☆日露コンテンツ ソフィア先生の日露戦争その6−3☆


 

 

 

 

 

 

 「これまでの総攻撃が全て失敗に終わっちゃった訳だよね。バルチック艦隊もそろそろ来るんじゃないのかな」

 「そうや。10月15日にバルト海を出発し、11月5日にモロッコのタンジールを出港したという情報が大本営に入ったんや。日本近海に到着するのは最速の場合を考えた時、1月やな。連合艦隊の修理に2ヵ月はかかるからもうギリギリや。このあたりから見ていくで」

 

 

 

長岡 「第3軍はいつまで同じ愚を繰り返すのですか!バルチック艦隊だけでなく北方の沙河でもロシア軍が増強を始めているのですよ。今必要な対策は次の二つです。

 このためには旅順陥落が最善ですが、それが出来なければ観測点を確保して艦隊を撃破し、海軍に協力すべきです。必要なら弾薬も送ります」

 

 

伊地知 「前線の指揮は師団長に任せているのでこちらから強いる事は避けます。観測点は既に確保しました。敵艦砲撃も間もなく開始します。弾薬は余っているのでいりません」

 

 

 「先日弾薬をくれと言ったのは他ならぬ第3軍司令部ではないですか。それを余っているとは何事ですか。余っているといっても既に効果のわかっている目標にこれ以上砲撃してどうなるというのです。それこそ無駄ではないですか。  また、戦闘は千変万化なので臨機応変に知恵を出してこそ勝利を得られるのです。何故特定の目標にこだわるのです」

 「こうなったら第3軍司令部を改変するしかありません。

 などとろくな噂が入ってきませんし。まず満州軍総司令部の意見を聞いてみましょう。えーと井口さん、電報打ちますからこれは自身で翻訳して総司令部で見てください」

井口 「そんなことは総参謀長から参謀総長に宛てた

 という電報で解決できるはずです」

 「あー、全くどいつもこいつも」

 

 

 

 「……これって第3軍の攻撃方法を満州軍も容認していたって事?」

 「そうや。長岡外史の"敵"は第3軍だけでなく満州軍総司令部でもあるということやな」

 

 

戦艦三笠上

島村 「軍令部からこのような電報がきました」

東郷 「秋山君、よろしく頼む」

秋山 「(第3軍司令部付の参謀は私じゃないのだが)既に何度も連絡してますが第3軍司令部は完璧に態度を硬化させています」

 「そうか」

 「バルチック艦隊の航路及び極東に到着する時期は今後の満州軍の採る作戦の基礎となるので大本営の判断を予め通報して欲しい」

 

 

 「なんでこんなことをわざわざ大本営に電報したのかな」

 「満州軍参謀であるロシア通の田中義一(昭和先帝に怒られて辞めた総理大臣)が海軍の言うバルチック艦隊の来航時期に疑問を呈したからや。ようするに『もっと遅いだろうし、戦闘力も怪しい』と思っていたということやな」

 「ふうん」

 

 

 「とりあえず参謀総長、参謀次長、軍令部長、軍令部次長の意見を纏めましょう」

侃侃諤諤かんかんがくがく のすえ

山県 「攻略地点を二〇三高地に変えずに時間ばかり過ぎれば海軍の準備が損なわれ『ついに救うべからざる状態』を招きます」

大山 「旅順の陥落はなるべく急ぐ。海軍の準備、北方軍の増強の必要性は言われなくてもわかっている。でも作戦の変更の必要はない。この作戦が旅順陥落への最速の方法である。ついては旅順に第七師団を増強して欲しい」

 「第3軍への第七師団増派ですか……。第八師団増援を拒否したときは『このままの作戦では旅順の埋め草となるだけだ』という理由でした…あの時と全く変わっていません。しかし援軍を拒否して陥落が遅れればえらい事に…しかし、援軍を送っても無駄死にの可能性が極めて高いですし…所謂進退極まるとはこういう状況なのでしょう。参謀総長、判断を任せます」

 「仕方ありません。送りましょう。これで本土を守る師団はゼロになってしまいました」

 

 

 

 「旅順をいつまでに攻略しろといわれても困る。速やかな攻略のための努力は重ねているが、その見込みが立たない」

 「この電文を見る限り作戦変更をするつもりもないみたいですね…」

 「とにかく二〇三高地をやってくれ

 「遠からず時期に実施する予定だ。連合艦隊には旅順に入る密輸船を取り締まって欲しい」

 

 

 「敵艦砲撃は総攻撃の間中止せよ。限りある砲は陸上に使うべきだ。全火力を集中せよ

 

 

 「なんだこの命令は」

 「旅順を一気に攻略すれば確かにその段階で敵艦撃滅が約束されたも同然ですが・・・」

大庭 「現状ではそれは無理です」

津野田 「重砲を提供してくれている海軍にも悪いしね」

 「とりあえず返事を出そう」

 

 「海軍を失望させる事になる。今一度再考を」

 

 「28cm砲の敵艦射撃の効果が思わしくない。無駄なことはやめろ

 

 

 「……」

 

 

 

 「乃木さんも大変だね」

 「ああ、だが前線の兵の方がもっと大変や。一つエピソードを紹介するで」

 「やっぱり清潔ではないね」

 「まぁ戦場やし、それに今と衛生観念が違うしな」

 「ところでロシア軍のほうはどうなの?」

 「そりゃ大変やで。食糧、特に肉と野菜が不足してきて将兵の体力が落ち、チフス、壊血病、赤痢の患者が増えたんや。士気も落ち『緩慢な自滅より名誉ある戦死を』という意見が出てきたんや。ノーウィ・クライ紙のノイネによるとやな…

 市民や一般将兵の声はこんな具合やな」

 「降伏論はなかったの?」

 「ノイネは軍司令部にその雰囲気があると察していたようや。

 という感じやな。スミルノフはノイネがステッセルに嫌われて前線取材を拒否されている事を知っているので、ノイネの推理はステッセルに対するあてつけであると思っていたようや。だが、

 とやる気十分やったな」

 「日本側の意見はまとまらないのかな」

 「続いてみていこうか」

 

 

 

 「次の攻撃は是非とも成功させねばならないが…」

 「従来の各師団放任を指揮を改めて、統一を図りましょう」

大庭 「幕僚間の統一も図るべきですね」

 「(あんたが言うなあんたが)」
(作者注・第3軍の司令官と参謀長は麾下の幕僚に引き摺られる傾向があった。一説には伊地知が支持した二〇三高地攻撃は幕僚の反対で潰れたという)

津野田 「第七師団がまもなく援軍として来るけど?」

大庭 「その前の攻略を急ごう。面子が立たない」

 「(二〇三高地攻撃用に第七師団が温存できそうです)」

 「では、その方向で満州軍司令部に伝えよう」

 

 

 「第七師団は使いません。松樹山、二龍山、東鶏冠山北の三堡塁の突破を目指します。海軍の援助に応えるために敵艦砲撃も行ないます」

 

 

大山 「乃木も今度はきばっちょる。よろしかろ」

 「そうですな」

 

 

 「またこれですか。ああ不安です不安です不安です。海軍からは連合艦隊の窮状を事細かに伝えられるし。参謀総長、御前会議を開いて満州軍の結論を変えさせましょう」

 「そうですね」

 

 11月14日に行なわれた御前会議の参加者は明治天皇の他、山県参謀総長、長岡参謀次長、伊東軍令部長、伊集院軍令部次長、桂首相、寺内陸相、山本海相。
 会議では、第3軍に二〇三高地を攻略させるのが海軍にバルチック艦隊迎撃を可能にする唯一の方法と結論した。山県が大山に


 と電報を打つ。
 ……だが

明治帝 「いわなお従わず」

 「三堡塁の攻撃なら11月20日過ぎにできるが、二〇三高地攻撃にはさらに三週間の準備が必要である。この攻撃で旅順陥落には至らざるも、死命を制することはできるはずである。ただ、損害の大きい事だけは予め覚悟あるべし」

 

 

 「損害の大きさを覚悟せよとは…随分無責任ですね。海軍からは『御前会議に従わないのは反逆だ』という意見まで出てきています。これ以上の干渉は依怙地にさせるだけですね。もう実行の時期ですか。仕方ありません。海軍に論議の中断を伝えておきます。参謀総長は第3軍司令官に対する督励をお願い致します」

 「そうですね、そうしましょう」

 

 

 

 「いよいよ切羽詰まってきたね」

 「与謝野晶子が『君死にたまふことなかれ』と歌ったのもこの頃や。第3軍では山県の漢詩を暗号だと思い、乃木が漢詩だと判定したという話も伝わってるで」

 「乃木さんが旅順を落さないから非難の声が出てきたというけど?」

 「津野田是重が戦後に乃木夫人の静子から聞いたところによるとやな…、

 とも回想しとる」

 「ウラジオ艦隊に苦戦した上村艦隊の時みたいだね」

 「こんな状況で督励の電報を受けた乃木は悲痛やな。事実ノイローゼになっとったというで」

 「大本営は乃木さんの更迭も考えていたみたいだけど、ノイローゼを理由に更迭はしなかったの?」

 「軍司令官の更迭は日清戦争での山県という前例があるんや。そのとき山県は消化器を患っていたんや。前例がある理由やから不名誉は避けられるな。乃木の更迭は山県も同意したし、満州軍の参謀連中も同調しとった。総司令官の大山に意見を聞いたが、大山は

 として首を縦に振らなかったんやな。ここで乃木を更迭したら第3軍の将兵が『乃木のせいで負けていたんだ』と思って士気が崩壊する恐れがある。これを避けたんやな」

 「ふうん」

 「さらに明治帝が、

 と仰った事で乃木更迭問題はケリがついたんや」

 「でも旅順を落さないといけない訳でしょ」

 「そうやな。山県電以外にも督励が来たんや。そこを見るで」

 

 

 

11月21日、満州軍から電報が来る

 

 

 

 「要するに、第七師団も使って二〇三高地及び三堡塁を落せということか。次を最後の総攻撃としろということでもあるな。伊地知さん、参謀長会議を開いてください」

 

伊地知及び各師団の参謀長が集まり、作戦スケジュールを決定する

 

 

 

 

 「特別支隊って?」

 「有名な白襷隊や。この3日前に行なわれた師団長会議で、第一師団長の松村中将が

 と意見を出したんや」

 「どう考えても無謀だと思うけど」

 「第3軍幕僚も津野田以外が揃って反対したんやが、乃木が賛成したんや」

 「作者もこの一点だけは乃木を弁護しようもないと考えているんだよね」

 「まぁこの突撃が本当に成功すると思っていたら相当やがな。ただ乃木は、

 と付言しとる」

 「じゃあなんで計画に入っちゃったの?」

 「結局余裕がなかったんやろ。後な、第七師団の使用だけは全員が反対して、予備となったんや」

 「余裕がないというよりメンツに拘ってるわけね。伊地知さんが二〇三高地攻撃を唱えていたというのは事実なのかな?

 「作者は伊藤正徳の著作を元にしとる」

 「じゃあ6−1で火病を起こしたリューシーさんはどうなるの?」

 「それは・・・黒歴史や

 「いい加減だなあ」

 「書いてるうちに原作を換える作者に言っといてや。でもこれが事実だとすると何故司馬遼太郎が伊地知をあのように書いたのかわからん」

 「小説だからじゃないの?」

 「それで済めばええんやけどな。作者は第3回総攻撃の攻撃法というよりそれに至る過程まではなんとかならなかったのかと思っとる。長岡外史が切歯扼腕せっしやくわんするのもわかる気がするわ」

 「長岡さんは何をやったの」

 「じゃあ続きや」

 

 

 

11月21日の満州軍から第3軍に宛てられた電報の転電を見て

 

 

 

 「乃木大将を励ますために勅語を陛下から貰ってください」

 「それはさすがに…。度重なる督励は態度を硬直させるだけです」

 「ここで失敗されたら戦争そのものが崩壊します」

 「仕方ありません。陛下、お願いします」

 

11月22日

 

 「攻略前の勅語は前例がないな」

 「先日の満州軍命令もこれまで反対していた『二〇三高地をやれ』です。一刻を争う急務ではなかったはずなのに『損害を省みず攻撃せよ』ともありますね」

大庭 「この勅語は不公表とされています」

津野田 「公表出来ない勅語なら来ない方が良かったわ。過去の作戦に対する不信なら上級部である満州軍司令部が対象となるべきでは?」

 「(これは追いつめられたな…)」

 

 

 

翌日、26日より総攻撃を開始する命令がでる。

 

 

 

 「必要あらば予自ら第七師団を率いて先頭に立つ!!

第3軍幕僚 「それはやめて下さい。司令官が最前線に出てどうするんですか」

 「止むを得ない。鳳凰山で指揮を執る」

 

 

 

 「凄い覚悟だね」

 「でもな、この覚悟は師団長には共有されたが、第一線将兵には共有された訳でもないんや」

 「なんで?」

 「第十一師団第十二連隊第三大隊長志岐守治少佐によるとやな…

 とある。これが第3軍の一般状況なら、確かに士気の衰えは明らかで、攻撃に期待は持てんわな」

 「失敗のにおいがぷんぷんしてきたね」

 「そうやな。また長岡の心配から見ていくで」

 

 

 

 「第七師団の損害だけは回避されそうですが、旅順が落ちなければ何の意味もありません。それに何故26日なのでしょう。これまでも26日の攻撃が多かったですね。聞いてみましょう」

 「坑道作業に使用する導火索の有効期間が1ヶ月だからですよ」

 「そんなの多少ずらせばどうにでもなるでしょう」

大庭 「南山の突破が5月26日だった、縁起がいい」

 「南山突破記念日といいますが、その26日は攻撃失敗が続くことで縁起が悪くなっているではありませんか」

津野田 「26は偶数で割り切れる。つまり要塞を割る事ができる〜♪」

 「(唖然)まさか割り算が根拠だったとは。

 

 

 「やっぱり第3軍に任すべきではなかったでしょうか。司令部を改変するべきだったでしょうか。奉勅命令という形で作戦方針を指示すべきだったでしょうか。『無益の殺生』が続くのでしょうか。やっぱり第3軍に任すべきでは・・・(以下エンドレスで不眠症になる長岡)

 

 

 

 「うわー。こりゃ狂ってるね」

 「坂の上の雲の言葉を引用すればな、

『この程度の頭脳が、旅順の近代要塞を攻めているのである。兵も死ぬであろう』 ということや」

 「これは納得せざるを得ないなあ。ところでロシア軍の動きは?」

 「じゃあ見ていくか」

 

 

 

スミルノフ 「満州軍から電報が来たわ。えーと・・・

 ……ってことは遼陽は陥落したって事? 噂では伝わってきたけど、確報が来たら皆落胆するわね。しかも今までの電報にあった『旅順救援』の文言が欠けてるし。援軍の望みは尽きたか」

レイス 「清国人の諜者によれば、日本軍は26日に最後の総攻撃を行なう模様です」

スミルノフ 「ここが最後のチャンスか。コンちゃん。全軍布告をお願い」

コンドラチェンコ 「誰がコンちゃんですか」

 「敵は最後の攻撃を行なおうとしています。これは我が軍にとって好機です。この攻撃を撃退すれば敵は遼東半島から引きあげる事は間違いありません!!

 「二龍山、東鶏冠山北の両堡塁に増兵します。前線では日本軍の坑道作戦に対抗するため、手榴弾、地雷、火炎瓶、石油を使った『焼人戦法』で対抗しなさい」

 「旅順艦隊から砲弾を提供させましょう」

 

旅順艦隊

 

 「要塞に砲弾を渡すべきではない。バルチック艦隊が来た時に呼応して出撃するためにも必要だ」

 「でも要塞そのものが落ちたら意味がないわよ」

以下侃侃諤諤かんかんがくがく

 「ステッセルが要求した量の一部を渡しましょう」

 

 

ノイネ 「陸軍は心身ともに衰弱し、海軍は無為無策で過ごす。勝利は遠のき、悲劇の足音のみを聞く思いです

 

 

 

 「やっぱりロシア軍も一杯一杯なんだ」

 「第3回総攻撃が始まるで」

 

 

 

11月25日、水師営 

 

 

 「やっと出番が来た」

中村 「特別支隊集合!

 「この支隊は最も名誉な隊である。

生きて帰る事は期待できない。決死の覚悟で目的を達成すべし

私の次席指揮官は渡辺大佐、その次は大久保中佐である

夜間における襲撃は銃剣突撃。敵の猛射を受けても一発たりとも応射してはならない

味方の識別のため、隊員全員は右肩から左腋に白木綿をかけなさい

故なく後方にとどまったり、退却するものはこれを斬れ!

 

 

 「……私が言うのもなんだけど、やっぱり滅茶苦茶じゃない?」

 

 

 

同時刻、第3軍司令部  

 

 

大沢 「松川……ではなく、大本営から視察に来た大沢界雄大佐です」

 「もう3日も眠っていない。これ以上どうして良いかわからない。ここの指揮は適任者がいれば譲りたい。しかし誰も名案がない」

 「我々のやり方に間違いがあったのでしょうか……(悄然)」

 「これはどうみてもこれから総攻撃をやろうという司令部ではないですね。でも、明日は総攻撃です」

 

 

白襷隊に従軍の日野軍医
日野 「いつ突撃開始かわからないまま寝ずに待つのか。しかも寒空の下、食糧は乾パンのみ。軽装とはいえオーバーを着ているから疾駆はままならない。しかも旅順市街まで、一体いくつの敵堡塁があるというのだ」

 「とても突進は出来ない。私の寿命も28で終わりか。家族に手紙を書いておこう」

 「みんな内心はこんなんじゃなかったのだろう」

 

 

 

11月26日午前8時 水師営

 

 

 

 「国家の安寧は我が軍の攻撃成否にかかっている。諸君が国に殉ずる時は今だ。努力を期待する」

 

以下涙を流しながら「死んでくれ」の一言とともに白襷隊と握手する乃木

 

 

 

 「でも白襷隊の出番は夜なんや」

 「さすがに昼の突撃は無謀だからか。じゃあ夜までは今までの攻撃と同じ攻撃方法なわけ?」

 「まぁそうやな。それはいいとして、これまで望台攻撃を担当して、最も疲労している第九師団と第十一師団がまたもこの方面を受け持ったんが大問題や」

 「なんで?」

 「メンツや」

 「本当に融通がきかないね」

 「きいとったらもっと早く落ちとったかも知れん」

 「それ本気で言ってる?」

 「どうやろな。この総攻撃に対して、ロシア軍は日本軍の攻撃パターンを読んでいたので、防御に自信があったようや」

 「ますますまずいじゃん」

 「さて、動きを見ていくで」

 

 

 

26日昼

 

 

 

 「やはり苦戦するな。

 間違いなく今以上にタンカが必要だ。私の権限でできることだし、準備しよう」

一戸 「部下の勇敢な突撃も全く成功しない。このまま突撃を続けても無駄死にだ」

 

 

 

 「相変わらずだね。なんでだろ?」

 「『相変わらず』やからな」

 「ハァ?」

 「不十分な砲撃、少数兵力による突撃、ロシア堡塁の猛烈火力、予備兵力の不足……これまでの攻撃で出てきた問題点ばっかりや」

 「作者は第3回総攻撃に関してはダメダメだと思ってるわけ?」

 「それに近いな」

 「切り札の白襷隊はどうなったの」

 「じゃあ続きや」

 

 

午後6時

 

 

 

 「我が隊はこれより水師営を出発し、次の集合地へ向かう!」

 

 

 

午後8時50分

 

 

 

 「一部が迷子になったか。仕方ない、目前の堡塁(松樹山)を攻撃せよ!」

 

忽ち阿鼻叫喚の地獄

 

 「うわっ

 「隊長殿! タンカ速く!!」

 「骨が見えてる、血が止まらない。照明弾が切れると何も見えない。応急処置も出来ない。止むを得ない、後退だ」

 「……ありがとう、君の姓名は?」

 「第九師団第三十五連隊所属の日野信次三等軍医であります!」

 「渡辺大佐に伝言頼む。中村は倒れたが、最後の一兵まで戦い、目的を遂げられたし。切に伝言を祈る」

 「復唱。中村…(略)、以上を必ず渡辺大佐殿にお伝えいたします」

 

 「私の出番これだけ?」

 

 

 

 「渡辺大佐はどこだ? こうなったら第一線に行こう」

 「何だこれは。彼も彼も戦死また戦死。第七師団所属の隊はたった一度の戦闘で戦死か。貴い兵力を失ったのは心もとない限りだ」

 

 

 

11月27日午前1時過ぎ

 

 

 

150メートルの幅しかない箇所に集結している白襷隊の存在はロシア軍に明白なので、大雑把な照準でも効果が挙がっている惨状

 「何!? 退却命令が出ただって? 決死隊ではなかったのか? 退却するものは斬殺という命令はどうなったというのだ!? ここで退却するのは死んだ戦友に気の毒極まりないではないか!!」

 「負傷者を見捨てて帰る奴は俺が斬る! 一人ずつ収容して帰れ! 素手の奴は俺が叩き斬る!!!

 

 

 「日野軍医の叱咤のおかげで助かった兵もおったけど、大部分の負傷兵は夜明けになると凍死しとったそうや」

 「……」

 

 

 

第3軍司令部

 

 

 

 「白襷隊も駄目だったか…」

 「どうされます?」

 「失敗したとはいえ、敵の損害も少なくはないだろうし、牽制した事は確かだろう。第七師団の残りを第九師団につけるから再度の攻撃をするべきだ。状況はここでの攻撃中止を許さない」

津野田 「第九師団長の大島中将より意見具申です」

 「止むを得ない。攻撃を午後二時まで延ばそう。白襷隊には改めて退却命令を出せ」

白襷隊の損害、2290人(死者684人)

 

 

 

午前5時半

 

 

 

 「満州軍と大本営に前日の戦闘経過と今日の作戦計画を電報しよう」

 「(憤怒)なんですかこれは!!

 「なぜすぐに変更しないのですか! 今日の攻撃も昨日と全く同じ攻撃をやるとか、これでは第七師団を無駄死にさせるだけではないですか!! 満州軍を通じて『無益の殺生』計画を思いとどまらせましょう。参謀総長、発電の許可を願います」

 「大山元帥に任せある今日、余計な事はしないほうが良いです・・・」

 「涙を飲んで発電を中止した気分です。胸中が煮えくり返る思いです。特に憤慨に堪えないのは第3軍からの電文で・・・

 「冗談ではありません! 第3軍はこの数ヵ月間ずっと敵陣に密接しているのに、敵の堡塁の状況すらわからなかったというのですか!! これは驚くべき不始末の偵察で、このことが世間に漏れたらどんな激憤が起こるかわかりません!!!」

 

 

 

 「これが事実なら長岡さんが怒るのも無理ないよ」

 「ところがやな…」

 「ところが?」

 「ついに乃木が考えを変えたんや」

 

 

 

 「大島中将の意見から察するに、従来通りの攻撃の成功の見込みはない。すると二〇三高地だが、こちらは成功の見込みがあるのだろうか。担当の第一師団に確認をしよう」

 

 

 「あれ? 第一師団長は二〇三高地攻撃に反対で、第一師団参謀長の星野金吾大佐が賛成したんじゃなかったの?」

 「細かい事は気にしたらあかん」

 

 

 

午前10時

 

 

 

 「東北正面攻撃を中止して、二〇三高地を攻撃する。28cm砲で敵堡塁を破壊せよ。第一師団は砲撃の成果を待ち、日没とともに突撃せよ。他方面は二〇三高地攻撃に対する牽制を行なえ」

 「満州軍と大本営に電報を打て。伊地知さんは、第一師団司令部に行ってください」

 「了解しました」

 

 

 

 「よかったよかったよかった

 「(もっとも、この着想がもう少し早ければ勅語を貰わずに済み。1万の死傷者も出ませんでした)」

 「これで問題は解決しましたね」

 「海軍にも伝えておきましょう」

 

 

 

 「これで争点は二〇三高地に移ったわけや」

 「あとはどれだけ早く落ちるかだね」

 「この頃のニューヨークでは年内に落ちるかどうか賭けが流行っとったそうや」

 「アメリカ人にとっては他人事だもんね」

 「日本も第1回総攻撃の翌日に『旅順陥落』の号外まで用意しとったから、お気楽振りではあまり変わらんな」

 「で、裏を返して乃木さんを非難したんだ」

 「と、アムロ大尉は言っとったが、ニュータイプやあらへんから、人はそんなに変わらんというこっちゃ」

 「それ誰に対する皮肉?」

 「さあな。ただ作者は調べていくうちに先人を不当に貶める事だけはできるだけやらないようにと思うようになったというわけや」

 「批判と侮辱を履き違えるなってこと?」

 「『批判』『侮辱』という言葉でいいのかどうかはわからんが、ニュアンス的にはそれに近いと思うで」

 「だから旅順で坂の上の雲を原作にしなかったの?」

 「ちゃうで。それに関しては前に説明したはずや。ただ作者の興味は

 にあるんや。断っとくが作者には坂の上の雲を貶めるつもりは全くないで。むしろこのコンテンツの閲覧者の方々に読んで欲しいと思っとるくらいや」

 「旅順以外のテキストは坂の上の雲だしね。というかここに来る方々なら既に読んでるんじゃないの?」

 「かもしれん」

 「児島さんの日露戦争は?」

 「中々手に入らんのが辛い。作者は古本屋で帯び付きの全巻を見つけたときに即決で買ったんや。ラッキーだったと今でも思っとる」

 「ふうん。今回はここで終わり?」

 「そうや」

 「次回こそ旅順が落ちるかな」

 「そのつもりやが」

 「つもりって」

 「作者の予定は未定やから当てには出来ん」

 「まあそうだね」

次があったら→


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