日英同盟を理由にドイツに宣戦布告。
イタリアも露英仏に領土の保安を約束された代償にドイツに宣戦布告。
あーだこーだと次々に敵が増え、最終的に連合国27 対 同盟国4 という最悪の状況に陥り、1918年国力がほぼ尽きたところでドイツは降伏し、第一次大戦はその幕を閉じた。
人類史上最初の世界大戦は総戦死者数1300万人という膨大な被害を出した。
そして世界中がこれで戦争が終わり、平和な時代がやってくると信じた。
・・・のだが、第一次大戦のエンディングは第二次大戦のプロローグに過ぎなかったのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「どうしたんですか、急にしゃがみこんで?」
「・・・・いや、こうして実際に第一次大戦の経過を見てみると、つくづくドイツってアホなことばかりやってるな、と。
私が言うのもなんだが、どうしてここまで無理無茶無謀の三拍子揃ったダメ作戦ばかりを繰り返すのだろうか?」
「そうよね。大体なんでドイツは英仏露を同時に敵に回そうなんて考えたのかしら?」
「それは簡単だ。従来の戦いならば勝てると思ってたんだよ。前の戦争の経験に基づいてな。
第一次大戦直前のドイツは実はかなり強かった。
とくにビスマルク時代と呼ばれた19世紀後半のヨーロッパはドイツの敵は互いが互いを牽制し、ドイツは兵力を温存してヨーロッパ後進国とは思えないほどの軍事力を手に入れていたんだ。
当時のドイツを称した言葉に国家が軍隊を持つのではなく、軍隊が国家を持っているという言葉まである。
ドイツはどこの国からも恐れられていた軍事大国だったんだ。
だけどな、皇帝がどうしようもないほどアホだったのが運の尽きだ。
この皇帝はドイツ帝国の三代目で、祖父はビスマルクの操り人形だったが、第三代皇帝ヴィルヘルム2世のほうは何を血迷ったかビスマルクを解任しちまったんだ」
「なんで? ビスマルクって言えばドイツ史上最高の政治家の一人でしょ? なんでそんな有能な人材を見す見す捨てちゃったわけ?」
「だからアホなんじゃねぇか。ビスマルクに任せていたならアホとは言わねえよ」
「あ、そっか」
「いいのかそれで?」
「いいんだよ。実際アホなんだから。ビスマルクが死ぬ思いで強くしたドイツ帝国をアホの三代目が潰しちまった事実は今さら否定しても仕方がない。
アメリカを攻撃したのも簡単な理由だ。死の商人を気取ってるアメリカに一発ぶち込んでやれば、モンロー主義のもとで戦争に巻き込まれたくないアメリカは英仏に武器を売るのをやめるだろうと思い込んでいた。
ところがどっこいウィルソンがぷっちーんとぶち切れて、手を引くどころか敵に回るはめになっちまった。
ま、自国の国民が敵国に殺されたから宣戦布告ってのは、考えてみれば当たり前の話だったな」
「ウィルソンって誰?」
「・・・・・。アメリカ大統領だ。お前一応はアメリカ人だろ? なんで知らねえんだよ」
「だって歴史嫌いだもん」
「・・・・・・・・・・・・ 嫌いの一言で歴史を何も知らない連中が平気で国際問題に首を突っ込むんだもんな。
そりゃ紛争も泥沼化するぜ」
「さて!」
「あ、復活した」
「もう腰の方はよろしいのですか?」
「腰? なんのことだ?」
「もう若くないんですから気をつけてくださいね。ソフィアさんはあと2年で3――」
「大尉っっ!話を続けましょうっっ!」
「ヴォルフさん?」
「・・・・・(ボソ)余計なことは言わない方がいい。命は大事にするものだ」
「・・・・そうだな。では話を続けるとしよう。第一次大戦の結果、敗戦国のドイツはヴェルサイユ条約によってとことん軍備を拡小されられ、弱体化させられた。
徴兵制の禁止、戦車・軍用機・潜水艦などの攻撃兵器の開発・配備の禁止、支払いの完了が1981年という絶望的な賠償金、エトセトラエトセトラ・・・・・。
なぜここまで弱小化したかというと、それは依然として世界が弱肉強食の帝国主義時代だったからだ。
ヴェルサイユ条約とは戦勝国がドイツを植民地化することに他ならない。
民族自決を唱えた国際連盟やヴェルサイユ体勢とはまったく逆なのだからな。
当然この条約によって弱体化したドイツはこう考える。
数年もすれば戦勝国はドイツを絞れるだけ絞るだろう。そしてドイツはいつまでも戦勝国の奴隷として苦しめられるのは確実だ、と。
実際にアジアやアフリカは植民地として欧米の肥やしとされていたのだからこれは当然だ」
「戦争に負けた国が惨めなのは昔も今も同じってことだな。
ドイツなんか、捕虜以外の敵兵を一人たりとも自国領土内に入れなかったのに負けちまったんだ
こんな惨めな話があるか。」
「それはちょっと哀れね・・・・」
「終戦直前、革命が起きて皇帝はオランダへ亡命。ドイツは帝政からワイマール共和国となった。
徹底的に軍備を弱小化され、ワイマール憲法のもとにドイツは戦争ができない国に生まれ変わった。
ところがどっこい、そのワイマール共和国はひそかに国防軍の再軍備に着手し始める。
ラピュタは滅びぬ!
何度でも蘇るさ!
・・・・というノリかどうかは知らんが、国が戦争に負けてもすぐに立ち直るあたりが欧州各国の特徴だ。
たかが一度や二度の敗北など気にしない。
なんせ負け慣れしてるからな。
アジアやアフリカの連中は「白人には絶対勝てない」と精神的に参っていたが、ドイツは違う。
次は負けんっ!
といわんばかりにやる気満々だ」
「・・・・・・・・・・・・。懲りないわね・・・・」
「フッ。プロイセン軍人に敗北の二文字はない
大丈夫だ。次は勝てるっ!」
「・・・・・。やっぱドイツ人って頭がおかしいわ」
「・・・・それは偏見だろ。おかしいのはこいつだけだ」
「でも個性があって素敵ですよ♪」
「個性、かなぁ・・・?」
「黄色人種は諦めが良過ぎんだよ。特に日本なんて、対外戦争で負けたことなんて太平洋戦争くらいしかなくせに・・・
いや、厳密に言うと違うか?白村江の戦いでも負けてるからな・・・まあそれはともかく
隣りの中国を見てみろ。チンギスカンの時代から数えれば何百年も負けっぱなしだってのに、未だに「中国は世界一」とか本気で思ってる。
あそこまで理想と現実のギャップを認めない国も珍しいぜ」
「さて盛り上がったところで少し休憩しよう。書くのが疲れたからな。ちょうど第一次世界大戦が終わったところだし、キリがいい」
「ところでなんでプロイセンの騎士っていうの?」
「ドイツ帝国の母体だったプロイセン公国が十字軍の騎士が作った国だったから。
日本が武士の国だったように、ドイツは騎士の国なんだよ。
貧しさと戦争の日々が続き、華やかな生活と無縁のドイツでは質実剛健、質素倹約、忠誠こそ我が名誉という考え方が美徳とされている。
これは禁欲的で勤勉な国民を作る精神的部分の礎となっているんだ。
だからドイツは機械文明が発達しているんだ。大雑把で適当なアメリカ人や、遊び人ばかりのイタリアには負けんよ。
製品の質には意地でも完璧を目指すからな」
「完璧って言うとどのくらい?」
「そうだな・・・・。機械の部品のサイズをあまりに精巧に作りすぎたために、埃に弱くなってすぐに故障してしまうくらい完璧を目指す。
たとえ完璧をめざすあまりに生産効率が低くなっても構いはしない。
1の良銃は10の悪銃に勝てるというのがドイツの考え方だ」
「・・・・なんでそこまで完璧主義なのかしらね。いいじゃない適当で」
「主観の相違だな。アメリカ人はそうやって大雑把で適当な楽観主義者が多い。だからアメリカ製の製品は粗品が多いんだ。もっとこだわれ」
「でも宇宙ロケット飛ばしてるわよ? 湾岸じゃミサイルだって・・・・・」
「宇宙ロケットはユダヤ系ドイツ人が作ったし、ミサイルの電子機器は日本人が作った。
いい加減で適当なアメリカ人にそんなもん作れるわけねえだろが。お前らもっと働けよ」
「そうやって遊ぶ時間を削ってまで働くから日本とドイツは世界のガンって言われるんだよ。
他の国の生活を完全に破壊してしまうから。
ドイツと日本のせいでアメリカの自動車会社はボロボロだぞ?
一日8時間も働けば十分だった生活が、日本とドイツのせいで残業してまで働かないと喰っていけなくなってしまった。
少しは人生を楽しめドイツ野郎」
「遊んでばかりいないで少しは自分の能力を高めろ。
勤勉こそ汝が名誉なり」
「・・・・どっちもどっちよね」
「ところで二時間目は第二次世界大戦の話に入るのでしょうか?」
「いや、まだだ。なんせソ連のことを説明していない。
ドイツ国防軍の復活とソ連には重大な関係があるからな。
それにソ連の歴史は冷戦にまで直結しているから二時間目はまずそこを説明する必要がある、というわけで休憩だ」