☆日露コンテンツ ソフィア先生の日露戦争その6−4☆


 

 

 

 「この日ほど残虐なる憎しみの戦闘行なわれたることは稀なり。銃を投じたる者を容赦なく射殺し、瀕死の重傷者に止めを刺し、銃なき者は血みどろの手を以て互いに咽喉を締め合い、凄惨見るに堪えず――」二〇三高地指揮官トレチャコフ大佐の手記
(伊藤正徳著「軍閥興亡史」第1巻第十章 旅順要塞の死闘より引用)

 

 

 

 「勝負をかけた白襷隊も不発に終わって、いよいよ二〇三高地に重点を移したわけだよね。今度こそ攻略が成功するかな」

 「まず白襷隊を撃破したロシア軍の動きからみていこうか」

 

 

11月27日

 

 

コンドラチェンコ 「一体、乃木は何を考えてあんな無謀な突撃をかけたのでしょうか?」

ナウメンコ 「発狂でもしたのでは?」

 「食事抜きの時の貴方みたいに」

 「何か言いましたか?

 「何も」

 「乃木も流石に更迭だろうな」

トレチャコフ 「そして二〇三高地ヴイソーカヤが戦場になるというわけね」

 「ヴイソーカヤに一戸イチノヘが現れたら苦戦間違いなしだな」

 「イチノヘですか……包囲している日本軍の中で最良の将軍ですね。日本人ヤポンスキーはそういった人事異動をしないものですが」

 「そうであって欲しいわね」

 

突如砲声

 

 「何です!?

 「日本軍の攻撃だ」

トレチャコフ 「ついに来たわね。閣下、増援の手配をお願いするわ」

 「わかりました。防戦をお願いしますよ」

 「任せて」

 「KILL JAP! KILL JAP!! KILL MORE JAP!!!

 「ロシア語じゃなくて英語じゃないか。大体それは約40年後にブル・ハルゼーが言ったセリフのまんまパクリだぞ」

 「ハルゼーがパクったニダ」

 「リューシーさんコリアンネタはいいから。坂の上の雲によると…」

トレチャコフ 「日本兵を人形だと思え。その証拠に同じ動作を繰り返して殺されに来ている」

 「前線指揮官ってみんなこんな感じか」

 「でも日本軍の指揮官に、この手のセリフってないわよね」

 「『鬼畜米英』ならあるけど、これ言い出したの前線指揮官か?」

 「作者の乏しい知識では不明」

 「日本軍は武士道があるからこの手のセリフがないってことで」

 「そんなので良いのかな?」

 

 

 

 「27日に二〇三高地攻撃を開始したわけだけど、ロシア軍もそれを読んでいたみたいだね」

 「要塞司令官のスミルノフは、

 と述懐しとったそうやから、二〇三高地が急所だったというのは把握しとったわけやな」

 「日本軍の攻撃は巧くいったわけ?」

 「少なくとも27日、28日の攻撃は巧くいかんかった。第一師団が担当したんやが、やっぱり兵力の小出しやったからな」

 「どうするの」

 「いよいよ虎の子の第七師団が前線に立つことになるで」

 

 

 

11月29日

 

 

 

乃木 「第一師団から『現状の兵力では攻撃不可』と連絡があったが、どうする」

津野田 「もうこうなったら第七師団全部を投入するしかないんじゃない? 理由として、

 が挙げられるわ」

 「松村と大迫にそのように伝えろ。両師団の指揮は大迫に執らせろ」

大庭 「わかりました」

 

大迫 「統一指揮を執るのは良いが、我が第七師団は地理不案内である。まずは偵察隊を派遣する」

松村 「総攻撃開始はいつにする。砲撃をしても敵の復旧は迅速ですぐに反撃が来る」

 「どのくらい事前砲撃を行なえば敵の堡塁を1日使用不能にできるだろうか」

松村 「4時間打ち込めば少なくとも翌日1日は黙らせることができそうだ」

 「よし、総攻撃開始は11月30日午前10時だ」

 「松村さん、我々が死ねば何とか二〇三高地は奪れるだろう」

 

 

 

ロシア軍

 

 

 

ステッセル 「西北地区司令官のイルマン大佐から『ヴィソーカヤが占領された』という報告が入ってきましたが」

スミルノフ 「でたらめよ。彼の地区からだとヴィソーカヤ全般は見えないはずだわ」

 「仮にも地区司令官がそんな誤報をしますか?」

フォーク 「そうね。ヴィソーカヤを奪回するための出血は避けた方が良いわ。戦線を縮小して旅順口防衛の強化を図るべきよ」

 「日本兵は明朝にも市内へなだれ込みかねません。市街が虐殺の場となることは避けなければなりません」

 「イルマンの報告より後にトレチャコフから伝令があったわ。

 とね」

 「わかりました。しかし援軍は派遣できません」

 「いずれにせよ明朝(30日)にはヴィソーカヤ安泰を報告できる確信があるわね」

スミルノフ退室

 「あのヘタレどもにはああ言っとかないとすぐ放棄しちゃいそうだからね」

 

コンドラチェンコ 「どちらも消耗戦です。こちらの難点は予備兵力が尽きてきたことです」

 「空想具現化でどうにかならない?」

 「そんな追加パッチはありません」

 「冗談よ。病院にいる連中から治りかけた者を退院させるわ。病院には15000の兵がいるから20%でも3000人は集まる」

コンドラチェンコ 「ベッドで日本軍の銃剣にかかるよりはマシでしょう」

 「まずは志願を募るわ」

 「そうですね。ただ、チフス患者は避けませんと」

ナウメンコ 「敵を倒す前に味方を倒してしまう」

 「閣下、チフスの流行も重大ですが、壊血病も流行っています」

 「冬になったから、露地で野菜を栽培も出来ないしね…来年の1月下旬乃至2月上旬までに援軍がきてくれないとお終いよ」

 「その前に日本軍の砲弾で吹っ飛ばされなければ、ですか」

 「そのほうが苦痛から解放されるって喜ぶ連中が500や1000じゃきかないだろう」

 「残念な話ね」

 「閣下は壊血病は大丈夫なのですか?」

 「私は真祖だもの。貴方は?」

 「私は聖剣の鞘があれば大丈夫です」

 「と、とにかく、確かに壊血病の流行は重大です」

スミルノフ 「いざとなったら軍馬を食用の生肉として出すわよ。これで少しはマシだわ」

コンドラチェンコ 「ステッセルが認めますかね……」

 「アイツはカレーさえあればどうにでもなる特異体質だから」

 「そのカレー粉も、戦場の臭気を消すために不足気味だなぁ」

 「カレー粉が不足した事実があったのですか?」

 「ないよ」

 「おいおい」

コンドラチェンコ 「冗談はさておき、次にヴィソーカヤを攻撃されたらどうします?」

スミルノフ 「何もないわよ。ただ全力を尽くすだけだわ」

 

 

 

 「いよいよ両軍切羽詰まってきたね」

 「ロシア軍は大豆からもやしを生やす栽培法を知らんかった。これさえ知っていれば壊血病が防げて、旅順の戦況も違ってきたかも知れん。もっとも切羽詰まってきたのは旅順の両軍だけやないで、満州軍もや」

 「どうして?」

 「満州軍に第七師団全力投入の攻撃安が届いたわけや。これが失敗して第七師団も壊滅すると日露戦争そのものが不可能になるわけや」

 「満州戦線でも第三軍を使わなければならないから?」

 「そうや。満州でも兵力が不足してるのに旅順で兵を消耗するのはどう考えても勘定が合わん。満州軍総参謀長の児玉も当然そう考えとる。いよいよ児玉が動き出すわけやな」

 

 

 

児玉 「もうこのまま第三軍を放置できない。私が旅順へ行く」

松川 「沙河のときをお忘れですか。総参謀長を司令部が離れるのは非常に拙いです。前回だって督戦に行っても全く無意味だったではありませんか。第三軍に不満がおありなら大庭でも呼びつけたらどうです」

 「今回は督戦に行くのではない」

 「何しに行くのですか」

 「乃木の代わりに第三軍を指揮しに行くのだ」

 「( ゚Д゚)ポカーン

 「何を寝ぼけたこと言ってるんですか。総参謀長は如何に大将とはいえ幕僚の一人に過ぎないのですよ。乃木閣下は天皇陛下から第三軍の統帥権を任されているのです。それは奪うというのを軍隊秩序の崩壊になります」

 「軍隊秩序を守って第三軍が壊滅したらどうする

 「どうしても行くのですか」

 「どうしてもだ」

 「しかたありません。どうしても行くのなら、第三軍のメンツもあるでしょうから、大山総司令官の命令書を受け取ってからにして下さい」

 

 

 

 「どういうこと?」

 「軍隊の命令は指揮官が行なうものや」

 「当たり前だね」

 「この時の児玉は『満州軍総参謀長』という肩書や。いくら長とはいえ幕僚の一人であって指揮官ではないんや。軍司令官の指揮権を奪う権利はないということや」

 「児玉さんが旅順へ行って指揮しても第三軍はそれを聞かなくていいということ?」

 「そうや。松川が言った大山総司令官の命令書というのは、

 といった具合のもので、これなら児玉は大山の代わりやな。大山は満州軍総司令官やから第三軍司令官を命令できる立場にあるというわけや」

 「わかったようなわからないような」

 「かまへんかまへん、ほな続きいくで」

 

 

 

大山 「旅順へ行くか」

児玉 「は」

 「それは構わんが、君の指導下で行なわれた今までの攻撃の責任をどうする」

 「……」

 「私も、責任を感じている」

 「今回の攻撃を失敗したら死をも覚悟しております」

 「ならば、よい。これを持って行ってくれ」

 「児玉源太郎、行きます

 

 

 

列車車内

 

 

 

 「また止まったようだな」

田中 「寒さの為にレールが凍って車輪が空回りするようであります」

 「……」(思い切り不機嫌)

 

 

 

11月30日午前10時

 

 

 

大迫 「総攻撃開始

砲弾が飛び交う

 「苦戦しているな」

友安治延後備第一旅団長
 「敵は味方撃ちを度外視して砲弾を叩き込んできます」

 「肉弾突撃は日没まで待つしかないか・・・」

 

 

 

第三軍司令部

 

 

 

乃木 「活発な砲撃戦をどうみる?」

伊地知 「我が兵力と同様に敵兵力も損耗しています。これは決戦になると思われますのでこちらの望む所であると思います」

津野田 「あら?総司令部から電報が・・・」

大庭 「児玉総参謀長を貴軍に差遣する。12月1日朝到着の予定。とあります」

 「何しに来るのでしょうか」

 「今度は大山元帥から軍司令官閣下への訓令電です」

 「何だ?」

大庭 「趣旨はこの通りですね」

 「今更指導とは何事でしょうね…」

 

 

 「やっぱり第三軍司令部にしてみれば不満のようだね」

 「第三軍戦時日誌にはな、

 とある」

 「文語は苦手なんだけど」

 「従来の総司令部の作戦指導に対する不満と、現在の戦況に対する自信を暗示する記述や」

 「でも前線の大迫さんは苦戦模様とみているじゃない」

 「大迫が判断したとおり、現実の戦況は日本軍が立ち往生して日没を待っている状況なんやが・・・第三軍司令部は砲声を味方の活気と見ていたんやな」

 「あららら」

 「この日の午後6時、日没を迎えて、第三軍司令部には『退却』『撃退』の報告がないから『今日は大丈夫だ』の判断をする」

 「実際はどうなの」

 「ほな続きや」

 

 

第三軍司令部

 

 

 

津野田 「午後8時33分か」

 

伝令〜  

 「何?」

 「乃木保典後備第一旅団長副官が戦死……」

 「ええっ!?

 「乃木閣下の御子息よね……」

 「閣下に報告するのは気が重いわ…」

乃木 「何だ?」

 「かくかくしかじかです」

 「それは知っている」

 「……よく死んでくれた」

 「前にどこかで報告があったのかしら……」

 

 

 「乃木さんの息子は二人いたんだけど、一人は金州で、一人は旅順で戦死しちゃったんだ」

 「そうや。兄の勝典中尉が戦死したとき、保典少尉を『戦死しないように』と乃木の周囲が気を使って後方勤務にしようとしたんやが、乃木が断固として突撃部隊の旅団長副官職につけたんや。友安の司令部の電話線が切れたために副官の保典が最前線に伝令に出ざるをえなかったんやな」

 「ついてないね」

 「保典は戦死したが、彼による伝令は伝わり、前線部隊は動いたで。そうしてついに午後10時、二〇三高地占領に成功したんや。無論すぐ大本営及び満州軍総司令部に電報を打った」

 「やったね」

 「ところがどっこい、すぐさまロシア軍の凄まじい反撃が始まったんや」

 

 

 

コンドラチェンコ 「ヴィソーカヤが占領されたですって? 戦争は呼吸と同じで吸う時もあれば吐く時もあります。慌てないで下さい。3時間後には奪い返してみせます。レイス参謀長、増援をお願いします」

レイス 「予備軍が少ないのですが、どうしましょうか」

 「重要度が低い堡塁を空家にしてこちらに回してください」

 「わかりました」

 「兵は日本軍の突撃を恐れています。恐れを取り除くためには常に先制攻撃あるのみです」

 「このように連隊長自ら剣を振るって先頭に立ちなさい。勇敢な行動あるのみです」

トレチャコフ 「了解」

 「兵を勇敢に戦わせるためには勲章を与える必要があります。この戦局に限って私にその権限を委譲してください」

ステッセル 「止むを得ませんね。ただし下士官と兵にだけですよ」

 「わかっています。将校に対する勲章親授権は皇帝陛下にしかありませんから」

 

 

 

 「コンドラチェンコが反撃に移った結果、二〇三高地は、

 の状況になったんや」

 「それって占領したとは言えないんじゃ……」

 「ま、そういうこっちゃ」

 

 

 

12月1日午前2時

 

 

 

乃木 「二〇三高地占領が未完成なのは残念だ。貴方に躊躇の気持ちがあるなら私が陣頭に立つ」

大迫 「私も男だ。少し猶予をくれ。必ず落す」

 「わかった」

 「大島君か、乃木だ。私が自ら陣頭に立って最後の突撃をする。一戸の麾下に歩兵二個大隊をつけて午前6時までに司令部まで送ってくれ」

大島第九師団師団長
 「閣下自身が出撃する段階でもなくその必要もない。二〇三高地、いや旅順は必ず落すから安堵されたい。二個大隊派遣は可能だが、少し様子を見てからにしてはいかがか」

 「わかった」

 「津野田、少し休む」

 

乃木、自室へ

 

津野田 「両師団長の言葉を聞いて少し足取りが軽くなったようね。私も眠くなってきたわ」

 

 

午前3時、金州駅

 

 

従卒 「田中少佐殿、二〇三高地が落ちました」

田中 「本当か?」

従卒 「金州駅に総司令部からの電話がありました」

 「閣下」

児玉 「聞いた。落ちたそうだな」

 「はい、落ちたそうであります」

 「祝杯をあげるか」

 「すぐに洋食を用意させます」

 「皆にシャンペンを振舞え」

 「列車の食堂では洋食は無理なようであります」

 「そりゃそうだろう。とりあえず大連に向かおう」

 「大連にて洋食の用意をさせておきます」

児玉、また眠る

 

 「当時の洋食というのはカツレツのことや」

 

 

 

午前6時、大連

 

 

 

従卒 「閣下、洋食が出来ました」

 「もう5分寝かせてくれ」

きっちり5分後に児玉は起きて食堂へ

田中 「朝食の前に第三軍司令部へ祝いの電話を入れてきます」

 「早くしろ、待ってるぞ」

戻ってきた田中の顔色が変わっている

 「どうかしたか?」

 「二〇三高地は今日未明、敵に奪還されたそうであります」

 「なにぃ!?

 

電話の内容

 

 「二〇三高地の占領、おめでとう」

大庭 「いや、めでたくない。逆襲を受け、奪還された」

 「それは不覚だ。今までも逆襲を受けて奪還された拠点があるじゃないか」

 

 

 

 「……」

 「………」

 「…………」

 「(拙い。爆発の前兆だ)」

 「第 三 軍 の 馬 鹿 野 郎 が !!!!」

 「(ほらきた)」

 「田中、洋食なんぞ食っている場合か、貴様が食いたければ食え。元来、朝から洋食を食う馬鹿があるかっ! 飯(茶漬け)をくれっ!

 「(食事に八つ当たりしないで下さいよ。しょうがない、閣下の腹具合が悪いという理由で飯を作ってもらうか)」

 

児玉、茶漬けをかきこむ。電話の内容を詳しく説明する田中。

 

 「そんな馬鹿なことがあるかっ! そんな状況を占領と報告する馬鹿がいるか!! 司令部が前線を知らない証拠だ。やはり私が行くしかない

 「(ずっとこの調子に付き合わされるんだなぁ)第三軍司令部は一種の悔やみ場となっており、閣下の到着を待っている状況のようであります」

 「まったく情けない」

 

午前11時30分。大庭参謀が迎えに来る

 

 「大庭、貴様達は何故奪った二〇三高地を奪還されるような馬鹿をやるのかっ。そんな馬鹿な戦があるか!!」

大庭 「戦ですから奪ることもあれば奪り返されることもあります。しかし目的は必ず達成します」

 「当たり前だ」

 

途中、戦死者を祀る墓標が並ぶ

 

 「田中、見ろ」

 「(なんだろう)」

 「ここは補充兵が通る場所だ。そんな場所に墓標を並べる馬鹿なことをする奴があるか。補充兵はこれを見て戦わずして士気を失うに違いない」

 「なるほど(メモメモ)」

 

 

 

第三軍司令部到着

 

 

 

 「乃木はいるか」

津野田 「前線視察に向かい留守であります」

 「伊地知はいるだろう」

 

伊地知、自室で横臥

 

 「伊地知、どうした?」

 「持病の火病神経痛が」

 「そういうことではない。戦況についてだ。何をぐずぐずしている。二〇三高地さえまだ攻略できんとは過怠の至りではないか!

 

 

 「以下火病モードやで」

 

 「無能」

伊地知 「……」

 「卑怯」

 「……」

 「臆病」

 「………」

 「頑固」

 「………」

 「鈍感」

 「…………」

 「無策」

 「…………」

 「旅順の戦況を第三軍司令部のみの責任にするとは閣下の卑怯ニダ! まず大本営が悪いニダ! 同時に、閣下、貴方の責任でもあるニダ!

 「貴様、悩乱したか。帝国がこの方面の戦争の責任を乃木とお前に負わせたのだ。お前は参謀長ではないか」

 「ウリはそんなこと事言ってないニダ。例えば閣下、閣下は私が要請した砲弾量を満足にくれたことがあるニダか? この砲弾不足でどう戦えというニダ!?

 「砲弾不足は日本軍全体の問題だ。少ない砲弾を満州と旅順で何とか配分しているが、半分も賄えない。伊地知、日本は旅順だけで戦っているのではないのだ」

 「閣下の責任を聞いているニダ」

 「貴様は女か」

 「そうですよ。ってそんな田○○子が怒りそうなセリフ言って大丈夫ですか?」

 「急に素に戻るな。坂の上の雲に書いてあるのだからしょうがない『貴様は女か=自己中心的な視野しか持てない』という意味とある」

 「現在なら間違いなく袋叩きにあいそうなセリフですね」

 「そうだな・・・さて」

児玉 「参謀長でありながら責任を転嫁するのならば、いっそのことステッセルの所に行って責任を転嫁したらどうだ?

 と」

伊地知 「何下らないこと言ってるニダ。この状況を何とかしたいなら砲弾を下さいニダ」

 「砲弾が欲しいのはどの軍も同じだ。与えられた情況で最善を尽くすのが仕事だろうが」

 「最善を尽くしているニダ」

 「……(ダメだコイツは)」

 

 

 

 「このやり取りホントなの?」

 「筆者が坂の上の雲を改悪したものやからな」

 「改悪、て」

 「児玉が第三軍司令部の空気を変えるために一喝したというのならありそうな話やな」

 「参謀長をここまで罵倒したことはないということ?」

 「児玉がソフィアちゃんみたいに癇癪持ちならあっても不思議やないのやけど、実際はどうやろな」

 「ソフィアおばさんって癇癪持ちだったの?」

 「ここではそういう設定や」

 「原作を勝手に改竄して大丈夫?」

 「さぁ? 細かいことはケンチャナヨや、さて舞台は変わって児玉と乃木の会談や」

 

 

 

高崎山(日本軍の砲兵陣地)

 

 

 

児玉 「二〇三高地に砲弾を打ち込むのはここからだと遠すぎないか」

乃木 「伊地知はよくやっている」

 「どうにも伊地知のやり方をみていると重大な間違いがあると思う」

 「…」

 「そこで私は乃木の友人として伊地知に意見を述べたい」

 「うむ」

 「しかし伊地知が激昂して私の意見を受け入れなければ私が何しに旅順に来たかわからない」

 「その通りだ」

 「そこで、だ。貴官の司令官としての指揮権を一時貸してくれ。そのために一筆書いてくれ」

 「よかろう」

 「(これであの命令書を出さずに済んだ)では司令部に戻るか。田中、貴様は第一師団と第七師団の司令部を見て来い」

 

 

 「このやり取りも坂の上の雲から?」

 「そうや。児島襄の日露戦争によると諸説あって、

とか

 など言われとる。田中国重は

 と簡略に陳述したそうや。一刀両断の通告だったのか、情理を尽くした説得だったのか、以心伝心だったのか、詳細はわからん」

 「当人同士にしかわからないということか。ところで大山巌の命令書は極秘のはずなのに、どうして存在が知られたのかな?」

 「どうしてやろな、公刊戦史にもないらしいで」

 「らしい、て。いい加減公刊戦史ぐらい読みなよ」

 「それは筆者にゆうてくれ。さて、いよいよ児玉が第三軍を動かすで」

 

 

 

12月2日、第三軍司令部

 

 

 

児玉 「田中、各師団司令部の状況はどうだ?」

田中 「ダメダメです。失敗を重ねた後だから冷静さを欠いているのでしょうが、誰かが意見を出せば直ちにそれはダメだと非難し、軍司令部の命令に対してこんなことが出来るものかとほとんど相手にしておりません。要するに、

 です」

 「……各参謀を集合させて状況報告をさせろ」

以下30分ほど報告

 「以下は命令である」

第三軍一同へ?

 「攻撃計画を修正する。第一に

 第二に

 以上」

 「(無茶苦茶だ…)」

 「何か質問はあるか?」

伊地知 「重砲の速やかな移動など常識から考えて不可能であります」

 「馬鹿もん! 常識で戦争が出来るか!! 戦況が重砲の速やかな移動を求めているのだ。24時間以内に移動を完了せよ」

豊島 「閣下は二〇三高地占領後、援護砲撃をせよと仰いましたが、それは味方を撃つ公算が高いです」

 「それは巧くやれ」

 「陛下の赤子を陛下の砲で撃つ事は出来ません」

 「陛下の赤子を無為無能の作戦で死なせてきたのは誰か・・・」

 「これ以上兵を無駄死にさせないための作戦変更だ

 「援護砲撃は確かに同士討ちをするかもしれん。しかし今までの作戦を継続するよりは遥かに被害が軽微だ」

 「援護砲撃は危険だから止めるという杓子定規な考え方のために今までどれだけの兵が死んできたというのだ」

乃木 「……」

 「先ほど聞いたところによると、二〇三高地では100名ほどの兵が援護砲撃も援軍もなく、寒風にさらされて死守しているという

 「その姿をこの場で見たものがいるか!?

 「(またボルテージが上がってきたぞ)」

 「名誉ある勇士の死が迫っている、それを助けようとせず、占領地の確保に動きもしないということはどういうことだ!

 「参謀連中は前線に行って戦況を見て来い。明日私も行く、報告はその時聞く」

 

 

田中 「海軍の秋山少佐から書簡が」

 「全くだ」

 

 

 

第七師団司令部

 

 

 

 「前線の地図を見せろ」

 「……」

 

同じ中隊が別々の位置に書いてある

 

 「これはどういうわけだ?」

 「書き間違いのようですね」

 「書いた参謀を呼べ!

 

参謀が来る。

 

 「貴官の目は何処についている」

 「国家は貴官を大学で学ばせた。それは貴官の栄達のためではない。地図もまともに書けない参謀が何の役に立つか!

書き間違えた参謀の参謀勲章(通称、天保銭)を引きちぎる児玉

 

 

 

 「……」

 「どした?」

 「ソフィアおばさんの方が火病を起こしてるように見えるんだけど」

 「そりゃ作者がそう書いとるからな」

 「(いいのかな・・・)児玉さんは二〇三高地に大砲を集中させたってわけ?」

 「そうやな。厳密に言うと二〇三高地周辺の敵砲台を砲撃して黙らせるのが目的や。第三軍を旅順と心中させる訳にはいかんから、出来るだけ少ない損害で落すにはどうするかというのが焦点や」

 「今度こそ成功するかな?」

 「準備を経て、攻撃開始は12月5日やな」

 

 

 

12月5日、午前9時

 

 

 

大迫 「突撃開始

午前10時20分、第七師団の部隊が二〇三高地西南部占領(二〇三高地は西南部と東北部の二つに頂上がある)

 

 

 

旅順

 

 

 

スミルノフ 「ヴィソーカヤが占領されつつあるわ。ベールイ、援護射撃をお願い

ベールイ 「しかし現場からそのような連絡が入ってないわ。同士討ちの危険があるわよ。ステッセルに報告して」

 「かくかくしかじかなんだけど」

レイス 「コンドラチェンコ中将(11月28日に昇進)からもそのような報告は届いていません」

 「報告なんかどうでも言いの」

 「私がこの目で確認したんだから」

 「司令官に確認します」

 「ベールイ、直ちに砲撃しないと取り返しのつかないことに成るわよ」

ベールイ 「現場からの連絡が無いと…」

 「コンドラチェンコ、かくかくしかじかでヴィソーカヤの危機よ」

コンドラチェンコ 「しかし、閣下。私もこの目で頂上に我が軍がいる事を確認しています。砲撃は危険です」

 「全くもう、どいつもこいつも」

 

結局、砲撃されず

 

ステッセル 「スミルノフとコンドラチェンコの仲が悪くなるのは私にとって良いことです」

 「しまった、私が見ていたのは東北部だったのですね。西南部に援軍を派遣しないと」

 

だがその好機は失われていた

 

飛び交う28cm砲

 

ロシア兵 「ヴイソーカヤは悪魔の挽肉機だ。俺達はただの肉の塊だよ」

コンドラチェンコ 「何故死体を兵が見える場所に置いておくのです! 兵の士気が衰えるではありませんか!」

ナウメンコ 「もう置き場所が無いんだ」

 「(自嘲気味に)補充兵が尽きてきましたね」

 「ステッセルの司令部員に銃を持たせては」

 「ダメですよ。真っ先に逃げ出しますから連鎖反応を起こしてしまいます」

 「そりゃそうだ(笑)」

 

離れた場所で弾着

 

 「……」

 「何を考えています?」

 「貴方と同じですよ」

 「ステッセルの司令部に砲弾が直撃すれば良いと?」

 「ついでにフォークも一緒にいれば」

 「ピッタリ一致しますね」

 

 

 

午後2時 東北部占領

 

 

 

 「ああ、旅順が見える」

 「おい、旅順が見えるぞ」

 

皆号泣

 

児玉 「旅順艦隊は見えるか」

 「見えます、丸見えであります」

 「豊島、28cm砲で旅順艦隊を撃て!

 

 

 

午後4時

 

 

 

乃木 「大迫さん、二〇三高地占領はほぼ確実のようだが、逆襲を受けて奪還されないようにして下さい」

大迫 「日没までに完全に確保する」

 

 

 

午後9時

 

 

 

スミルノフ 「ヴィソーカヤが陥落したですって!?」

コンドラチェンコ 「残念ながら間違いありません。奪回の望みはありません」

 「・・・撤退を命令して」

 

 

 

午後10時、ロシア軍撤退

 

 

 

12月6日午前7時半

 

 

 

大迫 「もうよかろう。万歳三唱せよ」

一同 「万歳」

 

午前10時、本格的な艦隊砲撃陣地が完成する。

 

 「この日をどれほど待ちに待ったか、英霊達よこれを見よ!」

豊島 「砲撃開始、撃てー!!

 「くくくくく、圧倒的じゃないですか、我が軍は

 「こんなところで朽ち果てる己の身を呪うがいいわ

 「みんな、燃えてしまえ

 「……」

 

 「第七師団に属する二〇三高地突撃隊の脇野駒蔵中尉の日記によるとやな、

 ということや」

 

 

 

この結果、戦艦セバストポリを除き、旅順艦隊は全滅した。しかし・・・

 

 

セバストポリ艦長、フォン・エッセン
まだだ、まだおわらんよ

「28cm砲の着弾地点から逃れよう。日本艦隊の襲撃を受けやすくなるが、座して滅びを待つよりはマシだ」

 

 

 

午後3時

 

 

 

伊地知 「乃木閣下はどこへ?」

津野田 「二〇三高地に行ったけど」

 「閣下は死に場所を求めているのかもしれないです」

 「そりゃ大変だわ。ダッシュして追いかけないと!」

 

二〇三高地の八号目で追いつく

 

 「(ぜぇぜぇ)閣下、何しにこちらへ」

乃木 「苦労をかけた兵を労わろうかと」

 「…(閣下らしいわ)」

 

 

 

7日

 

 

 

児玉 「乃木、詩会をやろうではないか」

 「お前は元気だな。やってもいい」

 「観戦員に志賀重昂がいたな。評者をやってもらおう」

 「どうにも結の句が巧くいかない」

志賀 「十年の恨事、とは三国干渉以降のことですな」

 「(詩が)下手糞なものほどいくらでも出てくる(笑)」

 「志賀さん、これはどうかな」

志賀 「読み下すと

 ですか」

志賀 「(児玉さんはおろか、自分など全く及ばない)」

 

二〇三高地陥落翌日

 

大迫 「この場所に名前をつけようと思う」

松村 「鉄と血を以って奪ったから、鉄血山はどうか」

志賀 「旅順富士はどうだろうか」

志賀 「(我ながら拙い案だったな)」

 「児玉山はどうでしょう」

(ほぼこれに決まりかける)

大迫 「決定打にかけるな。志賀君、まとめ役を引き受けてくれ」

志賀 「わかりました」

 

 

志賀 「爾霊山以外にない。にれいさんと203の韻を踏んでいるのもすばらしい」

 

 

9日

 

 

 

児玉 「乃木、私は煙台に戻る。後は任せた」

乃木 「残りは正攻法で攻め落とす」

 「満州で待っているぞ」

 

 

 

12日、煙台に帰着

 

 

 

 「松川、これを大山閣下に返してくれ」

 

松川 「総参謀長閣下はこれは使うまでもなかったと申されました」

大山 「それは良かったが、使いたかったのだろうな」

 「……(児玉閣下は直接第三軍批判はしませんでしたが、田中少佐は第三軍のことを糞味噌に言ってましたし、閣下も同感だった、とも言ってましたね。元帥も或いは同感だったのでしょうか)」

 

 

 

 「ついに二〇三高地が陥落して、旅順艦隊も壊滅したんだ」

 「乃木さんと児玉さんのどっちの功績なのかな?」

 「筆者的な玉虫色の言い方をすると、両方、やな」

 「児玉が来る直前に乃木は二〇三高地攻撃に方針を変えとる」

 「当初は苦戦しとったが、児玉が重砲陣地を変えてからすぐ陥落したな」

 「ただ、ロシアが二〇三高地奪回をあきらめたのは消耗戦に耐えられなくなったからや。それは乃木が旅順に対して攻撃を続けていたからという要因が大きいのや」

 「ロシア軍の出血も大きかったということ?」

 「そうやな」

 「だが日本軍の損害はそれ以上やで。11月26日からこの日までに日本軍が投入した兵力は約64000人で、その内の死傷者は16936人(死者5052人)や。ロシア軍の死傷者は4576人と記録されとるので4倍の出血やな」

 「第三軍が遼東半島に上陸してからの死傷者はどのくらいになったの?」

 「48788人や」

 「物凄い数だね」

 「話が先走るが、旅順陥落までの死傷者合計が59408人やから、二〇三高地陥落までの損害が全体の82%を占める計算になるんや」

 「なんとかバルチック艦隊到着の前に旅順艦隊を壊滅できて東郷さんもホクホク……」

 「ってアレっ? セバストポリは沈んでないじゃん。旅順艦隊を全て沈めるのが絶対目標じゃなかったの?」

 「東郷もそこが気になっとった」

 

 

 

戦艦三笠

 

 

 

東郷 「セバストポリの所在が不明だ」

島村 「旅順港内にいるはずですが、こちらから視認できません」

 「エッセンはノーウィック艦長時代から操艦の名人だったな」

秋山 「味方の主力が被害を受けてはどうにもなりませんので、水雷艇の夜襲で始末するしかないでしょう」

 

12月9日〜16日にかけて水雷攻撃を敢行したが、沈んだという確証は得られず

 

 「セバストポリは本当に沈んだのだろうか」

連合艦隊参謀飯田久恒大尉
 「私は遠目が利きます。明日、見てきましょう」

 「それがいい」

 「明日、私がセバストポリを見に行くからその準備を頼む」

 「(話を聞いてなかったのか?)いや、その件に関しては目の良い飯田大尉が参りますので」

 「私が、行くのだ。飯田大尉が同行するのは構わない」

 「(青い顔をして)わかりました」

 「参謀長、かくかくしかじかで拙い事になりました」

 「お諌めしてくる」

かくかくしかじか

 「どうにもならない。自分で行くと言ってきかない」

 

 

 

 「東郷さんが自分で行くって言ったのは自身の目で確認しないと信じられない、と思ったからだよね」

 「そうや」

 「なんで周りは反対するの?」

 「危険地帯に行くわけやからな。東郷が爆死でもしたらえらいこっちゃ」

 「なるほど」

 

 

 

12月17日

 

 

 

東郷 「では、行ってくる。無論、君たちはついてきてはならない」

 「わかりました」

 

セバストポリを見て

 

 「確かに沈んでいる。一見浮いているようにも見えるが、艦底は確かに海底に膠着している」

 「これで宜しい。もう帰っても大丈夫」

 「帰る前に乃木さんに挨拶してこよう」

 「東郷、秋山、飯田が乃木の所へ向かったんや。このときの描写は飯田大尉自身が残した文章を元に作ってみるで」

 

第三軍司令部そばの駅(駅といっても野原)

 

 「やぁ」

乃木 「やぁ」

 

後は司令部まで無言

 

飯田 「(これが本当に感極まって言葉なしというのだろう)」

 

司令部、中に入ったのは東郷と乃木の二人だけ

 

飯田 「(二人の間で色々な話があったことと思う)」

 

 

 

 「話の内容を推測するとやな」

 「というような話やったやろな。この会見に関しては後に秋山が、

 と言っとるし、

 とも語っとる」

 

 

 「黒井のところへ行って慰労したい」

 「私が案内しよう」

 

 「黒井というのは海軍重砲隊指揮官の黒井悌次郎のことやな。この黒井重砲隊は、11月3日の天長節の時に旅順港へ向けて実弾で礼砲を撃ったんや。海軍の礼砲は21発やが、臨時に陸軍に派遣されているからという理由で陸軍指揮の101発を旅順に打ち込んだ。もちろん効果ありやで」

 

 「東郷さん! 貴方は海の将軍だから、陸で怪我をされてはそれこそ本望でないでしょう。頭を出すとすぐ敵から射撃を受けますから頭を出してはいけません」

 

ロシア軍の射撃が来る

 

 「東郷さん! もっと低いところを行きなさい。決して顔を上げてはいけません」

飯田 「(自分の孫をいたわるみたいだ)」

 

 

 「東郷は三笠に戻ると電報を打ったんや」

 

 

 「――これにて旅順封鎖作戦を終了せり

伊東祐亨 「第三艦隊を残して引きあげよ。東郷連合艦隊司令長官は上村第二艦隊司令長官とともに大本営に登営すべし」

 

 

 「この瞬間、日本海軍は旅順封鎖から解放されたんやな」

 「苦労が報われたんだね」

 「旅順封鎖でボロボロになった艦を修理せなあかん」

 「例えば戦艦敷島の場合、技術官が『2ヵ月はかかる』と見通すと、寺垣艦長が『それでは敵が来てしまう。もっと早くできないか』と返事をしたんや」

 「急ぐのはわかるけど、どうにもならないんじゃない?」

 「そのくらいのことはどっちもわかっとる。ところが修理を始めてみると職工たちが気合入りまくりで休息も取らず、食事も立ち食いや。敷島の乗員たちがお茶を配ったり間食を作ったりしたくらいや」

 「それはすごいね」

 「寺垣艦長が『それでは体が続かない。他の船も来るし、体を巧く使ってくれなくては困る』と職工達に説いて回ったくらいや」

 「職工達の勢いの凄さを数字で著すと、普通20回くらい叩いて潰れるリベットを5〜6回で潰してしまったくらいや。このような具合で、艦隊の修理はスムースにいったんやな」

 「さて東郷は12月30日に伊東軍令部長、山本海軍大臣、上村司令長官とともに皇居で明治天皇に拝謁したんや」

明治帝 「ご苦労であった。前途遼遠なり、ますます奮励せよ」

東郷 「誓ってバルチック艦隊を撃滅いたし、御宸襟を安んじ奉ります」

伊東 山本 「……(驚いている)」

 

退出後

 

山本 「東郷さん! 貴方は今日大変な事を仰いました。実に思い切ったことを仰いました

 「(笑って)いや、旅順で稽古しておりましたから」

 

 

 「何で伊東さんや山本さんはこんなに驚いたのかな?」

 「普段大きい事を言わない東郷が『撃滅』という激しい表現を使ったからや」

 「東郷さんは何でそんなことを言ったんだろう」

 「バルチック艦隊に一隻にでもウラジオストックに入り込まれたら日本のシーレーンが遮断されるということ。そして旅順のときと違い後がないから、日本艦隊の損害を気にせず全力でバルチック艦隊に当たれるということやな」

 「明治天皇に拝謁した直後、東郷は乃木夫人静子のもとに行っとる」

 

 

東郷 「ご子息が戦死されたことをお悔やみ申し上げます」

静子 「二人ともどうやら、軍人の本分を辱めぬだけのことはしてくれたようで、それは何よりのことです」

 「(さすが薩摩おこじょ、類稀なる烈女だ)」

 

 

 「あとはバルチック艦隊を待つだけやが、5時間目で触れた通り、駆逐隊の司令官を一斉交代させたんや」

 「そんなことして大丈夫?」

 「参謀長の島村が

 と参謀長を辞職したんやな。東郷は引きとめたが

 と言ったんや。バルチック艦隊を迎え撃つ連合艦隊司令部の布陣は

 となったんや」

 「海軍はバルチック艦隊を迎え撃つだけになったわけだけど、陸軍は? 二〇三高地は落ちたけど旅順要塞そのものはまだ落ちてないんでしょ?」

 「勿論続いとる。だが、二〇三高地陥落以降の戦いは、坂の上の雲の表現を借りると『残敵掃蕩』やな」

 「なんかそれって凄い楽勝のように感じるんだけど」

 「実際は楽勝まではいかないんやが、二〇三高地陥落から日本軍の攻撃がスムースになったのも確かや」

 「何でだろ?」

 「次回ではその辺りから見ていこうか」

 「結局旅順陥落まで至らなかったね」

 「作者が書き過ぎてまとめ損ねただけなんやがな」

 「だめじゃん」

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