☆日露コンテンツ ソフィア先生その9☆


 「約束された勝利の剣!エクスカリバー

 「天地乖離す開闢の星!エヌマリシュ

 「何をやってる何を」

 「何って、Fateごっこですよ」

 「フェ、Fateごっこ?」

 「そ、私がセイバーでリューシーが・・・」

 「何故かギルガメッシュです」

 「いいじゃない、最強クラスのサーヴァントなんだから」

 「二人でFateを演じるのは無理がないか?」

 「そうなのよ。だからアルクさ、士郎役をやってくれない?」

 「ば、ばかな、何で私が・・・」

 「……待てよ(士郎が私でルクスがセイバーならルクスとあんなことやこんなことやそんなことを……)」

 「(何考えてるのかしら?)じゃあ舞台はセイバールートの最終幕から」

 「(ちっ、最終幕からか)」

 「ヴォルフさんは言峰役をやってください」

 「俺がか?」

 「だって最終幕なんですから残りは言峰だけじゃないですか」

 「いや言峰ならあの黒さからしてもっと相応しいのがいるだろう。例えば大尉……」

 「その相応しいのとは誰のことだ?」

 「出たわね、偽アルクエイド」

 「誰が偽アルクエイドだ、偽セイバー

 「本家ではそういう設定になってますけど」

 「シャクティは黙ってて!

 「シャクティは黙ってろ!

 「(シャクティには『偽』はつかないのか…)」

 「うう、ひどいです。私を種ばっか蒔いている電波女と間違えるなんて……」

 「謝罪と賠償を要求します

 「結局いつものパターンか。というか何故Fate?」

 「今更作者が始めたから」

 「新作をか?」

 「今更、って言ったでしょ。stay nightのほうよ」

 「本当に今更だな」

 「じゃあ作者はなにも知らないキャラを旅順の寸劇に利用したのか?」

 「知識といえば本家にある人物解説くらいかしら」

 「な、なんて無茶苦茶」

 「無茶といえば6年前に買ったパソコン(OSは98)を未だに現役で使っているほうが無茶苦茶だと思うけどね」

 「そんなパソコンでFateを起動するほうも無茶苦茶だな」

 「OSがXPのノートがあるんですけど、これは共有で使っている物だから、流石にエ○ゲーをインストールするのはどうかと思うんですよ」

 「OSがXPじゃ同じよ・・・あんなOSでfate動かすなんて

 「ん?」

 「そもそも、あれって○ロゲーなのか?」

 「18禁のソフトをエロ○ーじゃないと主張するの?」

 「まぁ確かにそのようなシーンはあるが、あれだけでエ○ゲーというのはどうよ? というのが作者にFateを適正価格で売ってくれた先輩の言葉だ」

 「で、作者はどう思っているわけ?」

 「他の○ロゲーをやったことがないから判断のしようがない」

 「Fateの話はここまでにしろ!

 本編が進まんではないか!!

 「作者がFateにはまっていて(2005年末時点では一応全ルートクリア。タイガー道場は未コンプリート)更新する気がないから進めなくてもいいんじゃない?」

 「いきなりこのコンテンツを全否定してどうする」

 「せっかく作者がやる気になったんだから進めましょう」

 「まぁ私たちもたまには出番が欲しいしね。ところで予告では黒溝台会戦だったけど、どういう状況なわけ?」

 「少しは前の講義を復習しろ。満州では沙河を挟んで日露両軍が対陣しており、南では第三軍が旅順要塞を陥落させたのが明治38年の新年を迎えた状況だ」

 「あー、そうだったわね、思い出したわ〜じゃあ第三軍は満州へ北上するわけね〜」

 「そうだ。この乃木軍の北進はそのものズバリの章題で坂の上の雲に書かれているが、たいしたことはない。参謀長が変わったくらいだ」

 「伊地知幸介から代わったのか?」

 「旅順寸劇のエピローグで触れたとおり、伊地知から小泉正保少将に代わったが、第三軍が満州に着くや否やまた代わってしまった」

 「何故です?」

 「怪我したから」

 「へ? 怪我って?」

 「満州へ向かう列車内で、夜分尿意をもよおした小泉が外に用を足しに行くとたまたま列車が止まっていたのが鉄橋の上で、誤って小泉が川底へ転落し大怪我をしたのだ」

 「なんちゅうマヌケな・・・」

 「よく生きていたな」

 「坂の上の雲を読む限りでは確かによく生きていたとしか思えない。で、改めて第三軍の参謀長として赴任してきたのが遼陽会戦の弓張嶺夜襲で名をはせた松永正敏少将だ」

 「やっと参謀長に恵まれましたか」

 「着任早々病気で倒れたりしているがな。先の話だが奉天会戦後の第三軍参謀長が一戸兵衛少将だから後期では恵まれたといえる」

 「奉天会戦後って……意味ないじゃん」

 「松永にしろ一戸にしろ前線で戦うタイプに見えるから参謀長に向いているのかどうかは疑問だぞ」

 「日本軍の軍司令官4名で参謀の助けなしで戦ができるのは奥保鞏だけだと言われていたそうだ」

 「第三軍の参謀話はこのくらいにして、沙河で対陣中の日露両軍の動きを見ていくぞ」

 「日露両軍とも補給を待っていたのですよね」

 「そうだ。とはいえただ待っているのだけでは芸がない。

そこで日露両軍ともに思いついたのが後方攪乱だ」

 「何それ?」

 「騎兵の機動力を生かして敵の後方に廻って補給戦を断つことだ。今回の場合は輸送に使っている鉄道を爆破することが双方の狙いだった」

 「その騎兵部隊を率いたのが秋山好古か?」

 「ちょっと違う。秋山少将の部下に当たる永沼秀文中佐が騎兵176騎を率いて出発したのが『永沼挺身隊』と呼ばれる部隊で、鉄道爆破に向かった。出撃したのは明治38年1月8日だ」

 「一方ロシア軍はミシチェンコ中将率いる騎兵1万騎が日本軍の補給拠点を目指して出撃した。1月9日のことだ」

 「で、結果はどうだったわけ?」

 「手違いで爆破部隊に爆薬が届かなかったなど、ロシア側の結果は芳しくない。8日間の行程を経て退却した」

 「あらら」

 「対して日本側の活躍は凄かった。永沼挺身隊に続いて挺身隊が数隊出撃したが、大きな成果を収めている」

 「騎兵の本来の役目は偵察と奇襲にあるのだから、むやみに兵力が大きくても仕方がないというのが秋山好古の考えだ」

 「具体的な戦果はどんなものがあったのだ?」

 「臨機応変に動いて鉄道の爆破に成功したことなどはあげられるが、神出鬼没に動いた結果、数万に及ぶミシチェンコ騎兵団を後方に釘付けして奉天会戦時に遊兵にさせたことが一番大きい戦果だと作者は思っている」

 「満州北部でミシチェンコが日本軍と戦ったときの話だが、日本軍の勇敢さに感心したミシチェンコはそこに墓碑を立てさせた」

 「騎士道と武士道みたいな話だな」

 「ところがこの墓碑が後の講和会議でロシアにとって不利になる

 「どういうことです??」

 「講和会議の内容は本コンテンツの最終幕(予定)なので詳しくは省くが、墓碑が『日本軍がそこまで進出した証拠』となり、長春以南の満州鉄道を譲り受けられたのだ」

 「皮肉な話だ」

 「ところで、ミシチェンコ兵団はなんでまたそんな少数部隊に引き摺られたのかしら」

 「クロパトキンがびびったから」

 「またかよ」

 「今回はクロパトキンにも同情すべき点がある。ペテルブルクからクロパトキンに宛てられた情報では永沼挺身隊を1万の部隊としていたからな」

 「ペテルブルクもパニック状況ですか」

 「所詮、後方で得られる情報だからな」

 「なるほど」

 「その情報あたりから本時限のメインテーマ、黒溝台会戦について見ていこう」

 「日本軍はこの時期ロシア軍に何らかの動きがあることを掴んではいた。イギリスにいる武官から及び最前線の秋山好古騎兵団の偵察によるものだ」

 「当時の日本軍は諜報活動もしっかりとやっていたのね」

 「ところが肝心の満州軍総司令部直属の情報機関はロシア軍の動きをつかめなかった」

 「そのことを理由にいくら秋山好古が『敵襲の気配あり』と伝えても総司令部は全く動こうとしなかったのだ」

 「やっぱ日本陸軍ですね」

 「情報軽視という意味では昭和期の日本軍は陸海軍ともども似たり寄ったりだと思うぞ」

 「昭和の話は措いて、何故満州軍総司令部がそのような判断をしたかというとだな……」

 「なんで?」

 「満州は寒いから

 「(゚Д゚ )ハァ?

 「だから、満州は寒いから

 「何よそれ・・・」

 「冬の満州の寒さは凄いらしい。作者は行ったことがないのでわからんが、立ちションをすればあっという間に凍り、地面は凍りついて1日がかりでも数センチしか掘れず、携帯用の握り飯も凍り付いて食べられないという」

 「立ちションをすればあっという間に凍るというのは想像がつかんな」

 「行軍中に小用をもよおしても用を足す時間がないからズボンの中に垂れ流して、結果それが凍って下半身が冷え、またもよおすという悪循環もあったそうだ」

 「東部戦線とどっこいどっこいなのでしょうか」

 「寒いのはわかったけどなんでそれが理由になるのよ」

 「総司令部の松川敏胤が『こんな寒い豪雪の中でロシア軍が動くはずがない』と主張し、児玉閣下もそれに同意したのだ」

 「ナポレオンが冬将軍のせいでロシア遠征に失敗したのに!?」

 「こんな結論を出したのは総司令部が疲労しきって全く冴えがなくなったというのが理由の一つに坂の上の雲ではあげられている」

 「『こっちが眠ければ相手も眠い。だから攻めてこないだろう』で見張りすら立てずに奇襲を喰らったイタ公と同レベルですね」

 「それに近いものがあるわね…」

 「コホン。同時期のロシア軍の動きを見ていこう」

 「ごまかしたな…」

 「沙河会戦終了後のロシア宮廷では退却を続けるクロパトキンに業を煮やして解任論も出た」

 「旅順で苦戦を続けていた乃木と同じですね」

 「しかし戦争中に司令官の首をすげ替えるのはやはりよろしくない。そこで出たのが満州軍を二つに分けてしまおうという案だ」

 「どういうこと?」

 「日露両軍とも満州軍司令部の下にいくつかの軍という単位があるわけだが、ロシアの満州軍はクロパトキンに権力が集まりすぎてその下の軍団長は、日本でいうところの軍の一つ下にあたる師団長ぐらいの権力しか与えられていなかったのだ」

 「これはクロパトキンに負担が大きすぎるというわけで満州軍を第一軍と第二軍に分け、第一軍の司令官をクロパトキンにやらせようということになったのだ」

 「第二軍は?」

 「ロシア本国よりグリッペンベルグ大将が赴任する予定だった」

 「予定?」

 「クロパトキンが本国政府に工作した(といわれている)結果、満州軍を第一〜三の三軍に分け、第一軍司令官にリネウィッチ大将、第二軍司令官にグリッペンベルグ大将、第三軍司令官にカウリバルス大将がつくこととなった。クロパトキンはその上の極東陸海軍総督という地位につくことになった」

 「当初の予定と違いますね。グリッペンベルグは不満ではなかったのでしょうか?」

 「勿論不満だ。クロパトキンは『クロパトキンは日本軍に勝とうとせず、本国政府に勝とうとしている』と言われた。クロパトキンとグリッペンベルグの足の引っ張り合いは既に始まっていたといえるな」

 「旅順のステッセルVSスミルノフと似たようなものね」

 「旅順陥落の報が満州に届き、グリッペンベルグは乃木軍が北上する前に満州軍を叩こうと主張する」

 「対してクロパトキンは沙河での損害が回復していない、本国から兵が集まるまで待つべきと主張する」

 「いつも通りだな」

 「論争の結果、クロパトキンが「まず第二軍が動いて日本軍の左翼を攻撃せよ。成功すれば私が中央を突破する」ということになった」

 「中途半端ですねぇ。兵力の逐次投入は戦術上最も忌むべきものですよ」

 「とはいえグリッペンベルグ率いる第二軍は10万という大軍だ。前述のミシチェンコ騎兵団による偵察の結果、日本軍最左翼の黒溝台にいる秋山旅団が弱点とわかり、グリッペンベルグは攻撃を開始する。本格的な総攻撃開始は明治38年1月25日のことだ」

 「対して日本軍の最前線で最弱点ともいえる秋山旅団はわずか8000人に過ぎない」

 「10万対8000か。普通に考えれば戦争にならんぞ」

 「総司令部も秋山に援軍を送ったが、未だ威力偵察と考えていたので第八師団という一個師団を増援に出したに過ぎない」

 「一個師団は人数でいうと1〜2万ぐらいでしたよね」

 「そんなんじゃ援軍として足りないし、それ以前に秋山旅団が持つかどうか」

 「それを説明する前に秋山好古というより秋山兄弟の簡単なエピソードを紹介しておこうか」

 「……」

 「ティルさん!! アンタ何しに!?」

 「作者がこのDVD持っていって流してくれと言ったんや」

 「D・V・D!D・V・D!

 「なによそれ・・・・」

 「おや?知らないんですか?『D・V・D!D・V・D!』というとお姉ちゃんはみんな脱いでくれるんですよ」

 「何のネタよそれは・・・」

 「詳しくは、こちら参照とのことですが、よい子のみんなは見てはいけません

 「おいおい、この原作時代にDVDなんてないぞ・・・」

 「細かいことは……まぁいつものことや」

 「いつものことというとまたなんか悪い予感が……」

 「悪い予感がしてきたのう」

 「……」

 

キャスト
秋山好古、ソフィア・パンタブルグ
秋山真之、ヴォルフ・フォン・シュナイダー
ナレーション、ティル・パンタブルグ

 

 「貧乏士族の家に生まれた秋山兄弟、好古は5人兄弟の三男、真之は五男やった。ところがあまりの貧乏さに両親は真之が生まれたら寺にやってしまおうかと相談しとる」

 「あとで出生のエピソードを知った真之は」

 「と、考えるようになったそうや。さて、教師を経て陸軍士官学校に合格し、みごと陸軍軍人となった好古は」

 「ところがやな……」

 「好古は座って半畳寝て一畳の生活を地で行っていたんやな。おまけに中尉の給料は少ないんや」

 「秋山好古の弟に対する厳しさというとやな……」

 

ある冬の日

 

 

またある冬の日。大雪。  

 

横浜にて  

 

好古の下宿に帰宅して

 

 

また別の日。真之、新聞を読む

 

 「このとき取り上げた新聞が○日かどうかはわからん。少ない給料で真之の教育費を払っている好古にとって贅沢は敵ということや。だがな……」

 「ただし、日清戦争で前線指揮官だった好古が退却すべき時に退かず、結果オーライだったものの、その状況からして好古は酔っ払っていたのではないかと言われたことはあるな。戦場でも酒を手放さなかったんや」

 

数年後

 

 「以降、兄は陸軍で、弟は海軍で頭角を現すというわけや」

 

 

 「何だこれは?」

 「見ての通りやけど」

 「というか、なんで好古が『姐さん』なのよ!?」

 「ソフィアさんがやったからじゃないのか」

 「何言ってるんですか、秋山好古は『姐さん』でいいんですよ」

 「ハァ?」

 「だって・・・これでしょ?

 「面白いけどね〜それ違うわよ・・・」

 「まぁ秋山兄弟に関して詳しく知りたければ坂の上の雲を読むのが手っ取り早い。ほなウチは失礼するで」

 「……」

 「む、ソフィアさん。『二度と来るな』という顔をしてますね」

 「……講義に戻る」

 「またごまかしたな」

 「さて・・・黒溝台を守る秋山旅団だが、さらにくわしく分けると、李大人屯にある秋山支隊司令部、韓山台にある三岳於菟勝中佐指揮の三岳支隊、沈旦堡にある豊辺新作大佐指揮の豊辺支隊、黒溝台にある種田錠太郎大佐指揮の種田支隊となる。詳しい地図はこちらを見てくれ」

 「ロシア第二軍は沈旦堡を目標として猛攻をかけてきた。対して豊辺大佐は、

と言っていた。豊辺は秋山好古が最も信頼していた部下の一人だ」

 「ロシア第二軍は10万だったわよね。それって…」

 「師団で勘定すると10個師団だな」

 「絶望的な数字ね」

 「無論沈旦堡にだけロシア軍が襲来したわけではない。とはいえ沈旦堡を抜かれると一気にロシア軍が進攻し、日本軍が壊滅すること間違いなしだ」

 「そのような状況で日本軍待望の第八師団が到着する」

 「焼け石に水じゃないのか」

 「第八師団参謀長の由比光衛大佐がまたなんとも拙い策を練りだした」

 「何です?」

 「種田支隊に『黒溝台から退却せよ』と指令を出したのだ」

 「なんでまたそんなことを」

 「由比参謀長は『ロシアが黒溝台を落とせば、さらに進攻する。その隙を衝いて黒溝台を取り返そう』と考えたのだ」

 「手が込み過ぎですね」

 「ちょっと待ってよ。種田支隊は秋山好古の指揮下にあるんでしょ。それを第八師団命令で動かすのは変じゃない?」

 「無論だ。だから満州軍総司令部の命令で動かした。直属上司である秋山の知らない間にだ」

 「総司令部はおかしくなってるな」

 「以降の展開を見ればこんなものはまだ序の口だ。秋山は無論『こんなことではいかんのだ』とずっと激怒していたらしい」

 「由比参謀長のもくろみは成功したのですか?」

 「するわけがない。以前の講義でも触れたようにロシア軍は守り気質が強い。占領した黒溝台を早速陣地化した」

 「あらら・・・

 「目論見が外れた第八師団は黒溝台を奪い返すために展開を始めたが、それが終わった時にはロシア軍が四方八方から襲い掛かってきた。おかげで黒溝台を奪い返すどころか自身が窮地に陥ってしまった」

 「黒溝台を旅順に置き換えると由比参謀長は間違いなく伊地知さんの扱いをされそうですね」

 「もっとも由比参謀長はロシア軍がこれほどまでの大軍だとは知らされていない。思わず電話で総司令部に

と、噛み付いたくらいだ」

 「完全に満州軍総司令部はとち狂っているというわけか」

 「そのときの満州軍司令部にこんなエピソードがある。ロシア軍の大攻勢に意表を衝かれて参謀はあたふた、松川作戦主任は大声をあげ、児玉総参謀長は作戦室をせかせか歩いて参謀を怒鳴りつけている」

 「パニックなのがわかりますね」

 「そこへのっそりと大山総司令官が寝起き姿で現れ、こう言った。

 児玉総参謀長は唖然とし、若い参謀連中は吹き出すのをこらえた。まもなくだれからともなく笑い出し、児玉総参謀長が、

と落ち着きを取り戻して答えた。大山総司令官は

と笑いもせずにいうとまた自室へ戻った。総司令官が普段通りに登場したから総司令部の空気が収まったという話だ」

 「後に回想した人間が口を揃えて『黒溝台のときの大山さんが印象に残っている』と言ったという」

 「総司令部が落ち着きを取り戻したのはいいが、前線の状況はどうなのだ?」

 「第八師団は相変わらず苦戦を続けているので第二軍から木越安綱中将率いる第五師団を増援に出した。また兵力の逐次投入だがあまり中央を手薄にすると今度はこっちが危ない」

 「第八師団の反応は?」

 「そこで第八師団長の立見尚文中将の登場だ。立見閣下は戊辰戦争の生き残りで桑名藩士。幕府側の名指揮官として知られた」

 「幕府側は戊辰戦争で負けているじゃない」

 「ところが立見閣下率いる軍だけは官軍を度々敗走させている。山県有朋も危うく命を落としかけた。陸軍で怖い物なしの山県だが、閣下だけには頭が上がらず、生涯避け続けていたらしい」

 「旅順の講義で少し触れたが、第八師団は総予備であり、言ってみれば日本軍のジョーカーみたいな物だ。黒溝台の苦戦に援軍として派遣されたのも当然だな」

 「でも肝心の第八師団が苦戦に追い込まれて援軍を必要とする状態じゃない」

 「ところがだ。援軍の知らせを受けた立見閣下は激怒した」

 「何故です?」

 「『(援軍を派遣されるなど)これほどの恥辱があるか!!』ということだ。知らせを聞いて部下に

 と激励をかけ地団駄をふみ、乗っていた足場を踏み破ってしまった。1月26日の夜の話だ」

 「坂の上の雲によると、司馬御大が取材した当時、東北では正しく軍神扱いだったそうだ」

 「立見個人が戦場に現れると戦況が変わるとまで言われていた」

 「特撮のヒーロー扱いね」

 「せめて三国志の関羽や張飛とは言えんのか」

 「アルクさんもエッチですね〜」

 「な、何を言ってるんだ君は・・・」

 「関羽と言ったらこの人じゃないですか」

SRDX 一騎当千 関羽雲長 限定色替えVer
 「そっちじゃない・・・」

 「一騎当千だっけ?エロい人しか知らないんじゃない?」

 「何を言ってますか!ググる神に聞いてみてください!通常の3倍この人が引っかかりますよ」

 「まあ、どちらにせよ、あまり変わらないわよ〜」

 「ぜんぜん違う!」

 「落ちつけ・・・遊ばれてるだけだ・・・」

 「それで戦況はどうなったのです?」

 「1月27日、第五師団が第八師団の掩護を開始したが、ロシア軍の兵力が増加したため、またも自師団が危なくなった」

 「ここにいたり総司令部も漸くロシアが大兵力を持って西側を突破しようとしているという意図に気づき、第一軍所属の第二師団、翌28日には第二軍所属の第三師団を黒溝台に派遣した」

 「兵力の逐次投入には変わらないがな」

 「ダメじゃない」

 「しかも大雪の中の行軍だから大変だ。次々と落伍者が出る。第二師団第四連隊副官多門二郎大尉が指摘する落伍者の増加の理由は

 特に多門大尉は飲食不足を指摘し、

 また第五師団では他の理由として飲酒が付け加えられていた。第五師団は飲酒の最中に出動命令を受け、飲酒の後にある食事をせずに出撃したため余計拙かった」

 「悲惨ね」

 「これらの軍を全て立見閣下の麾下におき『臨時立見軍』を編成する案も出たが、立見閣下と各師団の間に連絡用の電話も引けず、第八師団自身が周囲の敵と戦うのが手一杯なため、『臨時立見軍』の編成は名称だけに終わった」

 「一方ロシア軍も沈旦堡を占領したと思ったら別の場所だったなどの不手際があった。しかし兵力で勝っているため、優勢であることには変わらない」

 「業を煮やした立見閣下は29日未明、師団ぐるみで黒溝台に夜襲をかけた。師団ぐるみの夜襲は遼陽での弓張嶺という前例があるが、こんな大雪のなかでは行なわれたことがない」

 「どうなったのだ」

 「午前5時半頃、ロシア軍は退却をはじめ、事実上黒溝台会戦は集結した。日本軍は参加兵力53800人で死傷者が9324人、ロシア軍は参加兵力105100人で死傷者が11743人だ。なんとか日本が守りきった

 「ふーん・・・けっきょく夜襲がうまくいったから守りきれたってわけ?」

 「それだけではない。例えば秋山旅団に配備されていた機関銃の影響力は大きい。兵力に圧倒的差があったにもかかわらず秋山旅団が守りきれたのはこの新兵器のおかげといっても過言ではない」

 「他にも何かありそうですね」

 「まぁいつもの通りだが、クロパトキンがグリッペンベルグに退却命令を出したというのがある」

 「なんでまた」

 「日本軍の陽動作戦に引っ掛かったから」

 「一体どんな」

 「日本軍が秋山旅団を助けるために他から兵力を引き抜いたのは前述のとおりだ。とはいえ他が薄くなったのがばれればそちらから一気に攻撃されてオシマイだ。よって総司令部は中央でロシア軍にちょっかいをかけた」

 「それをいつもの如くクロパトキンが過剰に恐れたというわけですね」

 「そういうことだ」

 「グリッペンベルグは怒るでしょうね」

 「当たり前だ。部下の前でクロパトキンを

 と罵倒し、作戦終了後辞表をたたきつけてペテルブルグに帰り、クロパトキンの悪口を吹聴した」

 「ロシアもダメねぇ」

 「クロパトキンは当初から自身が考えていた『ハルピンまで日本軍をひきつけ消耗させ、そこで一気に壊滅させる』という案をずっと生かそうとしていたようだな」

 「それが実現すれば日本軍にとって一大事ですね」

 「だから次の会戦で一気にけりをつける必要が出てきた。それが奉天攻略だ」

 「次は奉天会戦か」

 「戦闘講義の次回という意味ではそうなるな。明石工作やバルチック艦隊など戦闘以外での講義が溜まりすぎて作者がパニックに陥っている」

 「いつもの事ですね」

 「また時間が空きそうね」

 「期待しないで待ってくれ」

 「思いっきり期待してるわ〜」

 「ではまたおあいしましょう」

次回へ続く

 


おまけ:

 「黒溝台の後日談を紹介しよう。

奉天会戦直後の話だ。秋山好古と松川敏胤が馬を並べている最中」

 「いずれにせよ、黒溝台会戦は日本軍にとって最大のピンチだった。それをなんとか凌いだからこそ、大山巌いわく「日露戦争の関ヶ原」の奉天会戦につながることになったといえるな。この講座では全く描写が足りないが、立見尚文と秋山好古の戦ぶりは尋常じゃない。興味ある方はより深く書いてある書籍を参照してくれ」

 「最後まで投げやりだな」


戻る
アクセス解析