☆日露コンテンツ ソフィア先生の日露戦争その3☆


 「やっと開戦だ。『早く戦争になぁれ』と思われていた読者の方々をえらく待たせる事になった」

 「随分カッコいいトップ画像が出来ましたね」

 「作ってくれた総統閣下と載っけてくれたADON-K様に感謝だな」

 「相変わらず作者は何も出来ないのね」

 「(無視して)『早く戦争になぁれ』はむしろ作者が思っていた事なのだがな」

 「どういうこと?」

 「早く日朝戦争が起これば従軍記者をやるチャンスが増える。戦闘状況のほうが書きやすいと作者は思っているらしい」

 「まだ書き始めてもいないのによくそんな妄想が起こりますね」

「というよりぶっちゃけて言えば、戦闘に入れば『日本軍がロシア軍をぶちのめした』の一言で片付くからじゃないの?」

 「そんなに簡単ではなかろう」

 「その通りだ。『どうやってぶちのめしたか』を血涌き肉躍るような表現をするのは大変だろう。最強の大日本帝国軍の活躍をたかだか作者如きがホントに燃え萌えに表現できるか非常に怪しい」

 「……そういう意味ではなくてだな、日本軍が圧倒的にロシア軍をぶちのめし続けた訳じゃないだろう。というか二度目の『もえ』、漢字が間違ってないか?」

 「何を言ってるんですか、燃え萌えが両立してこその世界史コンテンツですよ!! これまでは作者の技量不足で全然ダメでしたけど」

 「戦争に『萌え』の概念が入るのは宇宙世紀からじゃなかったのかよ」

 「そういえばそんな事言ってたわね」

 「……一応お約束、伝統というやつだ」

 「その一言で逃げるの止めなさいよ」

「つまらん脱線はそこまでだ。さて、前回の最後で触れたように、ロシアに対して国交断絶を通告したのが明治37年2月6日だ。ロシアの対日宣戦布告は2月9日、日本の対露宣戦布告が翌10日だが、戦闘はそれ以前から始まっている」

 「宣戦布告の前に戦闘を始めていいの?」

 「戦闘開始前に宣戦布告が義務付けられるのは1907年(明治40年)の話だ」

 「前回チラッと出てきたドイツのメッケルは日本で『宣戦布告の後に戦闘を始めるなんて馬鹿な事はするな』と教えている」

 「武士道がまだ生きていた当時の生徒達が『なんて卑怯な事を』と反発したと聞いたが」

 「その通りだ。さて、国交断絶が通知され、日本海軍は出撃する」

 「開戦時の日本海軍の概要は以下の通りだ」

 「あれ? 日進と春日は?」

 「開戦当時はまだ日本に到着していない。到着したのは2月16日だ」

 「前回で説明したとおり、第一艦隊と第二艦隊を合わせて編成されたのが連合艦隊だ。このうち戦艦の三笠・朝日・富士・八島・敷島・初瀬、装甲巡洋艦の出雲・吾妻・浅間・八雲・常盤・磐手で六・六艦隊だ。日進と春日は装甲巡洋艦なので到着次第で六・八艦隊となる」

 「海戦時における山本権兵衛海相からの命令は以下のとおりだ」

 「ところで出撃したのはいいですが、連合艦隊は何処に向かったのでしょうか?」

 「旅順と仁川だ。旅順は遼東半島の本当に先っぽだ。連合艦隊命令第一号によると」

 「旅順がメインで仁川に向かったのは別働隊だが、まずはこちらから解説する」

 「別働隊って?」

 「前記にある第四戦隊に装甲巡洋艦『浅間』が臨時に編成された瓜生少将率いる戦隊(瓜生戦隊)が陸軍を護衛して仁川に向かった」

 「仁川は漢城の出入り口のようなものだ。ここに陸軍が上陸すれば漢城に向かうのは容易だ」

 「漢城に向かってどうするんだ? ロシア軍は満州にいるのではないのか?」

 「慌てるな。日露が開戦すると韓国政府は直ぐに局外中立宣言を発したが、それまで露骨な親露政策を取っておいて今更中立宣言はどうよ? と日本政府は判断した訳だ」

 「露骨な親露政策とは?」

 「皇帝がロシア大使館にて反日勅令を出したりなどだ。この辺はコリアンジェノサイダーnayukiが詳しいのでそちらを読んでくれ」

 「自分で書こうとしないの? この作者は」

 「丸投げが大得意だからな」

 「ともかく軍事力で押さえつけてでも韓国に協力させねばならないから木越安綱陸軍少将率いる1個旅団を仁川に上陸させたわけだ」

 「韓国を無理矢理押さえつけたことで文句をつける輩がいるが、そーゆー時代だったに過ぎない。力がものをいい、それが法律だった時代だ」

 「弱いのが悪い時代という事ですね」

 「法の不遡及の原則を知らん奴らが多すぎるな」

 「ところで仁川に簡単に上陸できたわけ? 漢城の出入り口なら外国の船がいても不思議じゃないと思うけど」

 「そこだ。開戦前、仁川には日本海軍の千代田(艦長村上格一大佐、2450 トン)、ロシア海軍巡洋艦のワリャーグ(6500トン)と砲艦コレーツ(1213トン)が居た。英仏その他の船もいたが、それはどうでもいい。中立港故に各国の船がいたと覚えておけばいい」

 「日露の関係がきな臭くなった2月7日、千代田は密かに仁川港を脱出する」

 「ワリャーグは仁川港にいる軍艦の中では最大だったので、開戦すればあっという間に千代田は撃沈されてしまっていただろう」

 「同じ巡洋艦のようだけど、どれくらい違うの?」

 「ハンブラビにネモで挑むようなものだな」

 「その組み合わせなら何か巧くやれば勝てそうな気がしますけど?」

 「そもそも作者がわかっていないのに無理矢理ガンダムネタをやるからいけないんだよな」

 「中の人がニュータイプならやれそうね」

 「中の人などいない。とりあえずイメージとして違いがわかればいいのだが……」

 「だからそのイメージが違うって言ってるのよ」

 「う〜ん……」

 「話を戻すぞ。脱出して味方を探していた千代田は瓜生戦隊との合流に成功し、仁川港に戻る」

 「ワリャーグとコレーツを旅順に逃がさず、ここで始末したい訳だ」

 「中立港でそんなことして大丈夫?」

 「無論大問題だ。国際問題が巻き起こる事を極度に恐れた大本営は『ロシアから撃ってくるならともかく、こちらから撃ってはならぬ』と瓜生少将に命令している」

 「中立国各国の軍艦もいつ戦火が起こるかわからず恐れていたので『中立港で砲火を交えてもらっては困る』と言ってくる」

 「対して『我々は陸兵を上陸させる命令は受けたが戦争の命令は受けてはおらん』と答弁した」

 「屁理屈丸出しですね」

 「これも駆け引きだ。陸軍の揚陸終了のめどが立った9日午前4時、瓜生少将は自ら英文でワリャーグ艦長ルードネフ大佐に挑戦状を書く」

 「同時に各国軍艦にも『巻き込まれないよう注意してくれ』と伝えた」

 「11時55分、ワリャーグとコレーツは港外を目指し始めた。対して日本は港外に『浅間』(艦長八代六郎大佐 、9750 トン)を待ち構えさせていた。日露艦船の砲火が交わる」

 「で、どうなった訳?」

 「日本海軍の完勝だ」

 「完勝と言われてもどのくらいかわかりません。浅間のような大艦がいれば勝つことは予想できますが」

 「ロシア側の死傷者223名に対し、日本側の死傷者はゼロだ」

 「ゼロ!?

 「ロシアは寝ぼけてでもいたのか?」

 「そんな事は無いが、射撃能力が低すぎた。1530発撃って1発も日本軍艦に当たらなかったからな」

 「1発も当たらなかったのか!?」

 「冗談としか思えませんね」

 「そうだ。ロシアの射撃能力の低さに日本側も驚いている」

 「で、ワリャーグとコレーツはどうなった訳?」

 「コレーツは無傷だったものの、ワリャーグがボコボコにされた。この2艦が生き残る道は中立港の仁川に再び逃げ込む事だ。仁川港に逃げ込めば国際問題を恐れて日本側は撃ってこないからな」

 「でも、そのままという訳にはいかんだろう」

 「そうだ。このような場合普通は降伏なのだが、開戦早々ロシア軍艦が日本に降伏するという不名誉を恐れたルードネフ大佐は、まず同盟国のフランスにロシア水兵を上海に送る事を頼んだ。この兵達が戦争が終わるまで上海を出なければ国際法には触れない」

 「そしてワリャーグとコレーツは自沈した。恐らくルードネフ艦長の心境は……」

 「……」

 「と、このようなものだっただろう」

 「えーと、エヴァ(最後) ()24()()?」

 「その通りだ」

 「ガンダムネタだけじゃないのかよ」

 「なんでこの2人なのよ?」

 「イメージ画像大佐艦長およびその相方だから」

 「ミサトさんはともかく日向さんのアイコンがない事に作者が困ってます」

 「自分で作りなさいよ」

 「それができれば苦労はしません。大体このコンテンツそのものをアップする事さえもできないからADON-Kさんにお願いしているというのに」

 「せめて中の人くらい合わせなさいよ」

 「中の人などいません」

 「三石さんはクララやタイガーが居るけど、結城さんが見つからなくて」

 「ダメダメだな」

 「全くよ」

 「(流れを完璧に無視して)この仁川沖海戦は規模こそ小さいものの、日本がロシアを相手に完勝したという事で以後の日本に大きな自信を持たせた戦いだ」

 「仁川にいた日本領事の加藤本四郎は日本が完勝したという知らせを受け、感極まって涙を流したくらいだ」

 「この海戦は浅間のような大艦を持っていてボコボコにした、いわば勝つのが当たり前の戦いだが、勝つのが当たり前な状況でやるのが戦争というものだ

 「孫子の兵法にもある」

 「フレンチのナポ公が強かったのは戦術面もさることながら戦略面の段階で圧倒していたからだ。戦術と戦略の違いは本家にある私の補習授業1時間目を参照してくれ」

 「フレンチのナポ公って……、でも作者はアウステルリッツ三帝会戦を芸術だと思ってるんだよな」

 「戦争を芸術なんていうから誤解されるのよ」

 「勘違いしてもらっては困るが、戦争が芸術なのではない。戦術や兵器が芸術なのだ。その違いがわからないから困る」

 「一般人はそこまで気にしませんからね」

 「そうだな」

 「ところでこんなエピソードを見つけました」

 「これ本当?」

 「さぁ? これは作者がルードネフ艦長の写真を探すつもりでグーグルさんに「ルードネフ」とかけたらみつかった2○ゃんねるの過去ログから拾ってきたものです。それによると、朝鮮日報の名コラムニスト李圭泰氏が紹介したものだそうです」

 「ふ〜ん」

 「また、グーグルさんで拾った情報によると、コレーツとはロシア語で『韓人』の意味だそうです」

 「それって……例の法則発動という奴?」

 「流石にそれはどうでしょうか? どちらにしろ重要人物の写真が拾えなくて作者が困ってます。作者が持っている本にはありますが、スキャナーを持っていないんで」

 「変わって舞台は旅順港に移る。ロシア太平洋艦隊(通称旅順艦隊)の本拠地だ。ここに連合艦隊の主力が向かった訳だ」

 「開戦時の日露海軍を比較してみる」

 「両海軍ともこの他に哨戒・輸送任務その他についた艦船はあるが、戦闘に参加した艦の内訳はこのようになる」

 「あれ? ロシアには黒海にも艦隊がいなかったっけ?」

 「親日国トルコが黒海艦隊のボスポラス海峡通過を許さなかったので日露戦争には参加していない。よって割愛した。戦力比較をすると、連合艦隊と旅順艦隊とバルチック艦隊はそれぞれが大体互角だ。戦艦及び装甲巡洋艦が決戦戦力の大部分を占めるからな」

 「連合艦隊の第1の目的は旅順艦隊の撃滅だ。だが、問題があった」

 「何? 戦力比較をすると日本艦隊の方が旅順艦隊より上だから問題ナシじゃないの?」

 「バルチック艦隊が来たらどうする」

 「その前に旅順艦隊を片付ければ良いじゃない」

 「その片付ける事が問題なのだ。二乗均等の法則というのを知っているか?」

 「知らないわよ」

 「お前それでも軍人か?」

 「そんなキャラ設定はないわよ」

 「そうだっけ? 確かナム戦の米兵だったような……」

 「違います! アレは日本海海戦に参加した日本水兵です」

 「まぁアレは総統閣下のお遊びだからな」

 「話を戻すぞ。二乗均等の法則というのは戦力評価の比較は二乗で行うということだ」

 「さっぱりわからないわよ」

 「例えば全く同じ強さの人間が3人集まって2対1で戦ったとする。1人ずつ相打ちで残りが無傷という結果になると思うか?」

 「んなわけないじゃない。2人の側は少々手傷を負うかもしれないけど、1人の側がボコボコにされておしまいよ」

 「その通りだ。それを数値化すると2の二乗=4から1の二乗=1を引いて3になる。3の平方根はおよそ1.73だから、1人の側がボコボコにされて(=0)、2人は少々手傷を負った(2人合わせてのマイナスが27%ほど)ということだな」

 「つまり、日本艦隊はバルチック艦隊が来る前に旅順艦隊を撃滅しなければならないわけだが、ただ撃滅するのではなく、できるだけ無傷で撃滅しなければならない」

 「普通に考えてそんなの不可能じゃないか? 戦力は互角なんだろ?」

 「1つの艦隊同士で比べるとやや連合艦隊に分があったようだがな。日本海軍にとってはロシア艦隊の合流を防ぐのが至上命題だが、旅順艦隊を撃滅する以外にもう一つ艦隊合流を防ぐ方法がある。閉塞だ」

 「何それ?」

 「旅順艦隊を港から出せなくするんだ。」

 「どうやって?」

 「港が狭い事を生かして、その出入り口にボロ船を沈めてしまうんだ。港は当然ながら沖よりは浅いからな、喫水の深い軍艦はボロ船が邪魔して通れなくなる。これで旅順艦隊の始末はつくというわけだ」

 「この作戦を考え出したのが日本海軍史上最高の頭脳、秋山真之少佐だ」

 「元はアメリカ海軍の作戦だがな」

 「そうなの?」

 「米西戦争でアメリカ海軍がスペイン海軍に対してやったことだ」

 「秋山少佐は観戦武官としてその閉塞作戦を見ていたし、研究もした。そして、開戦直後に実行してしまえとばかりに計画を練っていたわけだ」

 「ところが東郷司令長官が反対する」

 「どうしてですか?」

 「東郷長官は『実行部隊は生還を期しがたい。そういうことは行なうべきではない』という理由で反対した」

 「結局、旅順港に在泊する艦隊に駆逐艦が奇襲をかける事で戦いの幕が切って落とされる」

 「2月8日。仁川沖海戦の前日だな。午後6時、連合艦隊の主力が旅順沖に到着し、駆逐隊が出動する」

 「ロシア側はどう対処したのでしょうか?」

 「何もしていない」

 「ハァ? いくら宣戦布告前とはいえ日露関係は緊迫していたんでしょ?」

 「それだけロシアが日本を舐めていたという事だよ。軍港なら当然敷設してあるはずの防雷網も敷設してなかった」

 「更に運の悪い事にこの日はマリア祭だった」

 「何だその祭は?」

 「マリアという名前の女性を祝福する行事だよ。旅順艦隊司令長官のスタルク中将の夫人の名前がマリアだったからこの日は祝賀モードだ」

 「なんて間の悪い」

 「ロシアは油断していたが、日本海軍も後の奮戦振りからすると、この日はヘタレとしか言いようがない。奇襲には絶好の条件だったにもかかわらず魚雷命中は18発中たったの3発だ」

 「しかも被害を受けたロシア艦は軽傷で2ヵ月の修理を経て戦列に復帰している」

 「奇襲かけた意味ないじゃない」

 「日本海軍にも同情すべき点がある。前記の通り、日本海軍は出来るだけ無傷でバルチック艦隊を迎え撃たねばならない。よって開戦直後に駆逐艦を失う事を恐れたのだ。貧乏国の悲劇だな」

 「貧ずれば鈍ずるといいますからね。貧乏はロクでもないです」

 「作者の嘆きはどうでもいい。このときの日本海軍首脳のやり取りを紹介しよう」

 「このやり取りにはさしもの東郷長官も笑い出した。続いて――」

 「実に不思議なことは、当日わからなかった戦果が後ほど判明した時にちょうど3隻だったということだ。東郷長官はニュータイプだな」

 「結局その(ニュー) 一言(タイプ)が言いたかったんかい」

 「奇襲攻撃の成果が今ひとつだった連合艦隊は主力を結集して旅順攻撃に向かう。東郷長官は『勝敗の決、この一戦にあり。各員努力せよ』という信号を掲げた」

 「この海戦が『旅順口外の海戦』といわれるものだ」

 「結果は?」

 「何もなしだ」

 「どういうことだ?」

 「日露どちらの艦船も傷つきこそすれ沈んでいない。ロシア艦隊の動きは大した事がなかったが、旅順要塞の要塞砲の威力が大きく、日本も踏み込んで決定打を与える事が出来なかった」

 「旅順艦隊の基本戦略は、要塞にこもりながらバルチック艦隊を待って、合流した後一気に日本艦隊を壊滅するというものだ。だがこの戦略には重大な誤算があった」

 「旅順のロシア海軍がヒッキーである事に嫌気がさしたとか」

 「ヒッキーって……」

 「その通りだ」

 「え?

 「軍人たるもの打たれっぱなしで打ち返せないほどつらい事はないぞ。スタルク長官は要塞砲の射程外に艦隊が出る事を禁じていたからな。これでは兵士のやる気もなくなる。士気の喪失は重大なマイナスだ」

 「旅順のロシア海軍は次第に士気を損ねていったが、一方の日本軍にも焦りが見え始めた。いくら旅順港を攻撃しても手ごたえがないからな」

 「ためらっていた東郷も『もはやこれしかないか』ついに閉塞作戦の実行を決断する。第1次閉塞作戦の命令が出たのは2月18日だ」

 「ところが閉塞の権威である秋山少佐が実行に対して消極的になった。が、先任参謀である有馬良橘中佐がやる気でしかも『自身が実行部隊を率いる』と言う以上表立って反対も出来ない」

 「何で消極的になったの?」

 「旅順要塞の実態を知ったからだ。米海軍が相手にしたスペインの貧弱な要塞とは違い、旅順は超強力な要塞だ。ロシアは清国より租借してから要塞に大改造を施した。セメントだけでも20万樽を使ったといわれている」

 「秋山は『運と兵員の大量の死をはじめから願ってたてるような作戦なら、作戦かは不要である』と言ったし、閉塞作戦の会議では『もし途中で見つけられて猛射をうけたとき出直すということで引きあげたらどうか』とも言っている」

 「対して実行部隊副官の広瀬武夫少佐『この作戦では弱気は禁物である。断じて行なえば鬼神もこれを避くということがある。敵の猛射というが、猛射は当然の事態だ。骨がらみになっても押して押しまくってゆく以外に成功はひらけぬのだ。貴様のいうようなことでは、何度やっても成功しない』と反論した」

 「昭和日本軍の害が既に現れているような気がしますね」

 「勘違いして貰っては困るが、戦争において前線に立つ指揮官が弱気では困るぞ。作戦を立てる参謀がこんな無謀な事を言い出したからいかんのだ。辻とか服部とか辻とか服部とか」

 「作者は陸軍嫌いなのか?」

 「さあな。作者は太平洋戦争そのものを否定はしないが(注・太平洋での対アメリカの海戦がメインだから太平洋戦争)、やるんだったらもっと巧いやり方があっただろうと思っているからな。兵卒の頑張りと比べて将校の情けなさとか、陸軍兵器の貧弱さとか。作者はあの戦争のA級戦犯(日本国に対する日本人の戦犯)を辻、服部、牟田口、富永、黒島と見ているからな」

 「ロクなのがいないじゃない……だからA級戦犯なのか」

 「海軍からは一人しかいませんね」

 「挙げればまだいるが、戦争中に直接業務にタッチしたのだけを挙げたから」

 「海軍オタもここに極まれりですね」

 「そろそろ話を戻せよ。という事で東郷長官は閉塞作戦にどんな指示を出したんだ?」

 「ん。東郷長官は『帰るか行くかはその状況によって各指揮官の独断に任せる』とした」

 「丸投げ?」

 「違う!!

 「ある程度現場指揮官に裁量が任されるのは戦時だけじゃなくて平時の仕事だってそうだろうが」

 「あ、そうね」

 「第1次閉塞作戦で使うボロ船は5隻だ。1隻につき14〜15人ほどの人員が必要だ。当然ながら決死の任務なので誰かに押し付けるわけにはいかない。そこで志願者を募る事にした」

 「全艦隊の下士官及び兵に応募したところ何名集まったと思う?」

 「さぁ? 必要なのが70名ほどだから、決死の任務という事も考慮して3倍の210名ほども集まれば御の字じゃない?」

 「その10倍だ」

 「へっ!?」

 「ということは2千数百人か?」

 「そうだ」

 「信じられない数ですね」

 「明治維新によって身分が解放され、国民国家が出来て、その国家が戦争することとなり、国民それぞれが国家の運命を自分のものと思うようになった結果だ」

 「どこぞの連中に聞かせてやりたいな」

 「ダメですよ。最初から聞く能力を持っていませんから」

 「この頃の大抵の家では明治帝と昭憲后の写真を飾り、紀元節や天長節には日の丸を掲げていたという」

 「日教組が聞いたらファビョりそうな状況ね。そりゃ近代史を教えないわけだわ」

 「時代遅れな連中の話はここまでにして、閉塞隊の続きだ。志願者の中から妻のない者、長男でない者など肉親の係累の少ない者という基準で67名が選ばれた。各船の指揮官及び機関長と合わせて77名が第1次閉塞作戦に参加した」

 「参加した船及び指揮官、機関長は以下の通りだ」

 「2月24日未明、旅順にたどり着いた閉塞船は自沈を始める」

 「結果は?」

 「失敗だ。目標の場所に沈められず閉塞に効果がなかった以上、失敗としか言えん」

 「ダメじゃない」

 「同情すべき点もある。有馬中佐は昼間実行するつもりだった。その方が目標を見失わずに済むからな。ところが東郷長官が実行を夜間にさせた。その方が参加人員の損害が少なくなる。実際、戦死を遂げたのは1人だけだ」

 「意外と少ないんですね」

 「よって第2次閉塞作戦の実行に移る。ところがこの間ロシア海軍が一変した」

 「何があったのだ?」

 「ダンスだけが得意と兵員に悪口を言われっぱなしだったスタルク長官が罷免され、後任の旅順艦隊長官にステパン・オーシポウィッチ・マカロフ中将が3月8日、着任した」

 「長い名前ですね」

 「マンシュタイン元帥ほどじゃない。海軍のマカロフは後に登場する陸軍のアレクセイ・クロパトキンとならんで戦前の日本ではしりとりにもなったほどだ」

 「マカロフならともかくクロパトキンはしりとりが終わっちゃいますよ」

 「……」

 「ヴォルフ、しりとりを唱和しろ」

 「俺がですか?(露骨に嫌そうな表情)」

 「(拳銃を向けて)上官命令だ」

 「(小声で)全く・・・えーっと、スズメ、メジロ、ロシヤ、野蛮国、クロパトキン、き○たま、マカロフ、ふんどし……

「……」

 「と言う事だ、わかったか?」

 「そのルールなら何でもありじゃない」

 「戦前のしりとりのルールなど知るか。最近ではチャドの首都もメジャーになってきたからしりとりのルールなど有って無いようなものだ。ともかくマカロフは偉大な将で、着任してからは兵士達の士気も見違えたという事を覚えておけばいい」

 「具体的には何でなの?」

 「まず、マカロフが貴族出身でなくて平民からの叩き上げだったということだ。露土戦争でトルコ艦隊に水雷を抱いた艦で突入し、撃沈させた事で勇猛艦長の名前を挙げた。しかも戦術理論においても右に出るものはいないといわれた理論家でもある。秋山真之もマカロフの著述を読んでいる」

 「名将のようですね」

 「しかも前任者のスタルクは下士官や兵に『何故旅順艦隊がヒッキーをやっている』かを教えなかったが、マカロフは教えた。目的を得た集団の士気は上昇するものだ。このような状況で第2次閉塞作戦は3月27日に実行される」

 「第2次閉塞作戦に参加した船及び指揮官、機関長は以下の通りだ」

 「鳥崎保三中尉は千代丸に乗っている。士官は何度でも行くが、下士官以下は一度行った者を行かせるのは忍びないという理由で新募した。『どうしても』と血書嘆願した2名だけが例外的に参加を許されたが。参加人員は総勢68名だ」

 「旅順で自沈した後、脱出する時間は十分あった。だが広瀬少佐は自身の部下である杉野孫七上等兵曹がいないことを知ると『待て、もう一度探す』と沈没中の船に戻った。大和田建樹氏作詞の歌が状況を描写している」

 「というわけだ」

 「さっぱりわからないんだけど」

 「3度探してあきらめて船に戻ったらその瞬間、敵の砲弾が命中して広瀬少佐の体が消し飛んでしまったという事だ」

 「ランバ・ラルのような人ですね」

 「ちょっと違うと思うが……」

 「広瀬は知るもの全てに人柄が敬愛されていた。秋山真之は瞠目し、東郷平八郎は『広瀬が死んだか、惜しい男じゃった』とつぶやいたという。また、広瀬がロシア駐在時に知り合ったペテルブルク3大美女とされるアリアズナはロシアの伯爵海軍少将令嬢でありながら、未来の夫である彼のために喪に服した」

 「広瀬は戦死により中佐に昇進した。しかも軍神として崇められた。『七生報国』の生き方を理想とした快男児の死は日本中の感動を誘った。決死の閉塞作戦で部下の安否を確かめての戦死という事だったからだ。しかも日本だけでなく外国にも感動を与えた。この感動は後に説明する外債募集にも大きな影響を与える

 「ところで第2次閉塞作戦の成否はどうだったのだ?」

 「今一歩だったが、やはり失敗だ」

 「閉塞作戦って無理があるんじゃないの?」

 「閉塞作戦だけでは埒があかないとみた連合艦隊は第3次閉塞作戦の準備をしつつ、別の作戦も準備した。それにはマカロフの行動が影響してくる」

 「マカロフの行動って?」

 「マカロフが全艦隊に対して旅順にこもる理由を説明した事は前記の通りだ。ただこもるだけではなく、要塞砲の範囲内で東郷艦隊に対して積極的に仕掛けるという作戦を取った」

 「やる気が出てきそうな作戦だな」

 「そうだ。積極的な作戦を艦隊は喜んだ。名将マカロフ率いる旅順艦隊は見事なまでの艦隊運動をとる。ところがこのマカロフの見事すぎる艦隊運動が裏目に出た」

 「どういうこと?」

 「あまりに見事すぎる艦隊運動で、いつも通る場所が同じなんだよ。連合艦隊首脳部はそこに機雷を沈めておけばと考えた」

 「4月12日、小田喜代蔵中佐指揮のもと、旅順口に機雷が沈められた。小田中佐は機雷の権威で、小田式機雷と名がついた機雷を発明した人物だ」

 「翌日、連合艦隊は旅順を攻撃し、マカロフを誘い出す事に成功する」

 「実はこのとき、マカロフは普段行なっていた港外の掃海をせずに出撃してしまった」

 「何故だ?」

 「自軍の艦船が連合艦隊にボコられて焦ったからとしか思えん。旗艦である戦艦ペトロパウロウスクに座上して出撃する」

 「どうなりました?」

 「機雷が敷設された海域にペトロパウロウスクが入っていく。次の瞬間、天地が裂けるほどの轟音、天まで届く大火柱、全てを吹き飛ばす大爆風がおこった。

 「とは叫んでいないが、マカロフはその衝撃で甲板に叩きつけられた」

 「すかさず第2の爆発が起こり、マカロフは艦および630 人の乗組員とともに沈んでいった。最初の爆発から完全沈没まで僅か1分半の出来事だった」

 「マカロフ戦死を確認した連合艦隊の幕僚は東郷に対して『無電で弔意を示しますか』と尋ねる」

 「日清戦争で伊東長官が丁汝昌に対してやった事だな」

 「だが東郷は『やめよ』と一言だけ発してこの話は沙汰闇となった」

 「何で?」

 「後日、東郷の伝記作者となった小笠原長生海軍中将が尋ねると『その気が起こらなかっただけだ』と言っただけだった」

 「おそらく東郷中将は勝敗が見えた丁汝昌の時とは異なり、戦争の行方も見えないこの状況で芝居的行為をやる事に虚しさと嫌らしさを感じたのであろう」

 「ところでロシア艦隊はどうなったのでしょうか?」

 「マカロフ着任以前よりもひどい士気低迷状況に陥った」

 「広瀬中佐の死は日本国を奮い立たせたが、マカロフ中将の死はロシアの士気を著しく損なったという点で実に対照的だ」

 「しかもマカロフの後任となったウィトゲフト少将は実戦経験が無く、それを正直に幕僚に話して『自信が無い』などというからロシア海軍の士気はますます落ちた」

 「それならその状況をついて行なった第3次閉塞作戦は成功ね」

 「いや、失敗だ」

 「え?」

 「5月3日に行なわれた第3次閉塞作戦は158名の参加者のうち、43名しか無事に戻らなかった。結局は警戒厳重な軍港に貧弱なボロ船で飛び込むという行為が無謀だったな」

 「じゃあ閉塞作戦は無謀だった訳?」

 「そうでもないぞ」

 「ハァ?」

 「第一次世界大戦にてドイツ海軍が誇るUボート、この跳梁に業を煮やしたイギリス海軍は、Uボートの基地であるジーブルージ軍港に巡洋艦ピンディクティブ他4隻を自爆させて軍港閉塞に成功した」

 「無論これには旅順港での閉塞作戦が例として研究されている」

 「Uボートが使えれば我がドイツ帝国はトミー如きには負けん!!」

 「大尉、一応ここでは貴方は日本海軍大尉という設定ですから。それは本家でやってください」

 「そうだな。マカロフを葬って一本取った形の日本軍だが、旅順攻略は遅々として進まず、逆に手痛いしっぺ返しを食らう事になった」

 「当然ながらロシア軍人もヘタレばかりではない。砲艦アムール艦長のイワノフ中佐がマカロフの仕返しをしてやろうと機雷を敷設した」

 「日本海軍は自分がやった事をやり返されるとは思わなかったのか?」

 「その可能性は当然考えた。だが、日本と違い、ロシアは公海に機雷を敷設した。日本軍はロシアがそこまでやるとは思ってもいなかった。いずれにせよ巡航ルートを変えるに越した事は無い。だが、すぐには変えられないので5月15日までは今までの航路という事にした」

 「話の流れからするとその5月15日に何かが起こるわけ?」

 「そうだ。まず日本海軍が掃海作業を始めた5月12日に第四十八号水雷艇が触雷して沈没する。これが開戦以来初の日本軍艦の沈没だ」

 「続いて5月14日、通報艦宮古が触雷して沈没する。これらを含めて15個の機雷を潰す事に成功した。だが、ロシアが仕掛けたのはそれをはるかに上回る50個だった。そして運命の5月15日を迎える」

 「15日未明に巡洋艦の春日と吉野が衝突事故を起こして吉野が沈没した。吉野は既に一線級の軍艦ではなかったが、日清戦争では日本海軍の花形として活躍した艦だった」

 「ところで連合艦隊には戦艦が6隻ある。三笠・朝日・富士と初瀬・敷島・八島の2グループに分けて旅順口外をパトロールしていた。上記のとおり三笠を旗艦とするのが東郷中将、初瀬を旗艦とするのが梨羽少将だ。5月15日は東郷中将の出番ではなかった。もしこの日が出番であればマカロフの運命をたどっていたかもしれない」

 「山本海相の言う通り「運のよい男」だったわけですね」

 「そうだ。梨羽少将率いるパトロール部隊は旅順口外に向かった。その時、初瀬から大音響が響き、僅か1分10秒で沈んでしまった。梨羽少将は救出されたものの、副長他493人が戦死している」

 「後続していた八島は初瀬を救おうとしたが、自身も機雷に引っかかり、戦死者こそいなかったもののやはり沈んでしまった

 「さらに両艦の救助に当たった通報艦の龍田は座礁(後に戦線復帰)し、翌16日には砲艦大島が衝突事故で、17日には駆逐艦暁が触雷して沈没した。一週間もしないうちに8隻が敵の砲火も受けずに沈没してしまった」

 「まさしく日本軍にとっては大惨事だな」

 「第四戦隊司令官の瓜生少将と副官の間でこんなやりとりがある」

 「と怒鳴った後、一生懸命艦船の数を数えていた。ショックを和らげるために副官は小出しにしたのだろうが、意味はなかった」

 「特に戦艦2隻の沈没が大きい。単純計算で言えば戦力33%の減少だ」

 「大変じゃない。東郷長官はパニックになったんじゃないの?」

 「いや、全く。顔色一つ変えなかったという」

 「どういうことですか?」

 「内心は大ショックだろうが、指揮官が部下の前で動揺を見せたら士気に関わるからな。こんなエピソードがある」

 「このときの東郷の態度には外国の観戦武官も強い感銘を受けた。イギリスの観戦武官、ペケナム海軍大佐が弔辞を述べると『有難う、ペケナムさん』と握手をした。その挨拶はまるでプレゼントを貰った時のお礼のようだったという。ペケナム大佐は直後、座上していた朝日の艦長に『次は東郷提督が勝つ』と告げた」

 「まさしく『無神経なほど物事に動じない闘将』だな

 「そうだ、災い転じて福となすというが、このときの東郷長官を見て艦隊の兵も勇気付けられた」

 「着任当初は、体躯が矮小な事もあり、ぼんやりしている風だったので今ひとつだった評価もこの事件を境として急に伸びていく」

 「『東郷提督がいる限り日本は負けない』って感じ?」

 「その通りだ。海軍の初期作戦が終了したところで3時間目を終わる。恐ろしく長くなってしまった」

 「誰ですか?『戦闘状況のほうが書きやすい』等と言ったのは」

 「その辺は作者の不明を恥じるしかないな。まさか旅順港閉塞作戦でこんなに書くとは思わなかった」

 「で、次回は何やるの?」

 「黄海海戦……と言いたいが、陸軍の事に全く触れていないので開戦以来の陸軍の動きに触れる。メインは鴨緑江渡河作戦だな」

 「黒木閣下燃え〜っっ!

 「また本家からのパクリか」

 「この戦いはまさしく日本軍が完璧にロシアをぶちのめした戦いだから、作者の筆も進むだろう(多分)」

 「黒木閣下はカッコいい演説をしてましたね」

 「ほう、よく知ってるな」

 「それくらい当然ですよ。折角だから紹介しましょうか」

 「多少フライング気味だが、やってみろ」

 「じゃあ行きますよ」

いまや諸君は(ためもと)とともに帝国陸軍の先鋒である!

 「諸君ではなく諸子だが、まぁよかろう」

 「……」

 「以上です!!

ぱきゅーんっ!

 「誰がこんなネタをやれと言った!」

 「作者の中の人です」

 「中の人などいない!!

 「ホントにパクリ好きね、この作者」

 「単に芸が無いだけだがな」

 「貴様! 黒木閣下を何だと思っている!?」

 「戦好きの猪武者です」

 「バカもん!! 貴様、そこへ直れ! 十二分に教育した後、東部戦線に叩き込んでやる!!」

 「ストップです、大尉。またドイツ軍になってますよ。それに黒木閣下の説明をここでしたら4時間目の意味がなくなってしまいます」

 「(肩で息をしながら)そうだな、とりあえず首は次回まで預けておこう」

 「という事で真の演説は次回を待ってくれ」

 「恒例? の次回予告です」

 「九連城の中にロシア軍は篭城した。とうとうたる流れの鴨緑江は日本最強軍団をを引き寄せる。今、必要なのは時。大本営は渡河作戦の延期を第1軍に求める。大勝利が求められるその戦い。苛立つ藤井の心。雨が降り出しそうな鴨緑江の眼前で、時は黒木に決断を迫っていた。次回、機動軍団黒木1904、鴨緑江渡河

 「ニダ!?」

 「Vガン風味の予告でなければ貴様は不要だ」

 「アイゴー!

 「えーと、今度は0083のパクリ?」

 「パクリではない、アレンジだ」

 「同じでしょうが」

 「毎回根本のタイトルが変わっているような気がするが……『機動』しかあってないぞ」

 「細かい事は気に……」

 「ケンチャナヨ♪

 「……」

次回へ続く


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